最近のクルマ、特にスポーツカーはいかつくなっているという印象はないだろうか? どうしてそのように感じるのか、ヘッドライトまわりの造形か? それとも他の要素?
もしかすると、フェイス周辺をはじめとする車体のあちこちに“穴”が開いているのが厳つく見える原因かもしれない。では、なぜ穴があるのか?
今回は車体の各所に設けられた穴の秘密を探り、その存在理由とデザインに与える影響を考えていきたい。アナタの愛車にはいくつの穴が開いてる?
文/長谷川 敦、写真/スバル、トヨタ、ポルシェ、ホンダ、三菱、ランボルギーニ、Tesla. Inc.
空気の力でクルマを冷やす!
クルマのボディに設けられている穴は「ダクト」や「エアダクト」などと呼ばれている。目的が明確になっているものは「インテークダクト」「エアインレット」「エアアウトレット」とも呼称される。「イン」がつくものが空気を取り入れるための穴で、「アウト」は排気用だ。
ちなみに「ダクト」は「導管」や「排水管」などを意味する言葉で、「エアダクト」は「空気の通り道」になる。
なぜ空気を取り入れるのかというと、それはクルマの各部を冷やすため。クルマにはエンジンや補機類、ブレーキなどの発熱する機関が多く、ハイブリッド車やEV(電気自動車)に使われるバッテリーも発熱源になる。
これらの熱源に空気を当てて冷やすことにより、過度の発熱による効率の低下や破損のリスクを下げるのがボディに穴を開ける主な理由だ。ラジエターのようにエンジンの冷却水を空気流で冷やす場合もあるが、これも最終的にはエンジンの温度を下げるのが目的になる。
また、車内換気用にエアコンを外気導入モードにすることもあり、車体のどこかに外気をエアコンに回す穴も設けられている。
冷却ではなく空力性能向上を目的にエアインレットやアウトレットを設けるケースもあるが、これについては後で説明したい。
スポーツカーには穴が多い
ここで今回のテーマに戻る。スポーツカー、そしてスーパーカーには穴がたくさんあると思う人は多いだろう。そう、スポーツカーには空気を取り入れるための穴が一般的な乗用車より多く(大きく)開いている。
この理由はもうおわかりのはず。ほとんどのスポーツカーは一般車よりパワーのあるエンジンを搭載していて、高出力エンジンは必然的に発熱量も多くなる。加えてスポーツカーではエンジンを高回転域で使うことが多いのも発熱を促進する。つまりなるべく大量の空気を使ってエンジンや補機類などを冷やしているのだ。
ただし、ここでいうスポーツカーは内燃機関を主な動力にするクルマのこと。そのスポーツカーがEVなら、内燃機関に比べて発熱量が低いため、ガソリン車に比べて開口部は小さくなる傾向がある。とはいえ冷やさなくていいわけではない。
スポーツカーに開口部が多い理由のもうひとつとして、空力性能の向上があげられる。
ご存じのようにクルマにとって空気抵抗は大敵。特に高速になればなるほど、エンジンやモーターのエネルギーは空気抵抗に打ち勝つために使われる。また、空気をうまく利用して車体を路面に押し付ける力(=ダウンフォース)にできれば、コーナリングスピードがアップする。
ボディの表面を流れる空気だけでなく、積極的に内部にも流し、さらにこの気流を高速で排出すれば空気抵抗の低下やダウンフォース向上につなげられる。
上記のような理由により、スポーツカーの開口部が増えているのだ。
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