去る10月5日経団連は第3回モビリティ委員会を開催し、ジャパンモビリティショーで日本発のモビリティを数多く発信していくことや、モビリティ産業を取り巻く課題について議論が交わされた。そこで、豊田章男自工会会長(モリゾウさん)が訴えたことが興味深かった。
文、写真/ベストカーWeb編集部
■モビリティ委員会設立の効果
経団連のモビリティ委員会とは自動車を含めたモビリティ産業の国際競争力強化を図るために作られたものだ。ここでいうモビリティとは人やモノの移動全般を指していて、旅行やエネルギー、物流などもモビリティ産業に含まれ、モビリティ委員会には200を超える会社や団体が参加している。
モビリティ委員会の設立は自工会をはじめとする自動車5団体だけではなかなか難しかった課題解決に向け、広範な産業との協力関係が生まれつつあると歓迎されている。モビリティ委員会設立を経団連にお願いしたのが豊田章男自工会会長(以下モリゾウさん)だ。
モリゾウさんと自工会はかねてより自動車産業で働く550万人の雇用を守ると宣言してきた。550万人の雇用を守りながら、カーボンニュートラルを実現しなければならない。
550万人の内訳をみると自動車やその部品の製造、販売、整備に関わる人が240万人ほどで、バスやトラック、タクシーなど輸送に関わる人が280万人、そのほかにガソリンスタンドや保険に携わる人たちがいる。
カーボンニュートラルには例えば航空機や船舶といった自動車以外の輸送やエネルギー産業、自動車をはじめさまざまな工業製品の原材料となる鉄鋼業などの協力が不可欠で、自動車産業がハブになり広範囲な産業と連携すれば大きな成果が生まれるはずだ。
実際にモビリティ委員会設立によって全産業でカーボンニュートラルに取り組み、日本の競争力強化につなげていくという流れが生まれている。モリゾウさん流に言えば、共感が生まれてきたのだ。
■モリゾウさんがリーダーたちに語った言葉
10月5日のモビリティ委員会でモリゾウさんはこんな話をしている。少し長いが引用したい。
「私はずっと550万人の自動車産業の未来を守っていくという発言を3~4年続けてまいりました。自動車産業を振り返りますと、国内車両生産の経済波及効果は53兆円に上り、自動車部品の輸出による貿易黒字は約15兆円でございます。
資源のない日本がエネルギー資源を購入しているほぼ同じ金額を自動車と部品の輸出によって稼いでいることになります。
それに関わっている方々の雇用が550万人、ほかの産業や旅行、エネルギー産関連などを含めたモビリティ産業全体では850万人の方々になります。
そして、日本の製造業全体で見ますと約1000万人弱の方々とともに未来を作っていこうという形になるのです。
日本で市場が伸びている時は互いに競争し、個社を伸ばしていくことを考えていったわけですが、モビリティ委員会でも皆様の感想でも言われたように、「個社ではなかなか限界があるよね。もっと協調分野を広げて、業界を超えて、一緒に未来を作っていく必要があるよね」というコンセンサスが得られたと思っております。
モリゾウさんは自動車産業が日本を支える基幹産業であることを話しつつ、モビリティ産業という枠組みを作ることで、経営者たちがホンネを言え、未来に向けて協調できる環境づくりを進めていることがうかがえる。
さらにモリゾウさんはこう続けている。
「何をすれば信頼できるか? 何をすれば評価されるか? 信頼と共感がないと未来づくりはなかなかできない。その思いを多く持っておられる方というのは、サイレントマジョリティーだと思います。弱い立場の方々だと思います。
そのなかにおいて、我々大人たちが「誰のために未来づくりをしていくのか?」ということが大事なのではと。「未来の私自身から、今の大人である私に『ありがとう』といってほしい」ということがベンチマークになるのではないかと思います。
それぞれのリーダーの方々が、「将来の自分から、今の大人の自分に『ありがとう』といえるための行動や発言というものはどうあるべきか?」そんなコンセンサスを得た、本日のモビリティ委員会だと思います。」
と語っている。
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