日本国内での5マイルバンパー問題
日本で最初に5マイルバンパーを採用したのはトヨタのセリカだ。1975年10月に排ガス対策を強化したが、このときに5マイルバンパーを装備した。
だが、日本ではアメリカほど衝突安全基準が厳しくなかったから、カッコだけ5マイルバンパー風にしたものが少なくなかったのである。大型バンパーを装着して簡単に3ナンバー化できることもあり、高級セダンにも積極的に採用された。
衝撃を吸収するショックアブソーバーを内蔵し、補強も徹底した5マイルバンパーはコストがかかる。そこで輸出仕様と同じようなビッグバンパーに見せながら、中に入れているリーンフォースメントと呼ぶ補強メンバーの配置を変え、ショックアブソーバーも省いてしまったのだ。
だから衝突時にほとんど役に立たなかった。これは一部のマスコミから叩かれ、ニュースにもなっている。その後はポリウレタンやポリプロピレンなど、樹脂でショックを吸収する構造のバンパーに変わっていった。
金属製から樹脂製へ
1980年代半ばから一気に金属製バンパーは減り、これに代わって樹脂製バンパーが台頭してくる。初代VW ゴルフも、前期モデルは金属製だったが、後期モデルは大型の樹脂製バンパーに変わった。
1983年に登場したホンダのバラードスポーツCR-Xは、2種類の素材をボディパネルに採用したが、バンパーの素材も「H.P.BLEND」と名付けられた変形ポリウレタンだ。
ちなみにホンダは、早い時期にリアバンパー内にもバンパービームを設け、後方から当たったときにもショックを緩和する構造とした。
樹脂製バンパーは軽量だし、デザインの自由度も高い。また、柔らかい素材だから安全性においても金属製バンパーの上を行く。
最初は樹脂の色をそのまま使っていたが、安っぽく見えるというので日本の自動車メーカーは塗装できるカラードバンパーを生み出している。最初は欧米のメーカーも異を唱えていたが、ユーザーの声には逆らえず、90年代後半には見栄えのいいカラードバンパーが主役となった。
自動車バンパーの現在
バンパーの役目が大きく変わってくるのは20世紀後半のこの時期からだ。クルマの安全性能が問われるようになり、各国で衝突安全基準が厳しくなっている。
最初は「フルラップ衝突」試験だった。コンクリートの壁に真っ直ぐぶつけ、キャビンの変形をチェックするのである。これはボディをつぶれやすい構造にすれば合格できた。
だが、実際の事故形態と違うと批判され、「オフセット衝突」試験が採用されるようになる。こうなるとボディをつぶして衝撃を吸収するだけではキャビンが変形し、乗員はケガでは済まないのだ。
新たにオフセット衝突が採用され、後方からの衝突に対しても厳しい要求が出されるようになっている。歩行者保護も加わったから、バンパーの存在意義もデザインも大きく変わるようになった。
最近のバンパーは、成形の自由度が大きいからボディに溶け込んだ美しいデザインとなっている。フロントマスクと違和感なくつなげられ、一体化を心掛けているからバンパーと分かりづらいものも多い。
全長が決まっていてデザイン代の少ない軽自動車のバンパーは苦労の連続らしい。ちなみに現行モデルでバンパーの存在感が際立っている例外作品は、SUVのジムニーだ。EVが増えてくる近い未来、前後のバンパーはどのように進化していくのだろう。
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コメント
コメントの使い方昔のバンパ-はフレ-に取り付け、ボディ前面の傷防止が主な役割
その後モノコックになり、衝撃吸収バンパ-になったがバンパ自体の修理費が20万円近くに、