【運転は「許す」がポイント!?】 一般ドライバーにも役立つ!! プロの安全テクニック

「事故なく目的地へ到着する」。クルマを運転するうえで大前提のことで、ドライバーが最も気に留めておかなくてはいけないことだ。悲しい交通事故を今以上増やさないためにも、である。

 が、それはわかっていても、安全にクルマを走らせるのは簡単なことではない。気の緩み&勘違い走行、交通ルール無視、○○ルール、暴走運転など、日本の道路は今や“カオスな交通社会”になっているからである。

 下データの「平成29年、交通死亡事故の特徴」を見ても、相変わらず正面衝突や横断中が多く、注意さえしておけば回避できたはず事故が減らない。

警察庁統計「平成29年、交通死亡事故の特徴」より。平成19年に比べ平成29年は件数は減っているが、「正面衝突」「横断中」「出会い頭衝突」による事故は多い傾向

「運転を職業にするプロの方なら、安全運転のテクやコツ、考え方を持っているはず」。そう考え、職業ドライバー5人の方へ取材を行った。

「歩行者信号を気に留める」「雨の日は3割滑りやすいと思え」「道の先を読む」などなど…、あなたの安全運転のためにも、きっと役立つアドバイスになるはずだ。

※本稿は2019年3月のものです
文:ベストカー編集部/写真:Adobe Stock、ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2019年4月26日号


■運転中は「許す」ことがポイント

(タクシードライバー・加藤洋治さん・日本交通)

 まずはタクシードライバーの方が登場。安全運転のためのテクニックや考え方の部分を、日本交通でキャリア7年、現在研修センター・教官の加藤洋治さんにうかがってみた。

*   *   *  

ベストカー:まず“心構え”というのもあるのではないでしょうか?

加藤洋治さん(以下加藤):はい。大切にしているのは「許す」というキーワード。

日本交通の加藤洋治さん

 たとえば違反したりマナーの悪いクルマや自転車、歩行者に遭遇した時、ついイラッとなりがちですけど、その時に「許す」気持ちを持つこと。

 感情を昂ぶらせてしまうと、最終的に自分の挙動がおかしくなり、自ら事故を起こしかねない。

 だから、いつも気持ちを穏やかに、それを一定に保つことは事故を起こすことから遠ざかるので大切です。「広い心をもって運転しよう」ということですね。

ベストカー:ほかにもありますか?

加藤:「運転がうまいと思わない」ことです。

 タクシードライバーのほとんどは運転に対してポジティブ。でも、運転への自信が過信につながることもあるので、そこは謙虚な気持ちで運転しよう、と。

 運転に慣れると片手運転になったり、目視を怠ったりするけどそれはダメ。基本はしっかりやり、その動作を早く的確にすることが大切。“省いてはいけない”ということです。

ベストカー:“慣れ”は大敵ですね。さて、安全テクやコツについては?

加藤:自分のクルマのまわりの状況は常につかんでおくのは大前提。そのうえで「ルームミラーやバックミラーに映るバイクや自転車の数を数える」、これは特に大切。

 たとえばルームミラーに先ほどまで3台映っていて、今2台なら1台はどこかにいるわけです。それが自車の死角にきていることが多い。これを意識すれば接触事故も回避できます。

ベストカー:事故の多い交差点でのコツ、何かありますか?

加藤:自車の進行方向の歩行者信号も常に見て、車両信号が黄や赤に変わるタイミングを予測。これは一般の方も認識していますけど、歩行者信号の青点滅から車両信号が赤になるまで一般的に9~10秒あるので(※編集部註:交差点の規模で異なる)、それを頭に入れておけば、交差点を安全にスムーズに通過できます。

四輪、二輪、働くクルマなどが混在する道路。みなさん、安全運転は心がけていいただいていると思うのだが……

ベストカー:交差点の右左折の時も気を使いますよね?

加藤:はい。右折のコツはショートカットしないで「直角で曲がる」です。

 右折時はAピラーで見切りが悪くなるので、視野を確保するために直角で曲がることを意識します。常にフロントガラスで見るということ。視野確保のために。

 また、一時停止では「2段階停止」。停止線で一度止まり、その後徐々に進んで見通しのいいところまできたらまた止まって確認。基本的なことと思うかもしれませんが、確実に行うことが大切です。

ベストカー:走行中、心がけておくことやコツはありますか?

加藤:前後左右を走るクルマがどこの地域のナンバーか、常に見ています。たとえば、数台前を走るクルマが西日本エリアのナンバーだとすると、東京の道に慣れていない確率が高い。

 すると、「ここは右折専用車線だ!」と急な車線変更もあり、トラブルに巻き込まれることもあります。

 ですので、離れた地域のナンバーのクルマを見たら「いつも以上に車間距離をとり、車両の急な動きに備える」ようにしています。特に週末ですね。

「お客様の乗降車時も注意を払います」。お客さんの乗降時は脇をすり抜ける二輪車に注意するという。一般ドライバーも注意したい点

ベストカー:夜や雨の時など、状況による安全のためのコツはありますか?

加藤:雨の夜は路面を見ながら走れば、3~4台ほど先のクルマのテールランプが光っているかどうかを確認できます。視界が悪い雨の夜、前走のクルマがブレーキを踏んだことがすぐわかりますよね。「クルマが詰まり始めているな」と予測できます。

ベストカー:ほかは何かありますか?

加藤:バックで車庫入れの際は「あえて一回で入れない」。

 薄暗いところ、民家周辺の段差、植木鉢が駐車場脇にあるかもしれない。なので、一気に下がらないで一度止まり、切り返して入れます。場合によっては窓を開けて目視してバック。

「運転がヘタと思われてもいい。ぶつけるよりはいい」、この考え方ですね。

ベストカー:最後に「こんなクルマは勘弁してほしい」というのは?

加藤:「スマホをいじりながら、雑誌を見ながらの運転」は危険。本当にやめてほしい。

 道路にはそういういろんなクルマが走っているので、私たちは「想定内」という意識を常に持ち運転しています。いろんなことを想定し準備しておけば、トラブル回避できますから。

〈教訓〉
一、相手を許し、広い心で運転すべし。
一、ミラーに映るバイクや自転車を数える。
一、雨の夜は路面に映る赤い光を注視すべし。

■あらかじめの先読みと、そのための準備

(長距離バス運転手・髙橋俊哉さん)

 千葉県に営業所がある、バス運転手キャリア13年の高橋さんにも話をうかがった。

*   *   *  

 高速道路のJCT手前で、道に慣れていないクルマの急な車線変更が多く、ヒヤリとすることは少なくない。

 それを防ぐためにできるだけ先のクルマの様子を見るようにしています。“あらかじめ先読みする”ということですね。

 また、特に首都高速で多い狭い道や急カーブ。そこをバスで走る時は、大型車(トラックやバスなど)と並走しないこと。

 車両同士が接近する危険性が高くなる。その場合はアクセルを緩め、先に行ってもらう。速く行くより安全に行くことが大切ですから。

みなさん、「交差点では細心の注意を」と語っていた。基本的なことだが、その基本が大切(※写真はイメージ)

 操作として気に留めることは“ブレーキをできるだけ踏まない”こと。

 バスはどうしてもブレーキパッドの摩耗が激しいので、長い下り坂ではエンジンブレーキとシフトダウンで減速し、なるべくブレーキを踏まない。車内の揺れも解消でき、お客様も快適に過ごせますからね。

 そのためにも出発する前、走る高速の道をイメージし、「今日は長い下りが多いな」など前もって準備しています。

 最後に「事故が多い交差点では徐行。左折時は最徐行」。基本的なことですが、これは徹底しています。大切ですね。

〈教訓〉
一、高速では先のクルマの動きを見て“先読み”する。
一、交差点は徐行など、基本的なことを徹底して守る。

■目配り「前7:後ろ3」。雨の日は通常の7割で

(長距離トラック運転手・長野潤一さん)

 トラックドライバーの視点では、『ベストカー』本誌の連載でもおなじみの長野準一さんに語っていただいた。

*  *  *  

 トラックドライバーの使命は、依頼主の荷物を決められた時間に安全に届けること。それゆえ、事故はあってはならないこと。私が実践していることを挙げていきます。

長野さん運転のスカニア・トレーラー。この日の積荷はWECマシン(富士スピードウェイにて)。26tトレーラーで、関東~大阪と長距離を走ることも……

●常に目配り

 走行中、落下物など何かの異変があっても常に避けられるように、自車の周りの交通(クルマ、自転車、歩行者など)がどこにいるのかを常に把握しておく。

 「前7:後ろ3」ほどの割合で、後方の目配りにも重きを置きます。

●常にスピードメーターを見る

 重い重量なのでスピードメーターを注視。カーブでは遠心力がかかり、減速しないと横転につながります。

 またいつも通るルートでは「このカーブは何km/hまで減速する」と決めて走行。これが安定走行にもつながります。

●ETC通過は20km/h

 ETC料金所では安全に通過できるよう、いつも一定速度(20km/h)まで減速するように計算して走行。安全のため、意識することは大切。

●指差し確認

 発進する時や交差点などで低速で右左折する時、前を見たりミラーなどを指差して「ヨシッ! ヨシッ!」と確認。鉄道などでも実施されているけど、指を使うことで確認意識が数段上がります。

●最大限の注意“自転車”

 道交法どおり自転車が車道を走ることはいいけど、逆走、ふらつき走行、いきなりの斜め横断……など、こちらの予期せぬ動きをするので要注意。

 だから「自転車を運転している人は何も考えていない」と思っていることがリスク管理につながります(※もちろん、法規遵守する自転車に乗る人も大勢いますが……)。

●荷傷みさせない運転

 道路の段差乗り越えなどの時は4つの(配置の)タイヤの動きに注意を配ることも大切。だから、いつも通るルートの、路面の悪い箇所はしっかり覚えています。

「自車の進行方向の歩行者信号を常に見る」

●雨、雪の運転はこうする

 雨の日の走行は通常の7割ぐらいの運転(3割は滑りやすくなっていると認識する)。また、雪の日は通常の3割ぐらいの運転(7割は滑りやすくなっていると認識する)。

●デイライト

 自車の存在を知らせるために、昼間もライトを点ける。海外ではこれが常識になっている国もありますね。

●サングラスを車内に

 日没、日の出は急に逆光になり、眩惑に注意したい。だからいつでも手の届くところにサングラスを用意しておく。これは意外と重要です。

 ……と挙げてみたけど、運転中、妙な動きをする乗用車も多い。それに腹を立てず“織り込みずみ”で対応するのがプロの運転につながります。

〈教訓〉
一、「前7:後ろ3」ほどの割合で常に目配り。
一、路面の悪い箇所はしっかり覚えておく。

■「見る」ということについて、常に考える

(池之平昌信・カメラマン)

 国際C級ライセンス取得。『ベストカー』でもおなじみ、数々のレース現場やカー雑誌などで撮影している池之平昌信カメラマンにもコツを聞いた!

*   *   *

 安全のためには「見る」話に尽きる。「見ているつもり」では事故が起きますよ。運転は「認知、判断、操作」というけど、その認知が重要で認知(見る)をしないと、判断も操作もできない。

 加齢とともに、目の網膜には“見えない部分”が増えるとされ、私も最近、それを実感。でもそれによる危険性を防がないといけない。

「バックしての駐車はあえて一回では入れない」

 たとえば駐車場から道路へクルマを出す時、左右へ何度も首を振る、意識的に眼球を動かしてよく見る。そうすることでよく見える(認知できる)。

 また道路に面する物陰。そこに何があるかは超能力者じゃないんだからわからない。F1ドライバーでも見えないんだから、低速で走るしか危険回避はできない。なのでよく「走りがジジ臭い」と言われます(笑)。

〈教訓〉
一、左右へ何度も首を振る、意識的に眼球を動かして物事をよく見る。

■人とクルマを守る「リスク管理」が大切

(レーシングドライバー・脇阪寿一さん)

 クルマの限界を知り尽くすプロは安全性をどう意識するのか。脇阪さんに聞いた。

*   *   *

 クルマとそれに乗る人を安全に目的地まで届ける。運転するうえで思考的にも技術的にも、これが最も大切なことです。

『ベストカー』本誌の連載でもおなじみ、脇阪寿一氏。ドライバーとして86/BRZレースなどにも参戦(Photo/折原弘之)

 イベントなどでも、運転する誰もが持つ「交通事故を起こす可能性」を少しでも引き下げるために、この話をよくしていますよ。

 モータースポーツの面白さや“ワクドキ感”はスーパーGTを通じて伝わっていると思うので、プロレーシングドライバーとして、技術から安全性を伝えることが社会貢献のひとつと思っています。

 とにかく大事なのは「リスク管理」。たとえば高速道路を走行中、数台前に左右にフラフラしながら走るクルマがいるとします。居眠りかスマホを見ながら、と想像できます。

 その時、「フラフラして危ないな~」と漠然と思うだけか、そのクルマと距離を空けるのか、追い越し車線から素早くパスするのか……と、考えるのか考えないかの差。

「ミラーに映る二輪車を数える」

 これは非常に大きなことで、前にフラフラするクルマがいるということは事故になる可能性が高く、その考え方の違い(差)で事故に巻き込まれるか、巻き込まれないか、になる。

 常に道の先を見て、先に起こるかもしれないことを予測することがとても大切です。

 一般道でも、自転車や人が急に飛び出すこともあります。

 なので「ここでもし人が飛び出てきたら、こう対処する」といつもイメージし、意識すること。自車のすぐ前で飛び出しが起きる場合もあるけど、気を配っていれば、下のほうに影が見えて事故を防げる。だからリスク管理は大切。

 クルマは楽しい反面、事故を起こした場合、“凶器”にもなる。その意味でも大切なことは「人を傷つけない」、そして「自分の命は自分で守る」という意識。

 クルマの運転は社会的に大きな責任を背負っている、ということをすべてのドライバーは今以上に意識する必要がありますね。

〈教訓〉
一、漠然と思わないで早く次の行動をとる
一、楽しいと思う反面、“凶器”にもなる

*   *   *

 いかがだっただろうか。企画担当が運転中よく考えるのは、「事故を起こそうと考えながら運転している人は基本的には存在しない」ということだ。が、それにもかかわらず事故は起こる。

「誰にでも起こりえること」=「自分も起こしてしまうかもしれないこと」と、常に「自分ごと」として考えるのが「安全」の第一歩なのではないかと思う。

 参考になれば幸いだ。


【番外コラム】 まだまだあるゾ! 安全テクニック

●一般道の2~3車線で信号待ち。青になってもすぐ発進しない。まだ横断している人や、右折が終わっていないクルマもいる。じっくりと確認。

●一般道でも高速でも真横に並んで走らない。なにかあった場合、逃げ道がなくなるから。

●車線変更は急ではなく直線的にずれる感覚で。それによりサイドミラーの死角になっている後続車に途中で気づけることもあり、安全。

●夜、首都高などカーブのブラインドでは道路の側壁を見る。赤いブレーキランプが光っていたら、ブラインドの先はクルマが詰まっている。

●高速道路の渋滞の時。後続車からの追突を避けるため、自分が渋滞の最後にならないように少しずつ減速していく。

●駐車場でお金を払う時、シフトは必ず「P」か「N」に入れる。「D」だとクルマが動く可能性もあり危険。

●踏み切り待ちでは(特に先頭の時)、「P」に入れる。ペダルの踏み間違いをすることもあるから。

●雪道、まわりに車両や人がいないことを確認してあえてブレーキを踏む。路面状況を知るために。

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