AT全盛のクルマ界で希少になってはいるが、現在もトランミッションでMTとATを選択できる車種がある。おなじみの自動車評論家のみなさんに、MTで乗りたいクルマ、ATで乗りたいクルマを挙げていただいた。それぞれに良さ&面白さがあるのだ!!
※本稿は2024年3月のものです
文/片岡英明、国沢光宏、塩見智、写真/ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2024年4月10日号
■スポーツモデルは絶対にMTで乗るべきなのか?
電動化とAT限定免許が主流となり、肩身の狭い思いをしているのが、MTと呼ばれるマニュアルトランスミッションだ。今やスポーツモデルでもMTは少数派となっている。高性能モデルの代表として知られるGT-Rは、最初からMT車を設定していない。
MT車は、最新の多段化されたATやCVTにモード燃費で勝てなくなっているという事情もある。
MTを主役とするスポーツクーペの筆頭が、GR86と兄弟車のBRZだ。操る楽しさに満ちたリア駆動と相まって、人馬一体のワクワクする走りを楽しめる。
6速MTは、先代で苦手とした2速、3速のシフトアップとシフトダウン、5速から4速へのシフトが滑らかに行えるようになった。余裕ある2.4Lエンジンを得て、6速MTの魅力はさらに広がっている。
6速ATも洗練度を高めた。パドルシフトを駆使しての走りは楽しい。だが、左右の足を駆使しての変速の醍醐味やリア駆動ならではのダイレクトな運転感覚を楽しみたいなら6速MTだ。17インチタイヤなら6速ATでもいいと思う。だが、18インチタイヤ装着の主力グレードは6速MTのほうが絶対に楽しい。
フェアレディZは、厳しい戦いになった。MTは6速だが、ATは最先端をいく電子制御9速タイプだ。リズミカルに変速し、低回転のトルクが小さい回転ゾーンでも気持ちよい加速を見せてくれる。
マニュアルモードを選び、パドルを使って持てるポテンシャルをフルに引き出す走りも楽しい。V6ターボは、多段ATとの相性バッチリだ。
6速MTも6000回転オーバーまで余裕で使い切れ、シンクロレブコントロールをONにすれば、シフトダウンで回転を合わせるヒール&トゥも自動で行ってくれる。
だが、発進に気を遣うし、変速する楽しさも今一歩だ。レスポンスの鋭いスープラは、積極的に6速MTを選びたくなる。だが、フェアレディZはATもアリだと思う。
■MTをおすすめしたいライトウエイトスポーツ
ライトウエイトFRスポーツの代表に挙げられるロードスターは、大がかりな改良を断行した。
ハイオクガソリンに合わせてパワーアップされた1.5Lエンジンは、高回転の伸びがよくなり、操る楽しさが増している。しかも6速MT車はアシンメトリックLSDやDSCトラックモードも装備した。走り出した直後から進化がよくわかる。
ショートストロークの6速MTを積極的に選び、走りをとことん楽しみたい、と思わせるのが新しいロードスターだ。2LエンジンのRFも走りの質感を高めたから、6速MT派が増えていきそうな予感がする。
ホットハッチの代名詞的存在のスイフトスポーツはターボ化によって6速MTの扱いにくさが消えた。トルクが豊かだから守備範囲が広く、街中ではズボラな運転も許容する。それでいて変速も充分楽しめる。シフトストロークを少し短くすれば、さらに運転が楽しくなるだろう。6速ATより操る楽しさは濃密だ。
アクティブトップ採用のコペンは、走りの質感を高めたGRスポーツがイチオシになる。7速CVTも用意されているが、専用サスペンションやスーパーLSDなどを採用してハンドリング性能を高めたGRスポーツは絶対に6速MT。
他のグレードのMTも、最新モデルはシフトフィーリングがよくなった。だが、ムード重視の人は7速CVTでも満足できるだろう。
(TEXT/片岡英明)
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