現在は数えるほどしかラインアップされていない、日本メーカー製のステーションワゴンだが、いまから30年前、1990年代の国産車のブームは、ステーションワゴンにあった。なかでも売れに売れまくっていたのが、スバルの「レガシィツーリングワゴン」だ。Z世代が知らないであろう、レガシィツーリングワゴンの人気と実力を振り返ろう。
文:立花義人、エムスリープロダクション
写真:SUBARU、TOYOTA、VOLVO
爆発ヒットの礎を築いた初代
初代レガシィは1989年2月に登場。スバル伝統ともいえる水平対向エンジンや四輪駆動技術のメカニズムを走りに生かしているという意味を込め、「遺産、伝承」を意味する「レガシィ」と名付けられたこのモデルは、「気持ちのよい走りができるクルマ」を理想として、名機「EJ20」水平対向エンジンとともに鮮烈なデビューを飾った。
5ナンバーサイズに収めつつもひと回り大きく、ゆとりのあるサイズ感で、ボディタイプは4ドアセダンとステーションワゴンの2種類。ただ主力をおいていたいのはステーションワゴンのほうであり、1989年9月に追加設定された2.0L 水平対向DOHCターボを搭載した最上級グレード「GT」の登場により、「ハイパワー4WDワゴン」という新たなカテゴリも確立。その後、初代レガシィツーリングワゴンは徐々に販売台数を増やしていき、2代目、そして3代目の爆発的な人気へとつながっていった。
5年弱で約50万台を売り上げるほど、大ヒットに
この初代レガシィツーリングワゴンが登場した当時といえば、日本がバブル景気に沸いていた時代。クルマも高級車や輸入車がよく売れた時代だった。また、スキーなどのウインタースポーツや、キャンプなどのアウトドアがブームとなっていたことで、パジェロやデリカスターワゴンなど「RV(レクリエーショナルビークル)」とよばれるモデルが人気だった時代でもあった。
それまでも、スバルでいえば「レオーネ」など、ウインタースポーツやアウトドアレジャーで活躍しそうな四輪駆動のステーションワゴンは存在していたが、この頃のワゴンは商用バンをベースにつくられたものであり、高級車が好まれた当時は敬遠されがちだった。
そこへ登場したレガシィツーリングワゴンは、乗用車専用設計であり、デザインもスポーティで大人の雰囲気。同じステーションワゴンである、「ボルボ 850エステート」が輸入車として爆発的な人気となったことで、ワゴンの既成概念を見事に取り払ってくれたことも、レガシィツーリングワゴンがヒットした要因であろう。
また、「レガシィ」という威厳のある言葉の響きや、「ワゴン」ではなく「ツーリングワゴン」と呼ぶステータス性、「GT(グランドツーリング)」という風格あるグレード名、確かなメカニズムとパワーなど、複数の要素が重なりあい、「ゆとりのある大人が休日を楽しめるクルマ」として認められた結果、2代目レガシィツーリングワゴン(1993年10月~1998年6月)は、通算49万台にも及ぶ販売を記録。2022年のトヨタのカローラシリーズの年間販売台数が約13万台であることを考えれば、この2代目レガシィツーリングワゴンがどれだけヒットしたのか、おわかりいただけるだろう。続く3代目(1998年6月~2003年5月)も、通算約26万台を売り上げた。
コメント
コメントの使い方初代のデザインが大好きでした。ボルボ850エステートがBTCC参戦もあって、速いステーションワゴンとして人気でしたが、日本の一般道(当時は荒れた狭い道路の方が多かった)を走るならレガシィの方が上でしたね。また、初代から競技用車両がラインナップされていたところも、さすがスバルだなと思いました。