■なぜ80スープラの中古市場はここまで高くなったのか
そんな80スープラの中古車相場が高騰している(編集部調べ:NAグレード250万円前後、ターボグレード350万円前後。ともに走行距離10万km以上が多い)。
これは実は今に始まったことではなく、絶版となって比較的早い時期から、とくにRZのMTの相場はかなり高めだったところ、最近になってさらに一段と高くなったという状況だ。
中古車の値付けには必ず何らか理由が存在するわけだが、考えられる最大の理由が、アメリカのいわゆる「25年ルール」だ。
これは本来アメリカでは右ハンドル車の販売が原則として禁じられているところ、製造から25年が経過したらOKになる(編集部註:クラッシュテストなどが免除され実質的な輸入が容易になる)という制度。
R32スカイラインGT-Rでも話題となったので、ご存知の人も少なくないことと思う。
日本では前で述べたような感じだったスープラも、アメリカでは映画「ワイルドスピード」の影響もあって人気は非常に高い。
スカイラインGT-Rと違って80スープラはアメリカでも売られて、そこそこ人気を博していたのだが、アメリカにはもともと「JDM(Japanese Domestic Market)」と呼ばれる、ステアリング位置やカスタマイズも含め日本仕様そのままで乗るのがステイタスという価値観がある。
そこで、25年ルールの対象となった日本国内で流通している右ハンドルの個体をアメリカの業者がどんどん買い取って自国で販売するようになった。
さらには、9年あまりのモデルライフで3万台あまりしか売れていないという希少性もあって、価格がつりあがったというわけだ。
■90スープラでは味わえない乗り味を求めて80を買うべきなのか?
そんなわけで割高になった80スープラの中古車を買うくらいなら、新車の90スープラの安い4気筒グレードを買ったほうがよっぽどよい気もする。
実際の話、現在R35GT-Rあたりを愛車としている経済的に余裕のある日本車びいきの高性能車ファンの多くが、90スープラにかなり興味を持っているそうなのだが、はたしてどうだろうか。
スタイリングの好き嫌いはさておいて、求めるものがピュアスポーツ度やハードとしての完成度だとしたら、それは90スープラのほうがずっとよいのはいうまでもない。
それについては他記事の試乗レポートを参考にしていただくとご理解いただけることと思う。ましてや大半が20年以上前に製造された80スープラとなれば、劣化による不具合の不安もあるのはいわずもがなである。
ただし、完成度が高いことが必ずしも楽しいわけではないのもクルマの世の常。とくに自分好みにいじりたい向きには、80スープラはチューニングパーツが豊富にあるのがうれしい。
なかでもエンジン。現役当時国産最強だったトヨタ謹製の直6である2JZ-GTEは、その気になれば相当なパワーを引き出すこともできる。
すでにある90スープラのドリフトマシンが2JZに換装されているのもそのあたりが理由であるのはいうまでもない。
エアロパーツの選択肢も豊富で、ボディ全長が140mm長く、もともと派手で大柄な80スープラは、ワイド化やウイングの装着により、さらに圧倒的に迫力あるルックスになる。
BMW製の90スープラも、ゆくゆくは出てくるだろうが、いまどきのクルマの宿命として、いろいろ制約があることには違いなく、いじれる自由度の高さでは、将来的にも90スープラが80スープラを超えることはないはずだ。
実際、現時点で納車されたごく一部のチューナーも、いじれなくて苦労しているらしい。
さらには、アメリカでは事情がだいぶ違うが、日本では「純」が好まれる。80スープラはまぎれもなく純トヨタ製だ。
兄弟車があのBMWのZ4なのだから悪くないとは思うものの、やっぱりスープラというならトヨタだよねという人にとって、90スープラがどうしてもひっかかるのは、すでに多方面でいわれているとおりだ。
あとは、大した問題ではないだろうが、非常用のリアシートがあることや、ウインカーレバー位置がコラム右側にあることも、90スープラとの違いとして挙げておこう。
日本では歴代スカイラインGT-Rのような名声があるわけでもなく、にもかかわらず日本よりもアメリカの事情で高騰した80スープラを買うというのはよほどでないと薦められない。
とはいえ、このクルマでないと味わえないものは間違いなくある。そこに共感するのであれば、あえてプラスアルファを払う価値はないわけではない。
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