消滅の原因はアマゾンと免許制度のせい!? トヨタのよく見たクイックデリバリーが終わったワケ

消滅の原因はアマゾンと免許制度のせい!? トヨタのよく見たクイックデリバリーが終わったワケ

 皆さんはネット通販を使ったことはありますか? 昨日頼んだものが今日届く、それが普通だとおもっていませんか? しかし、その陰にはトヨタが作ったある一台のクルマが支えていた事をアナタはまだ知らない。今回はそんなクルマを皆様に紹介しよう。

文/西川昇吾、写真/TOYOTA

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ベニヤ板の試作車から始まった「クイックデリバリー」

車内の作業時に腰をかがめる必要があり、その必要がない天井の高いクルマが欲しいという現場の声を実現したクルマ
車内の作業時に腰をかがめる必要があり、その必要がない天井の高いクルマが欲しいという現場の声を実現したクルマ

 昔、街中で数多く見かけることが出来たクルマと言えばトヨタのクイックデリバリーだ。

 名前を聞いてもピンと来ないかもしれないが、クロネコヤマトの宅急便カラーのアレと言えばピンと来る人は多いのではないだろうか? 今回はそんなクイックデリバリーについて振り返ってみよう。

 クイックデリバリーが登場したのは1982年だ。このクルマが誕生する経緯となったのはヤマト運輸の試行錯誤が大きく関わっている。

 1980年ごろ、ヤマト運輸はバンタイムの集配車両を使用していた。今で言えばハイエースで宅配しているイメージだ。

 しかし、車内の作業時に腰をかがめる必要があり、その必要がない天井の高いクルマが欲しいというのが現場の声として挙げられていたのだ。

 そこで九州支社の車両開発プロジェクトチームは1980年3月にベニヤ板による試作車を製作。

 そして、家庭に小口配達する宅急便というシステムの考案者で、「宅急便の父」と呼ばれた当時の代表取締役社長である小倉昌男氏は、直筆で豊田章一郎社長に手紙を送った。

 その内容は「お客様に良いサービスを提供するために使いやすい車両がどれほど必要なのか」という熱い信念を伝える内容であった。

トヨタが造り進化させた宅配のスペシャリスト

 こうしてヤマト運輸とトヨタのタッグでクイックデリバリーが1982年に登場した。まず特徴的なのがその室内高の高さだ。

 初代モデルの室内高は1785mmで多くの成人男性でも普通に立ったまま作業できる。

 また、狭い道でも乗り降りできるようにサイドドアはスライドドア式だったり、助手席から運転席への出入りも容易に出来るような構造を採用していたりしていた。

 1985年には2代目へと進化。左右スライドドアなどが配達スペシャルとしての進化だ。また、積載量2トンのモデルも追加された。

 1999年には3代目へと進化。エンジンを前方に搭載したセミボンネットタイプにして、車内のウォークスルー機構と乗降性をより進化させたほか、フロアとステップフロアの段差を減らして乗降性を向上。

 またフロントウィンドウのサイズを拡大し広い視界を実現した。その後もLPGエンジン搭載車を設定したり、ディーゼルハイブリッドシステムを新たに搭載したりと時代に合わせて環境対応もしていきながら進化をしていった。

 しかし、2016年に生産終了となってしまったのだ。

■宅配業者から惜しまれながらも生産終了した仕方のない理由

準中型免許の登場と需要の変化に伴い、惜しまれながらもクイックデリバリーは現役を退くことになった
準中型免許の登場と需要の変化に伴い、惜しまれながらもクイックデリバリーは現役を退くことになった

 生産終了になったのはクイックデリバリーの需要が少なくなったのが理由であるが、その背景には配達業界の環境の変化がある。

 現在ではネット通販の普及によりトラックでの大型宅配便の需要が高まり、最後の各家庭への小口配送は小型や軽商用車のバンで行うスタイルが主力となってきている。

 また、筆者は免許制度の変更も大きく影響していると考えている。2017年に普通自動車の免許制度が変更され、準中型免許が新設された。

 これにより2017年以降に免許を取得した人は運転できるのが総重量3.5トン未満、最大積載量2トン未満の車両に限られることとなったのだ。

 これでは車両総重量の関係からクイックデリバリーは運転できない。求人しても対応できる人材が集まらないという結果になってしまう。

 ネット通販が当たり前の現代になってその姿を消してしまったクイックデリバリーだが、このクルマの功績が無ければ便利なネット通販はココまで普及していなかったかもしれない。間違いなく日本を豊かにした名車の1台だ。

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