「MTベースのAT」の長所と短所は?
■DCT(デュアルクラッチトランスミッション)
操作自体はATと同じだが、同軸上に配置される奇数段、偶数段ギアそれぞれにクラッチを持つトランスミッション。
【長所】
・変速の速さ/例えば2速で走行中にトランスミッション内部はすでに3速へのシフトアップに待機しているという具合なので、変速が素早い。また、エンジン回転もキープしやすいので、ターボ車のターボラグをトランスミッション側で隠せるメリットもある
・燃費の良さ/クラッチと歯車を使うというMTに近い構造なのもあり、動力伝達効率が高く、燃費も有利
【短所】
・車種やユーザー各々による許容範囲も大きいが、発進時や車庫入れ、渋滞中といった極低速走行時のスムースさに欠けるものも
・車種によっては年数が経つと発進時に感じるクラッチのジャダーが起きるなど、耐久性、信頼性が低いものもある。
変速が素早く、燃費も優れるDCTは、次世代のATとして大きな注目を集めた時期もあった。しかし、登場から時間が経つにつれ、特に日本の道路環境ではデメリットも目立ち、現在は輸入車も含め搭載車は減る方向。「ハイエンドのスポーツモデル向けのAT」という印象が強い。
■AMT
AMTも操作自体は基本的にATと変わらないが、MTのクラッチ操作とシフト操作を自動化したもの。
現在はスズキの軽自動車やフィアット500などの小型車が採用しており、かつてはトヨタMR-SやBMW M3といったスポーツモデル、フェラーリやランボルギーニのスーパーカーが採用していた時期もあった。
【長所】
・MTを自動化したもののため構造がシンプルなので、コストが安い。
・MTに限りなく近い構造なので、カタログ燃費はMTを凌駕するほど良好。
【短所】
・フィーリングに違和感のあるものもある/車種による違い、ユーザー各々の許容範囲によるものも大きいが、シフトアップの際の“トルク抜け”と言われる失速感、ギアチェンジのタイミングがドライバーに合わないといったこともある。
多くのATに付くマニュアルモード 多用しても大丈夫?
かつてはシフトレバー、現在はMTモードやパドルシフトを使うなどしてATでも自分で任意のギアを選ぶマニュアル操作をすることは可能だ。しかし、ふと「頻繁にマニュアル操作をすると、長期的にはATが痛むのではないか?」と感じることもあるかもしれない。
確かに古いAT車は3速、4速しかなくギア比が離れており、シフトダウンの際のブリッピングもなく、マニュアル操作をすると特にシフトダウンの際にショックを感じることもあり、それがATの痛む原因になったり、実際トラブルにつながることもあったようだ。
では現代のAT車でどうなのか? ステップATに注力しているマツダに「一般走行で常時マニュアル操作するくらいのイメージ」で問い合わせたところ、
「通常走行において、マニュアルモードを多用しても、D(自動変速)モード使用時とも、変速機を含む車両全体に与える負荷に大差はなく、耐久性に問題はありません」
「AT技術はハードおよびソフト領域ともに進化しており、例えばクラッチ温度予測などを行い、緻密に変速をコントロールしているため、変速パターンが変化しても、ダメージを最小化するような制御等により耐久性を向上しています」
との回答が得られた。
また、同じことをAMTの場合でスズキに問い合わせると、
「AGS(スズキのAMTの名称)のマニュアルモードの頻繁な使用につきまして、繰り返しテストをして耐久性を確認の上製品化しているため、長期使用いただいても問題ございません」
と、どちらのシステムでも問題ないとのこと。まぁ車のメカニズムは何事も「滅多なことでは壊れないくらいの耐久性と信頼性を確保しないと、市販化できない」ということだ。
いずれにしても少なくとも一般道で使っている分には、ATのマニュアル操作は必要に応じて遠慮なく使っていいと考えてほしい。
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