日野自動車の小型EVトラック「デュトロZ EV(ズィー・イーブイ)」が、昨年の発表から約1年を経て、パシフィコ横浜で開催された自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展2023 YOKOHAMA」(5月24~26日)で初めて一般公開された。その驚くべき中身とは!?
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/フルロード編集部、日野自動車
かわいらしい姿に秘めたイノベーション
日野の「デュトロZ EV」は2021年4月に発表、同年11月からヤマト運輸での実証運行を開始し、昨年6月より正式発売していたものの、認証不正問題でショー出展を見送ってきた事情から、今回の人テク展が初の一般公開となった。
見慣れたデュトロの顔ながら、コンパクトな車体に小さなタイヤを履いたデュトロZ EVには、かわいらしささえ感じさせるところがある。しかし、実はとてもイノベイティブな小型トラックで、現行の普通免許で運転可能な車両総重量(GVW)3.5トン未満、しかも重い高電圧バッテリーを搭載するEVでありながら、最大積載量1トンを確保するというだけでも只者ではない。
なぜならこの積載量は、同じGVW3.5トンのガソリン1トン積トラック(トヨタ・ダイナ)に近い数値で、ディーゼル車ではいまのところ存在しない(いすゞ・エルフmioは未発売)からである。
クルマのサイズは、ウォークスルーバン仕様が全長4.695m×全幅1.695m×全高2.290mで、全高から1ナンバー車(普通貨物自動車)となるが、全長・全幅は小型車サイズに収まってしまう。最小回転半径は4.9mで、最近の乗用車よりもよほど小回りが利くクルマである。
積荷を収容する荷室部分は、内法長2.975m×内法幅1.590m×内法高1.795m。身長170センチを超えるくらいなら、靴(よほどの厚底やハイヒールでない限り)を履いていても、背を伸ばして立てる高さがある。また、後輪のタイヤハウスがある部分だけ幅は狭くなるものの、全面がフラットフロアになっている。
荷室フロアが乗用車なみの低さ
しかも車両全高2.290mで荷室内法高1.795m……というスペックは、通常のトラックでは絶対に成立しない数値だ。それだけ荷室フロアが低い位置にある。
地表面から荷室フロアまでの高さを「床面地上高」というが、デュトロZ EVではそれが450mmしかない。フル積載だとサスペンションが沈むので、400mmとなる。これをステップとして建築的に表現するなら「蹴上げ45センチまたは40センチ」といったところだろう。
これだけではピンとこないかもしれないので、多くの人になじみのある乗用車(後席フロアの高さ)と小型商用車(床面地上高)のカタログ表記値(セレナはベストカーWeb・2022年12月8日掲載記事より)で比較してみよう。
〇トヨタ・アルファード:450mm(高さ350mmのステップあり)
〇日産・セレナ:460mm(高さ200mmのステップあり)
〇ホンダ・N-BOX:370mm(荷室は470mm)
〇トヨタ・JPN TAXI:320mm
〇トヨタ・ハイエース:620mm
〇日産・NV200バネット:520mm
〇ダイハツ・ハイゼットカーゴ:630mm
〇三菱・ミニキャブMiEV:675mm
子供や高齢者の乗り降りにも配慮した乗用車は、フロアを低く配置していることがうかがえ、特にタクシー専用車・JPN TAXIは顕著だ。その上でデュトロZ EVは、途中にステップこそ持たないものの、アルファードと同等のフロア高であり、どの小型商用車よりも低いことがわかる。