■徹底した他社研究が日本のミニバンを変えた!!
【初代アルファード】2002年
1990年代の中盤から2010年頃までのトヨタは、トヨタ車以上に売れるライバル車を許さなかった。
特に執拗に追いかけられたのがホンダだ。ホンダがストリームを発売すれば、トヨタはウィッシュで対抗する。
ホンダが燃料タンクを前席の下に搭載して空間効率を高めたモビリオを開発すると、トヨタは薄型燃料タンクの初代シエンタを造った。
ホンダが初代フィットをヒットさせると、急遽ヴィッツに1.3Lエンジンを搭載して、フィット1.3Aと同じ114万5000円で設定した。
こういったトヨタのライバル対抗の中でも、特に凄かったのが初代アルファードだ。
まず1997年に日産が初代エルグランドを発売すると、堅調に売れ行きを伸ばした。この時点でトヨタはLサイズミニバンのグランビアを用意したが、販売面で初代エルグランドに負けていた。
トヨタは1999年に姉妹車のグランドハイエースを加えたが、この売れ行きも伸び悩む。
そこでトヨタは渾身の開発を行い、2002年に初代アルファードを発売した。駆動方式は従来の後輪駆動から前輪駆動に改め、居住性や走行性能を向上させて、外観も大幅に洗練させた。
しかも発売日は2代目エルグランドの翌日で、報道発表会には、CMで起用した俳優のジャン・レノを招いて話題作りにも力を入れた。
一方、エルグランドは精彩を欠いた。当時の日産はルノーと業務提携を結んだ直後で、2代目エルグランドもプラットフォームは初代と共通で後輪駆動だ。
加えてフロントマスクのデザインが不評で、売れ行きが伸び悩む。つまりエルグランドの失敗も重なって、売れ行きはアルファードの圧勝となった。
ちなみにこの時期のトヨタの執拗なライバル対抗は、ほかのメーカーの開発力を高める役割を果たした。特にホンダはトヨタに鍛えられ、優れたミニバンを開発できるメーカーに成長した。
【エスティマルシーダ&エミーナ】(発売:1992年)
トヨタは1990年に「ニューコンセプトサルーン」、つまり新時代の高級車として初代エスティマを発売した。エンジンは直列4気筒の2.4Lで、安全装備は4輪ABSのみでエアバッグは付かないのに、価格は2WDが消費税別で296万5000円に達した。
卵型の外観は斬新で、ボディは全幅が1800mmに達する3ナンバーサイズのみだ。一躍憧れのクルマになった。
驚かされたのは1992年に、エスティマルシーダ&エミーナを発売したことだ。ホイールベース(前輪と後輪の間隔)は変えずに、全長と全幅を縮小して5ナンバーサイズに抑えている。
価格の求めやすいグレードでは、リヤサスペンションを独立式のダブルウイッシュボーンから車軸式のトレーリングリンクに変更して、コストを下げた。エンジンは2.4Lと併せて、新たに2.2Lのディーゼルターボも加えている。
そしてリヤサスペンションが車軸式になる2.4LガソリンのFは、消費税別の価格が191万5000円だ。
売れ筋のXも207万9000円であった。3ナンバーサイズのエスティマを街中で頻繁に見かけるようになり、新時代の高級車として定着した頃を見計らって、約100万円安い5ナンバー車のエスティマルシーダ&エミーナを発売したわけだ。
その結果、ヒット作になっている。
ちなみに日産は、1991年に5ナンバーサイズのバネットセレナを発売し、1993年には3ナンバーサイズに拡大したラルゴを加えた。
エスティマルシーダ&エミーナとは逆のパターンで、価格の安いセレナを先に発売している。
こうなると拡大版のラルゴは有り難みが乏しく、しばらく販売不振に陥ったが、1995年にエアロパーツを装着したハイウェイスターを設定すると売れ行きが伸びた。
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