“入り”じゃなくて“抜き”が重要?
先にも説明したが、たとえ開口部があっても、入ってきた空気を上手に排出してやらないとエンジンなどは冷えずに空力性能も向上しない。そもそも出て行く先がなければ空気は入ってこない。
見た目のインパクトからラジエターダクトなどのインテークに注目しがちだが、よく見ると、きちんと空気を排出する先が考えられていることがわかる。特に近年のクルマではフロントタイヤハウス内の整流を重視する傾向があり、フロントフェンダー前に空気を取り入れるスリットのあるクルマは、フェンダー後方に排出口が設けられている。
オープンカーの場合、ドライバーは風の影響をモロに受けてしまうように思いがちだが、実は座席後ろ側の形状を工夫することによって運転席にはあまり空気が流れ込んでこないようになっている。
そのため、サイドウィンドウを全開にしたオープンカーでも走行風で上半身が揺さぶられてしまうことはない。もちろん、完全クローズドのクルマに比べれば風を感じられるが、それもオープンカーの楽しさになっている。
ここで疑問になるのは、ダクトを設けることで空気抵抗は増えないのか? ということ。
当然ながらダクトがあると空気抵抗は増える。これがスピードを落とす原因にはなるが、空気を流すことによるメリット(エンジンなどの冷却やダウンフォースの向上など)が空気抵抗の増加によるデメリットを上回るため、ボディにインレットとアウトレットがあるのだ。
穴だと思ったらそうじゃなかった!?
人によって好みは異なるというのはあるが、いかにもなダクトを装備した厳つい顔つきのクルマをカッコいいと思う人も多い。また、ボンネットやリアタイヤの前にダクトがあるのも見た目のアクセントになる。
実は、機能ではなく見た目のためにダクトを設けることがあり、そしてそのダクトは実際には穴でもないケースも存在する。
試しに「ダミーダクト」でインターネット検索をしてみてほしい。すると、自動車用アフターパーツのダミーダクトが多数検索結果に表示されるはずだ。これらのダミーダクトはボディ内部に空気を流すのではなく、ボディのドレスアップ用アイテムとして販売されている。
こうしたダミーダクトを市販状態で装備しているクルマもある。
トヨタのGRスープラにはボディにいくつかのダクトがあるが、実際に穴の開いていないものもある。メーカーでは、これらのダミーダクトはレース用などにチューンナップした際に必要になるエアダクトの準備用と説明している。しかし、ホントにここに空気を流すことができるのか疑問に思うダクトもある。
もちろん、それがアクセントになってクルマがカッコ良くなるのであればダミーダクトだって問題ない。すべてが機能優先でなければいないというのなら、それは味気ないものになってしまう。
今回はクルマの各部に開けられた穴、特に空気を取り入れる穴について考えてきた。スポーツカーの穴は大きくなりがちで、一般車はそこまででもない理由、そしてEVでは穴が少なくて外観が比較的スッキリしている理由も理解してもらえたと思う。
機能部品であるエアダクトをデザインの要素としてうまく融合させているクルマはエレガントで、後付けのダクトが迫力をアップしているケースもある。将来的にEVが増えるとクルマの穴も少なくなる可能性は高く、いつか多数のダクトを装備した猛々しいクルマを懐かしく思う日が来るかもしれない。
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