ロードスターの歴史の中でも「異端児」とされがちな3代目NCロードスター。それまでのNA、NBと比べて大きくなったことからそのように言われてしまうのだが、NCは実際に乗ってみるとしっかりとロードスターらしさがあったのだ。
文/西川昇吾、写真/MAZDA
■世間が言うほど重くない
1989年に登場し大ヒットした初代NA型、そして1998年に登場し高いハンドリング評価を受けたNB型がNCロードスターの先祖にはある。NC型になって、ボディサイズが大きくなり3ナンバーとなった。もちろん車重も重たくなった。
これらの要因が、NC型が「ロードスター」として評価されない理由なのだが、そもそもNAからNBに変わった時の変化度はどうだったのだろうか?
NA型終盤のカタログモデルで走りのグレードであるSスペシャルと、NB型の走りのグレードRSで見てみよう。NAのSスペシャルは車重990kg、NBのRSは40kg重たくなって1030kg、全幅は5mm広がって1680mmとなった。
では、NBの最終型とNCの初期型ではどうだろうか?
確かにボディサイズは大きくなった。全長3995mm×全幅1720mm×全高1245mm、ホイールベース2330mm。全長で40mm、全幅で40mm、全高で10mm、ホイールベースは65mmも大きくなっている。
しかし、車重はNC型の初期RSが1100kgなのに対して、NB型後期のRSは1070kgとなっている。その差は30kg、NAとNBの差よりも10kgも小さいのだ。つまり、世間が言うほどNCロードスターは重たくなっていない。
■厳しい制約の中で実現した軽量化
NC型の開発には厳しい制約があった。当時のマツダの経営状況はあまり良くはなかった。フォード傘下に入っており、開発費に関してもフォードが科せた厳しい状況の中でやりくりしなければいけなかったのだ。
そのため、NC型のプラットホームはRX-8と共用することとなった。これにより、NC型は大きくなることが必然的に決まっていたのだ。
そんな厳しい制約でもロードスターらしさを失わないために、開発はコスト制限の中でも軽量化を実現するような様々な工夫が施された。
これによりハイテン(高張力鋼板)を取り入れた独自設計のホワイトボディはボディサイズが大きくなっているのにも関わらず、NB型よりも軽く仕上げた。
しかし、問題は足回りにあった。ハイパワーなRX-8と共有するということで、どうしても重たくなってしまうのであった。
そこに吹いた神風が円高だ。海外市場での収益が多いマツダにとって円高は経営圧迫の要因となる。そこで部品コストを25%削減するように経営に参加していたフォード陣から言われたのだ。
これを利用してコストダウンという建前を利用して、軽量化という本音を実現する足回りを提案。工数は増えるものの、トータルでの収益が上がることが経営陣に認められ、専用の足回りが完成した。
このような様々な工夫で、厳しい制約ながらもロードスターらしさを大切に開発が行われたのがNC型だったのだ。
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