■アイサイトと6MT車との親和性はどうか?
注意したいのは6速MTとアイサイトの親和性だ。ATであれば、衝突被害軽減ブレーキによって急ブレーキが作動しても、エンジンが停止する可能性は低い。ブレーキの真空倍力装置なども通常どおりに作動する。
ところが6速MTでは、衝突被害軽減ブレーキが作動した時にドライバーがクラッチペダルを踏まないと、エンジンが停止する場合がある。運転支援機能も同様で、6速にシフトして走行中、先行車が減速したのに自車のドライバーがクラッチペダルを踏んだり、シフトダウンしたりしなければ、エンジン回転数が大幅に下がってエンジン停止に至る。
衝突被害軽減ブレーキや運転支援機能の作動によって速度が下がったのに、ドライバーがクラッチペダルを踏んだり、シフトダウンしたりしないためにエンジンが止まると、真空倍力装置も作動しないから次第にブレーキの利き方が低下する。
高い踏力が必要になる。車種によってはパワーステアリングの作動も止まる。このような懸念もあるため、スバルは6速MTとアイサイトの組み合わせに慎重だった。
ただし、客観的にいえば、衝突被害軽減ブレーキを作動させること自体に事故を避ける大きなメリットがある。また、6速MTに慣れた多くのドライバーは、衝突被害軽減ブレーキなどの作動によって速度が下がると、無意識にクラッチペダルを踏む。そうなればエンジンが停止しない可能性も高まる。
真空倍力装置も、エンジン停止後にブレーキペダルを何回か踏まないかぎり、負圧が残っているから制動力が急に衰える心配はない。従ってマツダなどの他社は、MT車に衝突被害軽減ブレーキや運転支援機能を以前から装着していたが、スバルはさまざまな可能性を考えて完璧を目指した。
■BRZはMT車の販売比率が高いのだが……
そこでスバルは、6速MT用アイサイトの開発を進めて、BRZに搭載することになった。先の開発者のコメントでは「6速MTの販売台数が少ない」とされていたが、BRZは例外で販売比率が高い。6速MTとアイサイトの適合が急務になっていた。
まず、衝突被害軽減ブレーキについては、基本的な制御はATと共通だ。クラッチやシフトレバーの状態に関係なく作動する。仮に衝突被害軽減ブレーキが作動した時に、ドライバーがクラッチを踏まずにエンジン停止しても、車両が停止するまでアイサイトのブレーキ制御を続ける。
衝突被害軽減ブレーキの作動速度は通常は時速1km以上で、ギヤがニュートラルだったり、クラッチが繋がっていなかったりする時は時速8km以上になる。
また、誤発進抑制機能は、クラッチ操作が必要な6速MTには不要と判断して採用されていない。後退時ブレーキアシストも、ATには採用されるが、6速MTには設定されない。それでも障害物に接近した時のクリアランスソナーは装着する。
運転支援機能になる車間距離を自動制御できる追従機能付きクルーズコントロールは、シフトレバーが2~6速に入っていて、時速30km以上での走行中に使える。作動中にシフトレバーやクラッチを操作して変速することも可能だ。
先行車に追従するクルーズコントロールを継続させながら、ドライバー自身が滑らかな変速を行える。例えば先行車が速度を下げた場合、自車もシフトダウンして適切なギヤに切り替えることにより、変速後もクルーズコントロールによる走行を続けられるわけだ。
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