ついに姿を現した新型3代目フリード。今回はこれまで筆者が新型フリードのデビュー前に予想してきた内容について答え合わせをしてみよう。ボディサイズ拡大を市場はどのように判断するかを予測する。
文:小沢コージ/写真:ベストカーWeb編集部、トヨタ
■ライバルのシエンタは5ナンバーサイズキープ
ついに初公開、3代目フリード! 詳細スペックは一部まだわからないが、それでも充分わかったことがある。新型があえて宿命のライバル、トヨタのシエンタとは真逆とも言える戦略を取ってきたことだ。どこまで勝算があり、自覚的かは知らないが最大のキモは独自のサイズ観にある。
小沢はいまだに覚えているが、今から2年前、現行シエンタ登場時にトヨタの鈴木啓友チーフエンジニアはこう断言した。
「我々が一番大事にしたかったのは、全長や全幅をしっかり守ってあげること。これ以上大きくしないってことだったんですよ。小さなクルマだからこその価値があり、視界性能だったり、取り回し性能だったり、そういうものが大事だなと思っていて」
事実、現行シエンタで驚かされたのは、ボディサイズにはまったく手を付けていなかったことだ。5ナンバーサイズキープの全幅1695mmはもちろん、全長4260mmはマイチェン後の先代シエンタから1mmも増えてない。
唯一変わったのは20mm増えた全高だが、それでも先代の4駆モデルと同じ。基本となるボディのスリーサイズはほぼ不変で、これだけボディが大きくなりがちな現代では珍しい。
■しかも室内は狭めのシエンタだったが……
しかもシエンタの場合、先代型はもちろん現行モデルも正直、室内狭めなのだ。これはトヨタ開発陣も認めるところで、特に3列目は身長176cmの小沢が1~2列目に座ったシートポジションでヒザ前ギリギリ。あと1~2cm全長が増せばラクになるのにと思う。
ところが、鈴木エンジニアは「全長を4.3mくらいまで伸ばしてもいいのでは?」という小沢からの問いかけをあっさり否定。
「広さを追わず、小ささ、扱いやすさを守った」ことこそが現行シエンタ最大の美点であり、逆に「最小回転半径が5.2mから5mに短くなった」ことをマスコミに訴える。これはコンパクトミニバン作りにおけるトヨタの信念にほかならない。
■ホンダならではの「遠慮のなさ」が際立つ
一方、新型フリードはサイズの壁をあっさり打ち破っている。全車が全長4.3mを超えてしまい、ワイルドな新フリードクロスターに関しては全幅も1.7m超えの1720mmで完全3ナンバー化。この遠慮のなさこそがホンダであり、トヨタとの最大の違いではないのか。
ここが今後の勝敗、もしくは棲み分けに大きく関わってくると小沢は勝手に睨んでいる。
事実、新型フリードの開発コンセプトは「よゆうの視界」、「よゆうの空間」、「よゆうの荷室」と3つの“よゆう”をうたっており、シエンタが言うような割り切りでは決してない。
エクステリアを見てもシンプルなシルエットは先代の延長線上だが、箱っぽいスッキリ感を今まで以上に強調しており、「小さめのステップワゴン」的な印象すらある。これは子犬のようなシエンタとは真逆の方向で、まさに確信犯的なプラスαのよゆうを誇っている。
ほかでも新型フリードは「よゆう」を謳っており、パワートレーンはまだ正確なスペックが出てないが、フィット譲りの2モーターハイブリッド、e:HEVであることはほぼ間違いなく、スムーズさ、上質さではシエンタを確実に上回るだろう。加速フィールでも相当滑らかさを追求してくるはず。
視界もこれまた「よゆう」をキーワードにボディサイズを増やしつつダッシュボードをフラット化し、見え方良好。跳ね上げ式シートを踏襲した3列目も、上端を9cm下げて視界を良くしている。
一見、保守的にコンパクトミニバンの価値を“守った”シエンタに対し、求められる性能のためには躊躇なくボディをデカくする“攻めの”フリードという感じだ。
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