なぜノートの3列シート版を早く出さないのか?それとも出せないのか?

なぜノートの3列シート版を早く出さないのか?それとも出せないのか?

 日産のコンパクトカーとして安定した人気を誇るノート。プレミアム感のあるデザインに加えて、e-POWERの走りの良さも広く知られるようになったことが、ヒットの理由だろう。ぜひこのノートの素性のよさを活かして、トヨタのシエンタのようなコンパクトミニバンをつくってほしいところなのだが、(かねてから噂はあるものの)なかなか出てこない。

 シエンタは、2022年のフルモデルチェンジ以降絶好調で、2023年の1月~6月期では、登録車全体で3位にランクイン(67,344台)している。1位のヤリス(97,421台)と2位のカローラ(82,374台)は、複数モデルの合計であることを考えれば、単独モデルとしては、2023年の上半期1位となるという人気ぶりだ。またフリードも、(軽自動車のN-BOXを除いて)日本で最も売れているホンダ車となっているなど、コンパクトミニバンの需要は常に高い。出せば売れるはずのノートベースのコンパクトミニバンなのだが、なぜ日産はノートのコンパクトミニバンをなかなか出さないのか!? それとも、出せないのか!??

文:立花義人、エムスリープロダクション
写真:NISSAN、ベストカー編集部

「キューブキュービック」の悪夢が日産を慎重にさせている!??

 「キューブキュービック」というクルマを覚えているだろうか。日産が2003年から2008年まで販売していたコンパクトミニバンで、Z11型キューブのホイールベースを延長し3列シート7人乗りのクルマだ。キューブの特徴的なフォルムや雰囲気を損なわずに多人数乗車が可能ということで話題になったのだが、デビュー当初こそ好調だった販売も、狭すぎる3列目シートや、1.4Lエンジンのパワー不足(マイナーチェンジで1.5L車を追加)、ライバルのシエンタやモビリオ(現フリード)と違いヒンジドアだったことで実用性に劣っていた、などが災いして徐々に売り上げが低迷。キューブが3代目へと切り替わるタイミングで消滅してしまった。この失敗が、日産を慎重にさせているという可能性は考えられる。

 また、当時(2010年ごろ)日産は、北米や中国といった海外市場で成長軌道に乗ったことで、海外に力を集中していたため、国内市場のリソースが不足していた。コンパクトミニバンは、日本でしか売れない、日本特有のモデル。市場規模の小さな日本専売のモデルを開発する力は、少し前の日産にはなかったのだろう。ノートですら、e-POWERがヒットしていなければ消滅していた可能性は高く、国内専売モデルの開発は「セレナ」に絞る、というのが当時の日産の方針だったのではないだろうか。ノートのコンパクトミニバンがなかなかでてこない背景には、こうした経営判断を直近まで引きずってしまっていたため、(3列シートコンパクトを)開発するタイミングを逸してきたのではないか、と筆者は考えている。

キューブキュービック。売り上げは振るわなかったが、キューブのデザイン性を損なわなかったのが魅力だった
キューブキュービック。売り上げは振るわなかったが、キューブのデザイン性を損なわなかったのが魅力だった

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