FRスポーツカー黄金期を駆け抜けた名車「180SX」は何がよかったのか

FRスポーツカー黄金期を駆け抜けた名車「180SX」は何がよかったのか

 1980年代〜90年代の日産を代表するFRスポーツカーのひとつである「180SX(通称:ワンエイティ)」。日産「シルビア」の姉妹車でありながら、シルビアとは違った個性を放っていたモデルだ。

 幾度かのマイナーチェンジが行われながら、当時としては異例ともいえる10年近くも販売されるなど、長く人気を博していた。はたして180SXは何がよかったのだろうか。

文:立花義人、エムスリープロダクション
写真:NISSAN

デートカーのシルビアとは違い、スポーティなイメージだった180SX

 180SXは1989年5月に発売された。すでに販売されていたS13型シルビアの姉妹車であり、パワートレインや足回りなど基本的なメカニズムは、シルビアと全く同じだ。車名の「180」は、1.8Lの排気量のエンジンを搭載することから付けられている。

 当時日本では、ホンダ「プレリュード」の成功によって「デートカー」市場が活況となっていた。S13シルビアはまさにそこを狙ったモデルであり、FRならではの低いボンネットや、流麗な美しさと品の良さを備えたシルビアは女性にも人気となり、大成功を収めていた。

 そんなシルビアとは違い、余白を感じさせる優雅なスタイリングが魅力の180SXは、クルマ好きから愛されたモデル。ターボエンジンのみというラインアップも、180SXをよりスポーティなイメージに掻き立てていた。

 初期型のフロントバンパーには「豚鼻」と呼ばれた特徴的なスリットが入っていたが、中期型ではすっきりとした丸みを帯びたバンパーに変更され、後期型ではスカイラインのような丸型のリアコンビネーションランプを採用するなど、前、中、後期で洗練されてゆくデザインも話題となっていた。

180SX。リトラクタブルヘッドライトと流麗なスタイリングで、シルビアとはまた違った雰囲気のスポーツカーだ
180SX。リトラクタブルヘッドライトと流麗なスタイリングで、シルビアとはまた違った雰囲気のスポーツカーだ
180SXのインテリア。S13シルビアとデザイン上の違いはない
180SXのインテリア。S13シルビアとデザイン上の違いはない

走りのよさだけでなく、自分好みにカスタムできたのも魅力

 スポーティなイメージに加えて、当時すでに少なくなっていたFRレイアウトのクーペモデルであるということ、また、シルビアと基本構造が同じであることでパーツが豊富にあったことなどから、180SXは特に走り屋の間で人気に。1991年に実施されたマイナーチェンジでは、初期型の1.8L 直4DOHCターボ(CA18DET)から2.0L 直4DOHCターボ(SR20DET)に変更されたことでスポーツカーとしての資質が引き上げられ、人気はさらに高まった。

 ノッチバックのシルビアに対して180SXはハッチバックであるために開口部が大きく、剛性不足や(シルビアよりも)重量が重いことが指摘されることもあったが、180SXのフロントセクションをシルビアに換装する「シルエイティ」や、シルビアの顔を180SXに変える「ワンビア」なども多数存在し、走り屋の間では顔面スワップの代表的なモデルとして定着。チューンベースとしても相当な個性を発揮できるモデルだった。

 純粋な走りのよさだけでなく、人とは違った個性やデザインを重視したいユーザーにとって、180SXは非常に魅力的な存在だったのだ。

トランクのあるノッチバックのシルビアと違い、大きなリアガラスを備えたハッチバックスタイルだった180SXのリアショット。写真は1990年のType II レザーセレクション
トランクのあるノッチバックのシルビアと違い、大きなリアガラスを備えたハッチバックスタイルだった180SXのリアショット。写真は1990年のType II レザーセレクション
スポーツシートが与えられた180SXのインテリア。ハッチバックだったため、シルビアよりも後席スペースはやや広かった
スポーツシートが与えられた180SXのインテリア。ハッチバックだったため、シルビアよりも後席スペースはやや広かった

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