2019年12月に生産終了となり、2020年1月に販売終了となったトヨタのミドルクラスセダン「マークX」。マークIIの時代から通算すれば、その歴史は51年にも及び、クラウンとともにトヨタを代表するモデルであったが、惜しまれつつモデル廃止となって4年が経過した。
クラウンと同じ上級クラスの後輪駆動用プラットフォームを採用し、また2種類のV6エンジンを採用するなどパフォーマンスも高かかったマークX。晩年は販売台数も減っていたが、クラウンのように時代に合わせて変えていく道もあったのではないか、と思う。マークXの名車ぶりを振り返りながら、モデル消滅に至った理由について、考察しよう。
文:立花義人、エムスリープロダクション
写真:TOYOTA、ベストカー編集部
走りがよく、非常にお買い得なクルマだったマークX
マークXは、初代モデルが2004年11月にデビュー、2代目は2009年10月にデビューし、(冒頭でもご紹介したように)2019年12月まで生産されていた。
初代マークXの開発コンセプトは「ダイナミック&スタイリッシュFRセダン」。走りを感じさせる躍動的で美しいスタイルと高いハンドリング性能をもつ、新時代の高級スポーティセダンを狙っており、プラットフォームは12代目クラウン(2003年発売)のものを改良して採用。マークII時代より70mmも長い2,850mmのホイールベースでありながら、前後オーバーハングは切り詰めることで、モダンでスタイリッシュなスタイリングを実現するとともに安定感のあるプロポーションで走りのよさをイメージさせていた。
2代目マークXは、さらなるスポーティさを追求してよりスタイリシュなデザインとなり、3.0Lエンジンは3.5Lへと拡大し性能を向上、年々厳しくなる安全性能に対応すべく、VSCやアクティブヘッドレストなどを標準装備。2012年と2016年の2度、ビッグマイナーチェンジを行い、フェイスリフトや装備の見直し、衝突回避支援パッケージの追加などが行われた。
要所で改編が行われてきたことで、マークXの商品力は、生産終了する直前まで高く維持され、またマークXは、ベーシックなグレードだと265万円程度(2016年マイナーチェンジモデル)から購入することができるなど、意外とお買い得なクルマだった。3.5L V6エンジン(最高出力318PS、最大トルク38.7kgm)を搭載したスポーツグレードの「350RDS」であっても、356万円で購入できたことは、トヨタの最後の良心などともいわれていた。
初代、2代目とも、マークXは走りの良さが魅力で、54:46という重量バランスや、(当時)新世代の V6エンジンによる安定かつ滑らかでゆとりの走りに加え、ハンドリング性能も素晴らしかった。また2代目の上級グレード「マークX 350S」には、VGRS(ギア比可変ステアリング)」や電子制御サスペンションシステム、車両統合制御システム(VDIM)などが搭載されており、FRらしい走りを安全に堪能することもできた。
伝統ある名車だからこそ、トヨタの「お荷物」になってはいけなかった
このように、実力は申し分なかったマークX。ただ、セダン離れの流れに逆らうことはできず、晩年は販売台数が減ってしまっており、2017年には年間の販売台数で1万台をきるという惨状に。かつて、(時代が違うので、単純に比較はできないが)マークIIの時代には、年間20万台以上も売れた実績をもつブランドであり、マークXへの改名によって若返りを果たしてはいたが、セダンボディのままでの「イメチェン」では、ミニバン、そしてSUVへと流れる時代に逆らうことはできなかった。
クラウンやセンチュリーのように、その名を引き継いで、ボディスタイルを変えていくという方法もあったかもしれないが、そこはやはり、マークXはクラウンやセンチュリーとは立場が違ったのだろう。トヨタとしては、「クラウン」の名はなにがなんでも続けたかったのだろうが、マークXや、こちらも2023年末に生産終了となったラージFFセダンの「カムリ」に関しては、いい具合に(ブランドとして)育ってきたアルファード/ヴェルファイア、そしてハリアーというモデルたちに、マークXやカムリの立ち位置を譲り渡していったほうが、効率がいいと判断されたのだと思う。クルマとしての実力をもち、伝統ある名車だからこそ、トヨタの「お荷物」になってはいけないと、トヨタは考えたのではないだろうか。
コメント
コメントの使い方