ルーミーは開発期間の短さが車に出ている部分も
このようにソリオに比べてルーミー4姉妹車の商品力が下がった理由は、開発期間にある。
2014年には、日本における新車販売の41%を軽自動車が占め、トヨタは軽自動車の急増に危機意識を持ち、コンパクトカーの販売を強化すべく、ダイハツとルーミー4姉妹車を約2年間で急遽開発した。
ただし、エンジンやプラットフォームを新開発する時間的な余裕はなく、走りの機能はパッソ&ブーンをベースにした。
その結果、プラットフォームなどを新開発したソリオに比べると、見劣りする機能が多い。ルーミー4姉妹車の開発者は「ターボエンジンのノイズなど、(約2年間では)やり切れなかった部分が残っている」とコメントした。
価格はソリオハイブリッド「MX(セーフティサポート装着車)」が178万9560円だ。ルーミー「X・S」に、サイド&カーテンエアバッグとアルミホイールを加えて条件を合わせると162万6480円になる。
ソリオは約16万円高いが、エンジンが1気筒/200cc増量され、マイルドハイブリッド、エアコンのオート機能などが充実する。従ってソリオは機能と買い得感の両方で勝る。
それでもルーミーがソリオより売れるワケ
そうなるとソリオが好調に売れそうだが、実際は逆になった。
この理由として、まずは装備と価格が挙げられる。ルーミー4姉妹車は、サイド&カーテンエアバッグなどを全車にオプション設定したから、ソリオに比べて価格が安い。購入時の総額は高くなるが、最初の段階でユーザーを引き付けやすい。
販売規模も影響した。ルーミーを売るトヨタ店とカローラ店は全国に約2300店舗、タンクのトヨペット店とネッツ店は2600店舗で、合計4900店舗の販売網だ。対するソリオを扱うスズキは軽自動車が中心のメーカーだから、コンパクトカーの販売力は下がる。
購入パターンも違う。ルーミー&タンクは、ダウンサイジングの市場動向に沿って、トヨタの小型/普通車から乗り替えるユーザーが多い。トヨタのポルテ&スペイド、ヴィッツは、いずれも設計が古く、ルーミー&タンクに需要が集中した。
その点、スズキは軽自動車が中心だから、軽自動車からコンパクトカーに移行するアップサイジングが中心。
さらに、スペーシア、ワゴンR、ハスラーなど背の高い軽自動車が豊富に用意される。ソリオの需要がこれらの軽自動車に奪われた面もある。
他メーカーの商品力も影響した。日産のキューブは設計が古く、ホンダのフリードと同プラスは、ボディが大きくて売れ筋グレードの価格は200万円を超える。
こうなると小型/普通車のユーザーが背の高いコンパクトカーを買おうとした時、真っ先に思い浮かぶのはトヨタのルーミー&タンクだ。
車としての実力はソリオが勝るが、価格設定の仕方、販売規模、市場戦略などにより、売れ行きはルーミー4姉妹車の圧勝となった。
言い換えればソリオのような「販売面で目立たない優れた商品」を見逃さないことが、賢いクルマ購入の秘訣になる。
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