プリウス越えHVの独創性と執念 王者を脅かした挑戦者

 ハイブリッドの王者といえば、トヨタ プリウスというイメージが強い。

 しかし、販売面では過去に一時的ながらホンダのインサイトが、現在はe-POWERを引っさげた日産 ノートがNo.1に輝くなど、王者プリウスを逆転。

 燃費でも過去にフィットハイブリッドが日本一を達成するなど、プリウスを脅かしてきたハイブリッドの挑戦者は多い。

 こうした王者プリウスとその挑戦“車”たちが日本の、いや世界のハイブリッド技術を発展させてきたと言っても過言ではない。「燃費」や「販売」といった側面だけではなく、王者プリウスとの違いを求めた各車のアプローチも実に独創的でユニークだ。

文:御堀直嗣/写真:編集部

打倒プリウス狙ったホンダ・日産のHV黎明期

写真は2代目プリウスとインサイト。インサイトは2009年5月に販売台数No.1に輝き、プリウス越えを達成。ただ、その好調は長く続かなかった

 ハイブリッド車(HV)は、1997年にトヨタ プリウスによって量販市販車としての幕が切って落とされた。これに呼応して、2年後の1999年にホンダ・インサイトが誕生した。

 トヨタのハイブリッドシステム(THS)は、HV専用パワーユニットとして2つのモーター/発電機と動力分割機構という新たな発想の動力伝達機構を備えている。

 それに対し、ホンダのIMA(インテグレーテッド・モーター・アシスト)は、世界一のエンジンメーカーらしくモーターをガソリンエンジンの補助と考え、従来通り変速機(5速MTとCVT)を使うハイブリッド方式により世界一の燃費性能を狙ってきた。

 燃費の改善は、単にパワーユニットの高効率化だけでなく、車体の軽量化や、空気抵抗の少ない造形などあらゆる要素が絡み、そのすべてに挑戦したのがインサイトだった。ただし、それによって2名乗車という制約もあった。

 日産からは、ティーノハイブリッドが100台限定で2000年にネット販売された。

 これは、ガソリンエンジンとモーター、そしてCVTの組み合わせであり、トヨタやホンダがバッテリーにニッケル水素を使ったのに対し、日産はこの時からリチウムイオンを採用していた。10年後にそれが電気自動車(EV)リーフの発売につながる。

 21世紀へ向け気候変動の抑制が不可避となった20世紀末に、日本からHVへの挑戦と、燃費向上への狼煙があがったことは記憶にとどめられるべき自動車開発史だろう。

 当時、ことに欧州のドイツメーカーは、「HVは部品点数が増え、原価を高め、一時しのぎの技術でしかない」と辛辣に批判した。そして、彼らはディーゼル車を上級車種へまで広げることにより燃費向上を試みた。

 ところが、その対価として欧州各地に大気汚染をもたらし、排ガス偽装まで行われ、今日の電動化へ急展開したのである。HVへのかつての発言に対する反省の弁はいまだ全くない。

「燃費世界一」でプリウス越え果たしたフィットHV

3代目フィットのハイブリッド(2013年登場)。i-DCDを搭載し、JC08モード燃費36.4km/Lを達成し、当時のプリウス(32.6km/L)やアクア(同35.4km/l)越えを果たした

 国内においては、HV開発競争がプリウスを軸に展開した。そしてプリウスは、パワーユニットの改良により着実に燃費向上を図っていった。

 2代目プリウスで、昇圧によりシステム電圧を高め効率向上をはかり、それが「THS II」として今日まで継承されている。それに対しホンダは、2代目インサイトで廉価なHVという価値を打ち出した。

 独創の技術による性能競争にこだわり、世界一を目指してきたホンダにしては、性能の一番ではなく普及に力を注ぐ方針転換がやや奇異に感じられなくもなかった。

 しかしながら、HVを含め環境適合車は台数が普及してこそ効果を発揮するものであり、普及を目指した2代目インサイトの価値は、称えられるべき視点ではある。

 だが、燃費性能で負け、使い勝手においてもプリウスに差をつけられたインサイトは、逆に販売台数を伸ばすプリウスに差を付けられ2014年に販売を終了することになった。

 ただし、ホンダのハイブリッドシステムである「IMA」は、2010年にフィットにも搭載され、2013年まで販売された。

 その後、同年にフルモデルチェンジをした3代目フィットで、新しいハイブリッドシステムが登場することになる。それが、i-DCD(インテリジェント‐デュアル・クラッチ・ドライブ)だ。

 デュアルクラッチの変速機にモーターを組み込み、ガソリンエンジンとあわせて動力を生み出す。

 IMAが、エンジンと一体のモーター配置であったのに対し、変速機側へモーターを組み込んだ点がi-DCDの独創であり、回生の際にはエンジンを停止することができ、同時に発進や加速において切れ味のよいダッシュを付けられスポーティな運転感覚を味わわせる。これをホンダは、スポーツハイブリッドと形容した。

 また、発売時にはプリウスを抜いて世界一の燃費(36km/L)を達成し、のちアクアに逆転はされたものの、ホンダが再び勝負に挑んだ点でホンダファンの心を熱くするHVであった。

 ところが複雑な機構であるがゆえに、リコールを出すことになる。

脱5ナンバーのプリウスに一石? 燃費と販売で日本一に輝いたアクア

アクア(2011年登場)/全長×全幅は4050×1695mmの5ナンバーHV。2015、2016年に販売日本一に輝いたほか、燃費も改良で日本一を奪還(現在は38.0km/Lまで向上)

 ホンダが、インサイトというHV専用車種に加え、量産小型車フィットでのHV展開をすることにより、世界一の燃費挑戦と合わせ、普及拡大を進めたのに対し、トヨタはアクアというHV専用車をプリウスに加えて誕生させた。

 プリウスは、2代目から3ナンバー車となった。とはいえ車幅がわずか25mmほど5ナンバー枠を出る程度ではあったが、これが3代目ともなると車幅は1745mmとなって、自宅車庫などの関係で乗り降りが不便になるなど負の要素が増えたのは事実だろう。

 そこに、5ナンバー車のアクアが2011年に誕生した。

 プリウスが、3代目で燃費向上のためエンジン排気量を従来の1500ccから1800ccへ拡大したのに対し、アクアはより小柄な車体であることもあり1500ccエンジンを使ったHVであった。

 また、同じシステムは海外で販売されるヴィッツに搭載され、エンジン車の他にHVという選択肢をもたらした。

 5ナンバー車のHVであるアクアは爆発的な人気を呼んだ。同時に、車体色を数多く、なおかつ独特な色合いを揃えたことにより、街に彩り豊かなアクアが駆け巡ることになった。

 また37km/Lの燃費性能を実現し、i-DCDの搭載によりフィットHVに先行された燃費性能を再び逆転し、世界一の燃費性能を達成してもいる。

e-POWERで販売NO.1に! 出遅れた日産が逆襲

2018年度の登録車販売No.1に輝き、プリウス越えを果たしたノートe-POWER。HVではトヨタ・ホンダに出遅れていた日産ながら、燃費だけでなく新鮮な運転感覚も持つHVで一躍ヒット

 一連のトヨタとホンダのHV競争を横目に、フーガなど大柄で後輪駆動向けHV以外に手をこまぬいていた日産が、いよいよ小型車向けHVとして2016年にノートのマイナーチェンジで登場させたのが、「e-POWER」である。

 2000年にティーノで限定販売されたHVは、トヨタやホンダと同じようにシステム内容こそ異なっても、エンジンとモーターを併用して走行するパラレル式ハイブリッドシステムを採用していたが、e-POWERは、シリーズ式ハイブリッドシステムである。

 シリーズ式ハイブリッドとは、搭載するエンジンは電気の発電のみに用い、走行はすべてモーターで行う方式だ。e-POWERは、2010年に発売されたリーフの技術が応用されている。

 e-POWER以前から、シリーズ式ハイブリッドという方式は存在しており、バスなどで利用された例はある。

 だが、初代プリウスが誕生した当時は充分な走行性能を乗用車で得られる方式とは考えられていなかった。

 ところが、リーフという量産市販のEVを日産が手掛けたことにより、シリーズ式を小型乗用車に用いる道が拓けたのである。

 なおかつ、モーターのみでの走行が可能になったことにより、「e-ペダル」というEVならではの運転の仕方が、HVでも可能になった。

 そして、このワンペダルによる運転は、ペダル踏み替えによる事故を抑制するといった安全にも資するハイブリッド方式であるとの付加価値をもたらした。

◆  ◆  ◆

 日本車によるHVの開発競争は、単に燃費を競うだけでなく、車をより安全な乗り物にする道を広げる展開にもなっている。

 ここは欧米の自動車メーカーがまだ価値を見出し切れていない側面であり、20年以上に及ぶ日本のハイブリッド技術や電動化への取り組みは、技術的側面で世界を牽引しているとまだいえるのではないだろうか。

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