■「カワイイ? それともやりすぎ?」な2台
■日産 Be-1
1985年の東京モーターショーに、日産が同社の初代マーチをベースにしたコンセプトカーを展示した。
「ここちよさ優先のナチュラルカー」をテーマにしたそのコンセプトカーは、懐かしさを感じさせるキュートなフォルムが話題を呼び、やがて限定生産で市販されることになった。
車名こそ当初のB-1からBe-1(ビーワン)に変更されたものの、ほぼモーターショーそのままのスタイルで1987年に発売。1000台の限定生産モデルだったが、アッという間に受注は埋まり、抽選方式で購入者が選ばれた。
Be-1は当時流行していたパイクカー(パイク【槍の先端】が尖った個性を意味した)の1台で、このBe-1の成功が、日産製パイクカーシリーズ誕生のきっかけになった。
日産 Be-1は個性の強さがいい結果をもたらした例といえる。
■三菱 ミラージュディンゴ
三菱初のFFモデルだったミラージュは、1978~2002年まで同社の主力車種として活躍し、手堅い人気を保っていた。
そんなミラージュの名を冠した別モデルが発売されたのが1999年。ミラージュディンゴと命名された新型トールワゴンは、ミラージュの名を持つものの、完全に独立した車種だった。
ミラージュディンゴで特に注目されたのがその顔つき。当時では珍しい縦型のヘッドライトは、見る人によってはかわいらしく感じられたが、そうは思わない人もまた一定以上の数が存在した。
エンジンは3タイプが用意され、1.5Lモデルは新規に開発された直噴式4気筒を採用するなど、デザインだけでなく中身も意欲的なものであった。
しかし、やはりこのデザインはアクが強すぎたのか、セールスは順調とはいえず、これを受けてメーカーは2001年にミラージュディンゴのマイナーチェンジを敢行。このモデルの個性だったフロント回りはオーソドックスなデザインになった。
マイナーチェンジを実施しても販売成績は好転せず、ミラージュディンゴは後継車種を生み出すことなく2002年に生産を終了している。
■出てきた時代が早すぎた個性派モデル
■ホンダ エレメント
最後に紹介するのは、ホンダがアメリカ市場向けに開発・販売し、日本には逆輸入のかたちでリリースされたSUVのエレメントだ。エレメントの発売は2002年12月。まずは北米で販売が開始され、翌年4月に日本国内での市販がスタートした。
エレメントのベースになったのはCR-V。しかし、同車が通常の前後ドアを採用しているのに対し、エレメントでは後部ドアのヒンジを車体後ろ側に設ける“観音開き”スタイルを採用していた。
そしてなんといってもエレメントの特徴はそのルックス。デザインモチーフはアメリカのビーチにあるライフガードステーション(監視台)で、独特のツートンカラーも人の目を引いた。
エレメントはその狙いどおりアメリカ市場に受け入れられたが、やや大柄なことも災いして日本でのセールスを伸ばすことができず、国内での販売期間は2年3カ月と短かった。
キュートな見た目で実用性にも優れたエレメントは、SUVが完全に定着した現在の日本なら商業的成功を収めた可能性も高い。アメリカでは2011年まで販売が続けられるなど、一定の成果をあげたのが救いではあった。
コンピュータによる設計が進んだ現在では、個性的なクルマが誕生する余地が少なくなっている。だが、クルマ好きとしては、今後も尖ったデザインや機能を持ったクルマが登場してくることを期待したい。
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