なんで出ない? もうすぐ出る?? スライドドアのBEVがない理由

なんで出ない? もうすぐ出る?? スライドドアのBEVがない理由

 日産「リーフ」や「アリア」、「サクラ」や三菱「eKクロスEV」、レクサス「RZ」、トヨタ「bZ4X」やスバル「ソルテラ」と、国産のバッテリーEVも徐々に増えてきた。クルマのタイプも、軽ハイトワゴンからCセグメントのハッチバック、SUVとバリエーションが増え、(航続距離など、BEV特有の課題はさておき)さまざまなユーザーにアプローチできるようになってきている。

 ただ、日本でBEVを普及させるならば、やはりスライドドア車がほしいところ。現在のところ、商用車ではBEVでスライドドアを採用したモデルはあるものの、乗用モデルでは前例がない。BEVでのスライドドアは難しいのだろうか。

文:吉川賢一
写真:NISSAN、MITSUBISHI、TOYOTA

三菱と日産が商用モデルで実現させている

 スライドドア付のBEVの「祖」ともいえる三菱のミニキャブMiEVは、2011年~2021年の11年間販売されていた軽の商用車だ。バッテリー容量は16 kWh(WLTCモードで137km)で、2列目のフロア下に格納。下側のスライド機構のスペースが必要となるためにバッテリーを横方向には広げることができず、バッテリー容量は限られていたが、近距離移動を主とするならば、これくらいの航続距離でも十分使用に耐えられた。

 また日産の商用BEVである「e-NV200」(2014~2019)もスライドドアの商用車だ。リチウムイオン電池の容量はリーフと同様で24kWh、満充電時の航続距離はJC08モードで300kmだった。

三菱のミニキャブMiEV。車幅に対してバッテリーの横幅が狭く縦長の形状をしている。なおバッテリー容量は16 kWh、カタログの一充電走行距離は137㎞(WLTCモード)
三菱のミニキャブMiEV。車幅に対してバッテリーの横幅が狭く縦長の形状をしている。なおバッテリー容量は16 kWh、カタログの一充電走行距離は137㎞(WLTCモード)

スライド機構を搭載すると、バッテリーの容量が限られてしまう

 昨今のBEVには50kWh、60kWhクラスの大容量バッテリーを載せるのがあたりまえとなっている。先日試乗したフォルクスワーゲンの「ID.4」なんて、最大77kWhだ。当然、フロア下はバッテリーで埋め尽くされることになり、62kWhのバッテリーを搭載する日産アリアの場合、バッテリーはホイールベースの間に隙間なく敷き詰められている。

 こうなると、スライドドアとの干渉は不可避となる。仮に、このアリアにスライド機構を付けようとするならば、バッテリーを小さく(細く)しなければ成り立たない。しかしいまのBEVにとって、大容量バッテリー(による、長い航続距離)は生命線であり、容量を削ることなど決して許されない。現在のところ、乗用モデルでスライドドアのBEVが存在しないのは、そのためだ。

日産アリアの62kWhバッテリー。フロアの横方向いっぱいにバッテリーを搭載している
日産アリアの62kWhバッテリー。フロアの横方向いっぱいにバッテリーを搭載している

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