日本独特の自動車カテゴリーであり、農業や漁業、配送業に携わる人にとっては欠かせないクルマである軽トラック(通称:軽トラ)。最近では、北米でも注目を集め、輸出も増えているそうだが、時代が時代なだけに、BEV軽トラの登場(存在)も気になるところ。はたして、軽トラのBEVはいつ登場するのか、また、安く実現することは可能なのか!??
文:立花義人、エムスリープロダクション
写真:DAIHATSU、NISSAN、SUZUKI、HW ELECTRO
軽トラEVはすでに販売されている
BEVの軽トラに関しては、大手自動車メーカーからはまだリリースされていないものの(軽バンは、三菱の「ミニキャブMiEV」が2021年3月まで販売されていた)、2021年7月にBEVのベンチャー企業「HW ELECTRO株式会社」から、小型EVトラック「エレモ(ELEMO)-K」がすでに発表されている。
エレモの航続可能距離は120kmで、満充電までの充電時間は6時間。最大積載量は一般的な軽トラと同じ350kgで、最大トルクは120Nm。ガソリン車のダイハツ「ハイゼットトラック」の最大トルクは60Nmなので、エレモは数字の上では2倍というスペックであり、モーター走行ならではの力強い加速を得ることができるようだ。
荷室のバリエーションは、ロープフック付きのアルミ製荷台である「ピックアップ」のほか、一般的な箱形タイプの「ボックス」があり、ボックスについては左側スライドドアのみと、両側スライドドアの2タイプが選べる。価格はピックアップが267万3000円、ボックスが314万6000円〜という設定。ガソリン車のハイゼットトラックが90万2000円(5MT・2WD・エアコン付き)で買えることを考えると、やはり高額な印象だ。
装備を簡略化すれば、かなり買いやすい価格の実現も期待できる
農業や漁業、畜産業などで使う軽トラは、敷地内や町内での移動が多いため一日あたりの走行距離が少ない。前述のエレモも120kmという航続距離だが、使い方によっては不満のないスペックだろう。自宅に給電設備を導入すれば、帰りに(場合によってはわざわざ敷地から出て)ガソリンスタンドに寄る手間もない。また低速からしっかりトルクをひねり出せるモータードライブの特性は、荷物を載せた状態で悪路を走る機会の多い軽トラにとって、強い武器になる。ちょっとした山道や急な上り坂でも扱いやすく快適だろう。
また、多くのBEVモデルのように、災害時などに100Vの交流電源を取り出せるコンセントを備え、電源供給車としての活用も可能だ。商用車の場合は移動販売の電源などにも活用できるため、発電機を別に持ち運ぶ必要もなくなる。
現時点ではまだまだBEV自体が高額な印象ではあるが、たとえば日産「サクラ」のように乗用モデルでも254万8700円〜という価格が実現できているものも登場している。サクラの航続距離は180kmなので、軽トラの場合は100km程度に抑えて(バッテリー容量を抑えて)、装備もかなり簡略化できることを考えると、100万円を切ることは難しいにしても、今後はかなり買いやすい価格での登場が期待できるのではないだろうか。
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