どんなガソリン車やハイブリッド車にも付いている燃料タンクの小型化が著しく進んでいる。
一般的な燃料タンク容量の目安は、軽自動車で約30L、登録車のコンパクトカーで概ね40Lだが、2011年にタンク容量僅か20Lのスズキ アルトエコが登場。
現在ではここまで過激なモデルはなくなったものの、タンク容量30L未満の車種も珍しくなくなってきている。
なぜ、タンク容量の小さな車が増えているのか? タンク容量の小さな車の具体例と航続距離の実態を解説。
果たして小さな燃料タンクで航続距離は充分足りるといえるのか!?
文:永田恵一
写真:編集部
燃料タンクが小さな車 なぜ増加?
近年、燃料タンクの容量が小さい車が増えてきている。その大きな要因としては主に2つ。
まずは【1】大きなバッテリーを積むプラグインハイブリッド(PHEV)など、物理的に燃料タンクを配置するためのスペースが狭くなっている車種の登場したこと。
そして、【2】特にエコカー減税適応車では、JC08モード燃費で計測される「平成32年度燃費基準」が、車の重量に応じて変わることも関係している。
これは、燃料(タンク)も含めて車を軽量化して「カタログ燃費を向上したい」、「カタログ燃費を向上することでエコカー減税のランクを上げたい」という思惑があるためだ。
(※【表】は軽自動車と登録車から燃料タンクが小さいモデルのワースト10を選出したもの)
燃料タンクの小さな軽自動車の航続距離は?
■軽自動車(※燃料タンクの標準的なイメージは30L)
・ホンダN-BOX(燃料タンクはFF/27L、4WD/25L)
N-BOXは計算上、非常に長い航続距離をもつ。
しかし、筆者がN-BOXのNAエンジン+FF車で満タンから燃料残量警告灯が点くまで走った際の航続距離は、高速道路を中心に483km走った時点(車載の燃費表示は20.0km/L)で警告灯が点き、直後に給油したところ23.8Lのガソリンが入った(計算上の残量3.2L)。
近距離で使われることが多い軽自動車の特性を考えれば、総合的な使用で500km近い航続距離が確保されていれば充分だろう。
また、軽自動車に多い市街地中心の走行パターンを「燃費15km/L×燃料残量警告が点くまでのタイミング」で想定しても、350kmほどの航続距離が確保されている(警告灯点灯後も約50km走れる想定)。
ユーザーによって異なるにせよ「2週間程度に1回の給油サイクル」であれば、不便はないだろう。
ただし、軽自動車は2011年登場のアルトエコ(燃料タンクは僅か20L)をはじめ、現在でもタンク容量の小さな車が多い。
ホンダ S660は25L、日産 デイズ/三菱 eKワゴン、eKクロスで27L、スズキ アルト、ワゴンR、スペーシアが27L、ダイハツ ミライースのFF車で28Lとなっており、使い方によっては注意が必要だ。
登録車やPHEVで燃料タンクが小さい車の航続距離は?
■コンパクトカー(※燃料タンクの標準的なイメージは40L)
・スズキ クロスビー(FF車/32L、4WD/30L)
タンク容量32Lのクロスビーも計算上は充分な航続距離を持つ。
筆者がクロスビー(4WD車)の実燃費を計測した際は、燃費17km/Lといったところ。燃料残量警告灯が残り5L(25L消費)のタイミングで点くと仮定すると航続距離は425kmと考えられる。
クロスビーは4WDや高い最低地上高も生かしスキードライブなどの長距離ドライブにも使われそうなことも考えると、問題ないと判断するか微妙な航続距離とも言えるのかもしれない。
・マツダ デミオディーゼル(FF・6MT車/35L)
デミオはディーゼルエンジンのXD(FF・6MT車)以外、燃料タンクが44Lとコンパクトカーの中では最大級である。
しかし、ディーゼルのFF+MT車は、30km/Lというカタログ燃費を達成するため、車重を1080kgにするべく燃料タンクを35Lに小型化。
これは文字通り「カタログを飾るため」という典型的な例であり、燃料タンクの形状自体は44Lと同じで隔壁を入れ35Lとしている。
上記モデルを愛車にしていた筆者の経験から実質的な航続距離を書くと、燃費が20km/Lを切ることはなく、燃料残量警告が点くのは残り8~9L(26~27L消費)のタイミングなので、500kmの航続距離はほぼ保障されており、問題はなかった。
それどころか燃費が25km/Lあたりまで伸びる長距離ドライブだと700km走っても燃料残量警告は点かず、当時は軽油が100円程度だったこともあり、「3000円で満タンにできる」というのも有難い点ではあった。
しかし、「他のデミオと同じ44Lタンクなら1回の給油で1000kmも夢でないのに」と感じたことも事実だ。
このほか、コンパクトカーもフィットハイブリッドの標準グレード(32L)、スズキ ソリオ/クロスビー(同32L)といった車種があり、使い方によっては注意が必要となる。
■プラグインハイブリッド
・クラリティPHEV(26L)
前述したようにPHEVは、アウトランダーPHEVの45Lなど、燃料タンクが小さい車種が多い。なかでも驚愕の小ささなのがクラリティPHEV(26L)である。
しかし、クラリティPHEVは、燃料タンクが小さい替わりにバッテリーも17.0kWhと軽自動車の電気自動車並みに大きい。
この点を踏まえてバッテリー満充電分を含めた実質的な航続距離を考えると、EV走行分を70km、ハイブリッド走行時に燃費20km/L×燃料20Lの使用(残り6L)で燃料残量警告灯が点くとして400km、合計した航続距離は470kmといったところだろうか。
EV走行分を含めるとしても、これだけ走れば問題ないといえる。
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