近年、高級車を中心に、クルマのボディにマット(艶消し)塗装を施しているクルマが増えてきました。一般的な光沢のあるボディと違い、威圧感や存在感が強調されるマット塗装ですが、デメリットも少なくないようです。
文:吉川賢一
写真:TOYOTA、BMW、Mercedes、STELLANTIS
クリア塗装をせず、磨きをしないことで独特の重厚感を生み出している
「いやいや、やはりクルマのボディはヌルテカでしょ」と思う人はもちろん多いでしょうが、艶の無いマット塗装の存在感に憧れている人も少なくないでしょう。かつてマット塗装は、ラリーカーの眩しさ軽減のため部分的にマットブラックを塗るなど、特殊なクルマに施されていましたが、冒頭でも触れたように、近年は高級車で採用が増えてきました。
一般的な光沢のあるグロス塗装のクルマは、カラー塗装の上から、艶を出すためのクリア塗装を吹き、その塗装面を磨くことで艶や光沢をもたせていますが、マット塗装のクルマでは、このクリア塗装と磨きの工程を行っていません。塗料もマットカラー専用のものを使っていることが多いようです。クリア塗装と磨く工程がないことで、表面には細かな凹凸があり、この凹凸によってマット塗装独特の重厚感が生み出されます。
ただ、クルマのボディ表面に凹凸があることは、さまざまなデメリットをもたらしてしまいます。
汚れが溜まりやすく、手入れも大変
マット塗装のデメリットは、表面に凹凸があるために汚れがつきやすく除去しにくくなってしまうことのほか、小傷がついてしまったときに、研磨できない(艶がでてしまう)こと、そして、洗車傷などがつきやすくメンテナンスが難しくなることなどがあります。塗装面を保護してくれるクリア塗装をしていないことで、塗装面にダイレクトに汚れやダメージが届いてしまうため、とにかくこまめな手入れが必要となるのです。
その手入れもまた、通常のグロス塗装の場合よりも大変。汚れをためないよう、こまめな洗車が必要となりますが、洗車機に入れてしまうと塗装面が削られてしまうおそれがあるほか、マット塗装ではカーシャンプーにも気を付ける必要がある(中性または弱酸性のもので、かつコンパウンドやワックスの入っていないものを使う必要がある)ため、手洗い洗車が必須。洗車に使うスポンジやタオルの素材にも気を付ける必要があります。
また、うっかり小傷やウォータースポットをつくってしまった場合でも、グロス塗装であれば研磨することで除去できますが、マット塗装では、磨けば磨くほど、その部分が目立ってしまう結果に。キズを補修するには再塗装するしかありません。このように、マット塗装クルマは、グロス塗装と比べて、手入れが段違いに手間なのです。
専用のコーティングや、プロテクションフィルムを施工するといいそう
それでもマット塗装にしたい!! という場合は、専用のボディコーティングをするといいようです。ただ、研磨ができないことから失敗してしまうとやり直しが難しくなってしまうので、マット塗装のコーティングを行う専門店に任せるのがお薦め。相場はクルマのサイズによっても違いますが、およそ10万~20万円あたりと、通常のコーティングよりも割高となるようです。また、マット塗装専用のプロテクションフィルムを貼ってしまう、という方法もあるそう。こちらもそれなりのコストを覚悟する必要があるようですが、傷や汚れはこのフィルムに付着しますので、擦っても問題なく、洗車も楽になるそうです。
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デメリットの多いマット塗装ですが、見た目のインパクトは非常に高いものがあります。所有しているクルマにマット塗装を施したり、マット塗装のクルマを購入した場合は、カーシャンプーはできる限り使わずに水洗い(使うのなら、前述したように中性もしくは弱酸性、かつコンパウンドやワックスの入っていないもの)で、水を含ませた柔らかいタオルで水滴を一滴も残さないレベルで拭きあげ、できるかぎり屋内で保管するようにしてください。
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