給油ランプが点灯した状態で満タン給油をしているのに、「意外と入らないな…」と思ったことはないだろうか。そこで今回は、エンプティランプが光るタイミングや、ほかのクルマの燃料タンクはどうなっているのかなどを解説。そして最新の燃料タンク事情についてもお届け。
文:吉川賢一、写真/TOYOTA、Adobe Stock、平野学、アイキャッチ画像/Paylessimages – stock.adobe.com
■重要な車両スペックのひとつだがレイアウトでの優先度は低い
燃料タンクの容量は、普通乗用車だとおよそ50リットル、軽自動車だとおよそ30リットル、大型車だと60リットルから80リットル程度だ。
この燃料タンク容量は、クルマの車格ごとにおおよそ相場が決まっており、1給油あたりの航続距離が、コンパクトカークラスならば約500km、ハイブリッドカーならば約700km、ディーゼル車ならば約1000kmだ。
たとえば、トヨタランドクルーザーは、80リットルの燃料タンク容量があるが、燃費(ガソリン車のWLTCモード燃費7.9km/L)を乗じれば、計算上は約632kmの航続距離となる(実燃費では0.8掛け程度の500km程度だが)。
この航続距離の目標性能と燃費目標によって、理想的な燃料タンク容量が決まるのだが、実際に求められる容量を確保するのは非常に困難。
燃料タンクが装備されるクルマの下周りは、マフラーやサスペンションなどがぎっしりレイアウトされる場所であり、レイアウトはそれらを優先させなければならないが、燃料タンクの容量を減らすわけにもいかない。
そのため、いまのクルマの燃料タンクは、想像以上に平たくペシャンコな形状で、レイアウトが厳しくなるドライブシャフト付の4WDとなると、その形状は更に複雑になる。
「燃料タンク」という言葉から想像する、正方形や長方形をイメージとは、まったく違うかたちをしているのだ。
■樹脂製タンクの登場で複雑な燃料タンクが可能に
複雑な形状の燃料タンクがつくれるようになったのは、自由に成型ができる樹脂製燃料タンクが登場したおかげ。
タンク内でガソリンが偏らないよう凹凸形状を整えたり、熱害を受けないような樹脂配合としたり、フロアに影響を与えないような平たい形状にしたりと、クルマの燃料タンクは、1リットルでも容量が増えるよう緻密に設計されている。
かつて車体のパッケージング設計の方へ取材した際、燃料タンクの設計について、「毎回、“一念天に通ず“の精神で取り組んでいます」と語っていた。
ちなみに、新型プリウスのハイブリッド車の燃料タンクの容量は43リットル、プラグインハイブリッド車は40リットルと、その差はわずか3リットル。
プラグインハイブリッド車の場合、EV走行ができるので燃料タンク容量はもっと小さくてもよいのでは、とも思える。
しかし、トヨタ担当者によると、ハイブリッド車の航続距離に加えて、プラグインハイブリッド車でのEV走行距離がプラスされることに、プラグインハイブリッド車の付加価値があるので、燃料タンク容量はハイブリッド車とできれば同程度にしたかったそう。
ハイブリッド車の燃料タンク位置にプラグインハイブリッド車用のバッテリーを置き、そのバッテリーの前側と、後席シート下のスペースを使って40リットルもの容量の燃料タンクを押し込むことで、燃料タンクの容量をわずか3リットル減で抑えている。まさに「奇跡」のレイアウトだ。