巨大な飛行甲板を持つ空母と強襲揚陸艦 似ているけどどう違う?

巨大な飛行甲板を持つ空母と強襲揚陸艦 似ているけどどう違う?

 空母といえば、ニュースなどでたびたび話題になるため、その姿をイメージできる方々も多いだろう。実際、米軍の横須賀基地には空母「ロナルド・レーガン」が配備されていおり、テレビなどに映る機会も少なくない。では強襲揚陸艦はどうだろうか? 形こそ空母に似ているが、空母ほど注目される機会は多くない。そのため、強襲揚陸艦を空母と思っている人もいるかもしれない。
 本稿では、似ているようでまったく違う空母と強襲揚陸艦について紹介する。

文・イラスト/坂本 明、写真/US NAVY

■形は似ているが、任務はまったく別

 空母、強襲揚陸艦、どちらも同じような外形を持ち、航空機を運用するためのフラットトップの甲板を持つ大型艦艇だが、実際には船の構造も役割もまったく異なっている。

 両者の違いをひと言でいえば、空母が敵を攻撃するための航空機の洋上基地であるとすれば、強襲揚陸艦は敵前上陸を行う部隊の洋上基地といえる。

ワスプ級強襲揚陸艦(手前)、ドック型揚陸艦(左)、輸送揚陸艦(右)
ワスプ級強襲揚陸艦(手前)、ドック型揚陸艦(左)、輸送揚陸艦(右)

 強襲揚陸艦の特徴は、揚陸艦隊の指揮艦、ヘリコプター強襲艦、ドック型揚陸艦、貨物揚陸輸送艦の機能を合わせ持つことだ。

 複数の艦種の能力を極力1隻に集中し、汎用性を持たせることであらゆる作戦に柔軟に対応できる艦船になっている。さらに敵の反撃を受けても兵力、車両、装備などのバランスが崩れることなく、強襲揚陸艦1隻でも上陸作戦を展開できる自己完結能力を持っているのだ。

 そのため強襲揚陸艦は、揚陸部隊を搭乗させられる居住スペースを持ち、ヘリコプターやティルトローター機、STOLV機などの航空機を運用するための全通型甲板(飛行甲板)と、それらを修理・収容できる格納庫を持つ。さらに、艦内に揚陸部隊を運用したりそれを支援するための車両を収容するスペースがあり、揚陸用舟艇やLCAC(エアクッション型揚陸艇)を搭載、艦内からそれらに兵員や車両などを搭載して発進させることができるウエルデッキが装備されている。

 これに対して、空母は搭載する航空機を運用することに特化した艦なのである。

■保有する国が多い強襲揚陸艦

 21世紀に入ってテロや紛争が世界各地で起き、それを仲裁して監視する国連の平和維持活動(PKO)、平和維持軍(PKF)、イラク戦争やアフガニスタン紛争のような多国籍軍による軍事作戦、世界各地でしばしば発生する大災害の支援など、こうした活動には軍が投入され、『外国の地に軍事力による影響力を及ぼす』パワープロジェクションはアメリカだけのものではなくなっている。

 かつてはパワープロジェクションといえば強力な軍事力を背景に、外国に干渉してきたアメリカの専売特許のような言葉だったが、各国が自国以外の国に軍隊を派遣しどんな形にせよ力を行使(軍事力を行使する)することは珍しくなくなった。

 このような背景を受けて近年需要が高まっているのが揚陸作戦用の艦船である。正確にいえば兵員やその資材(武器や車両から燃料などの消耗品まで含めて)を搭載して海外に展開し、部隊を揚陸させうる艦船というところだろうか。

 用途が限定され、保有するのにもコストがかかる空母は持たない(持てない)国が多いが、多用途の任務に使える強襲揚陸艦やドック型輸送揚陸艦など揚陸艦を保有・運用する国は多い。

 ちなみにドック型輸送揚陸艦とは水陸両用作戦を行うのに必要な兵員、機材、物資などを搭載でき、反撃を受けにくい沖合いより舟艇に兵員や物資を分散搭載して揚陸させることができるドック設備を艦内に有し、さらに船体を大型化して搭載量を増したより航洋性の高い艦艇のことである。

揚陸用舟艇やLCAC(エアクッション型揚陸艇)を搭載するワスプ級
揚陸用舟艇やLCAC(エアクッション型揚陸艇)を搭載するワスプ級

次ページは : ■小国家の軍事力に匹敵するアメリカ海軍の空母打撃群

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