シェア15%を占めるビッグモーターが世の中を騒がせている中古車業界だが、いっぽうでユーザーにとって大きなメリットと言える大きな改正が2023年10月1日より実施される。それは、中古車の販売価格表示が「支払総額」に変わること。ここでは「支払総額」表示によって何が変わり、ユーザーにとってなにがメリットとなるのかを紹介したい。
文/萩原文博、写真/萩原文博、自動車公正取引協議会、Adobestock、ベストカーWeb編集部(トップ画像=beeboys@AdobeStock)
■車両価格と諸費用を合計した価格表示へ
まず「支払総額」について解説しよう。中古車は車両本体価格と諸費用を足したものが支払総額といい、この金額で、クルマを乗り出すことができる。
一般社団法人 自動車公正取引協議会の資料によると、車両本体価格というのは、店頭において車両を引き渡す場合の消費税を含めた現金価格で、展示時点ですでに装着済の装備など(ナビ、オーディオ、カスタムパーツなど)を含む価格のこと。
さらに、中古車の価格・品質に重要な影響を及ぼす「定期点検整備」および「保証」を付帯して販売する場合、その費用は「車両価格」に含めて表示することとなっている。
一方の諸費用とは、保険料、税金、登録などに伴う費用(登録手続き代行費用)を指し、この3つを含まない支払総額を表示することはできない。そして、この諸費用を含まない「支払総額」を表示した場合、表示した価格で購入することができない「不当な価格表示」(規約違反)に該当することになる。
簡単に言うと、ユーザーは支払総額を支払えば、クルマを乗り出すことができるということ。万が一、支払総額のほかに別途費用(ローンの手数料は別)が発生するのは規約違反となるということだ。
■中古車販売の問題点
どうしてこのように「支払総額」に中古車の販売価格表示が変わったのかというと、大手を中心とした、販売店の中古車販売の問題点を解決するための対応ということができる。
これまで、安価な車両価格を表示し、実際には表示価格では購入できない「不当な価格表示」がなされる場合があった。
安価な車両価格でユーザーを集客し、商談時に「保証」や「整備」料金をプラスした購入を強制するなど、「不適切な販売行為」が横行していたのだ。さらには「納車準備費用」など、本来車両価格に含まれるべき費用を諸費用として請求するケースもあった。
こういった問題といえる行為は、すべての中古車販売店が行っているわけではなく、一部の販売店が行っているものの、影響が大きいことから、自動車公正競争規約・同施行規則の改正につながった。
今回の規約・規則などの改正により、販売店の店頭でのプライスボードや広告、ウェブなどでの販売価格表示を「支払総額」に変更するのをはじめ、定期点検整備の表示を「定期点検整備付き」、「定期点検整備なし」に変更。そして不当表示に関する規定の見直しが行われる。
その結果、規約違反措置基準の改正によって厳重警告、社名公表、違約金が発生するなど厳格化される。また不適切な諸費用(納車準備費用など)は請求できないことも明確化されることになった。
コメント
コメントの使い方短く要点がまとまった良い記事ですね。
利益を受ける我々が注意しなくてはならないのは、記事2Pめの支払総額に含めない諸費用に、契約後に準備費用や店舗までの移動料やクリーン代金など、それらしい名前で上乗せしてくる場合です。
ゴネることと権利や問題点を正しく指摘することは違います。おかしいと思ったら恥よりも問う勇気を。