■6MTとのマッチングが最高(B58)
GRスープラRZの3L、直6ターボはBMW製。個人的には、近年のBMW直6ターボに対して、フィーリング面で不満を持っている。
マニアックな話だが、超初期のツインターボ時代はターボ化によるマイナスはほとんどなく、突き抜けるターボのパワーとトルクに大感動した(個人的に335iカブリオレを購入)。
ところがその後、ターボがツインではなくツインパワー(シングルタービン+可変バルブ機構)になったことで、性能は出ているけれど、フィーリングの奥深さが消えた。それは高回転域で顕著。中速域まではステキだが、トップエンドまで回しても「回るだけ」という感覚になった。
GRスープラRZに関しても、同様の感想を持っていたが、今回試乗したのは、2022年に追加された6MTモデル。個人的に初試乗で、スープラそのものの魅力を大いに見直すことになった。
アイドリング状態で軽いブリッピングをかますと、「バルン! バルン!」と、昔懐かしいチューニングエンジンのようなサウンドが響き、この時点で早くも涙が出そうになった。走り出しても感激の涙は止まらない。
現代のATは超速でロックアップをかますから、MTだからってレスポンスがダイレクトになるはずはないのだが、なぜかよりダイレクトに感じてしまう。
中回転域でアクセルを踏み込んだ時に炸裂するトルクと、同時に感じる直6のウルトラスムーズネスは「うおおおお! これぞBMWのシルキー6!」と叫ぶしかない。気持ちいいぜ!
ただ、トップエンドまでブチ回した時の平板さは相変わらず。中速で大炸裂&快感、トップエンドで「あれ?」という特性は、基本的にはダウンサイジングターボのソレ。日常的なレスポンスやトルクは最高に気持ちいいが、本気になるとどこか肩透かし感がある。
しかしそれでも、BMWの3L、直6ターボをMTで味わったのは久しぶりで、「やっぱりこれが王道だな」と痛感させられた。見直したぜ、GRスープラ!
●B58採点(10点満点)
・レスポンス:10点
・回転フィール:8点
・高回転の伸び:7点
・パワー感:9点
・トルク感:9点
・官能性:8点
・エンジン総合評価:8点
・クルマと合わせた評価:9点
■無敵であることが最大の美点(VR38DETT)
正直なところ、GT-Rの3.8L、V6ツインターボを、あまり気持ちいいと感じたことはない。速さはピカイチだし、もちろんチューニング素材としてはブッチギリで世界ナンバーワンだが、エンジン快感フェチとしては、回転フィールの快楽を求めて乗る種類のエンジンではないと断言する。
そこにあるのは暴力的な加速だ。しかも現代の水準に照らすと、かなりドッカンターボの部類に入る。GRスープラRZからGT-Rに乗り換えると、それがよくわかる。
GRスープラは、アクセルを踏めばどの回転域からでも瞬時に反応するが、GT-Rはタービンの動きがだいぶ重い。
2020年モデルのビッグマイナーチェンジで、そのあたりが劇的に改善されたのに、それでもやっぱり現代のターボとしては動きが重く、アクセルを踏み込んでから大パワーが炸裂するまでタイムラグを感じる。
ただし、タービンがしっかり回った時のパワーはレベルが違う。GT-Rのエンジンはそういうキャラクターで、それが最大の魅力だ。
快感面で重要な意味を持つサウンドについては、初期モデルからずーっと、特段のものはなかった。「ひいいいいいい~ん」というサウンド(複雑な4WD機構の抵抗音を含む)はGT-R独特ではあるが、演出にこだわった感じはほとんどなく、自然に漏れているだけに思える。
サウンドを含めた回転フィールを表現すると「工場」だ。黙々とパワーを生産する工場なのである。相手をブチ抜いた時は快感だが、相手がいないとちょっと寂しい。
やはり、GT-RのVR38DETTの美点は、ひたすら「無敵」という点にある。快感など無視して、性能だけを追求した兵器のような特性に凄味を感じる。2024年モデルは、騒音レベルを抑えるために特殊なサイレンサーを採用し、さらにその感覚が強まったかもしれない。
この情け容赦のないGT-Rのエンジンフィールを、快楽に感じる者もけっして少なくないはずだ。なにしろ無敵なのだから。
●VR38DETT採点(10点満点)
・レスポンス:8点
・回転フィール:7点
・高回転の伸び:9点
・パワー感:10点
・トルク感:10点
・官能性:5点
・エンジン総合評価:10点
・クルマと合わせた評価:8点
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