インサイトとカムリからみる和製ミドルセダンの現状と課題【天才エンジニアが斬る!!】

■乗ってわかる2台の実力。インサイト79点 & カムリ91点

【インサイト】しなやかでスムーズな乗り心地は高く評価したいが、CADとシミュレーションだけでなく人が持つ技術と買い手を考えた視点を持ってほしい

 あいにくの天気なのでワイパーを作動させていますが、アームが視界のあらゆる位置に入ってきてうっとうしく感じますし目が疲れます。

 助手席側のアームがくの字型になっていますが、この折れ曲がりポイントがちょうどフロントウィンドウのど真ん中にくる。

 視界にズンと入り込んでくるのです。

 加速をすると”グォー”という低周波の音が気になります。50km/h前後で特に音が出る。これはパワートレーンの共振音です。

 エアコン吹き出し口から室内に入り込んできます。同時に音だけではなくペダルに微振動も出ています。

 速度をもう少し上げるとスッと消えます。ただ、速度を上げていったときのエンジン音はかなり耳につきます。

 駆動力はモーターですが、モーターを回すためにエンジンがグンと回転を高めて発電力を上げる。この音があまり気持ちいいものではありません。

 足はしなやかでいいと思います。ゲインは緩やかで、けっしてスポーティではありませんが、ファミリーカーとしてはちょうどいい。

しなやかな足回りの動きは水野さんも認めるところ。しかし細かな作りこみなどまだまだ課題はありそうだ

 ちょっとクルマの重さに持って行かれる感じもあるのでもう少しだけ固くしてもいいかもしれません。ただ、路面の微細な段差を乗り越えたときのしなやかな動きはいいです。

 とても滑らかな乗り心地です。ショックアブの微小入力域の動きがとてもスムーズ。ただ、減衰の反力を緩めているため、車重に対して若干抑えが効いていない部分も感じるのです。

 このクルマの狙い……、ファミリーセダンとしてのコンセプトを考えれば、この足回りのチューニングは正解だと思います。ロードノイズは抑えられていて上質です。それだけにパワートレーンの音と振動が気になり残念です。

 操舵に対する前後のバランスはいいですがブレーキは前輪への配分がちょっと強く、ノーズダイブが大きい。もう少し後輪ブレーキを使ってほしいです。ブレーキの剛性感は高く、コントロール性もいいと思います。

【カムリ】乗り心地や操縦性のバランスが絶妙。パワートレーンは熟成の極みだが、ホイールのデザインは一考してほしい

 続いてカムリです。

 このパワーユニットはとても熟成が進んでいます。走り出しや、低中速での巡航からグイとアクセルを踏み込んだときのモーターアシストによるトルクレスポンスがものすごくシャープで力強い。

 50km/h前後で走っても共振による振動や音は感じません。ただ、回転が上がったときのエンジン吸気音はトヨタハイブリッドモデル全車共通ですが……感じますね。

 操舵に対する車体の反応はインサイトと比べれば明らかに敏感。先日試乗をしたレクサスESはちょっと機敏にしすぎていた印象でしたが、こちらはほどよいスポーティドライブ感覚を味わえます。

カムリWSのハンドリングはちょうどいいと語る水野さん。走り込みをしっかりしているとの評価だった
カムリWSのハンドリングはちょうどいいと語る水野さん。走り込みをしっかりしているとの評価だった

 ノーマルカムリとレクサスESのちょうど中間的な印象です。この乗り味がレクサスESにも欲しかったですね。カムリWSのハンドリングは『ちょうどいい』。これはアリです。

 モーターによるトルクレスポンスの押し出し感と操舵に対する車体の反応のレスポンスがマッチしていて気持ちいい。

 操舵に対する前後動きのバランスもよく、変にフロントが突っ張るようなこともなく、リアがスッと追従する。これは公道をしっかりと走り込んで作り込んでいます。乗りやすく安心感もある。

 フロントを固めてグイグイ動かす最近のFF系BMWのハンドリングなどよりもいいとすら感じます。ボディ剛性とサスペンションチューニングのバランスが絶妙でいい。これ以上硬くするとレクサスESのようにボディが負けてしまいます。

 ロードノイズはちょっと感じますが、これはすべてボディ後半から入ってくるものです。

 このプラットフォームはBピラー後ろのフロア剛性がちょっと不足しているのですが、カムリWS程度の足の硬さであればカバーされてESのような不満は感じません。上手なチューニングだと思います。

 さらに、このカムリWSの足はアメリカの国立公園や山の中のハイウェイを60〜70マイルで走ったら最高だと思います。アメリカで受けるでしょうね。

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