ベストカー本誌で30年も続いている超人気連載「テリー伊藤のお笑い自動車研究所」。過去の記事を不定期で掲載していきます。今回はトヨタ センチュリー(2018年-)試乗です!(本稿は「ベストカー」2018年11月10日号に掲載した記事の再録版となります)
撮影:西尾タクト
■「引きの美学」を感じるデザインが素晴らしい!
新型センチュリーである。
20年ぶりのフルモデルチェンジだそうで、ジムニーのモデルチェンジといい、平成最後の自動車業界は「20年ぶり」がキーワードになっているようだ。
センチュリーはデザインが素晴らしい。独特の「引きの美学」を感じるのだ。
ものを作る時に「足す」のは簡単だが「引く」のは難しい。しかし、センチュリーはデザインに足し算をしない勇気がある。
昨年の東京モーターショーに行った時、私はセンチュリーのデザイナーと会うことができた。思いのほか若い人だったが、彼は本当にいい仕事をしたと思う。
20年ぶりのモデルチェンジというだけでも相当なプレッシャーがあったと思うが、センチュリーはそれに加えて50年の歴史でこれが3世代目。
そんな特殊なクルマのデザインを任されたら、普通は「どうすりゃいいのよ?」と戸惑うはずだが、そこを彼は「引きの美学」で乗り越えた。この一点だけでも優秀な人物であることがわかる。
「引きの美学」は「寸止めの美学」や「削ぎ落としの美学」と言い換えてもいい。
私の印象では、ヘッドライトまわりをはじめとするフロントマスクを中心に、もっと「オラオラ感」を出したくなるところをこらえている。
若いデザイナーでも「俺の感性を見せつけてやるぜ!」というタイプではこうはならなかったはずだ。
このデザインには今までの歴史へのリスペクトがあるし、日本文化本来の美しさも感じさせる。
日の丸を筆頭に、日本の文化は「削ぎ落とすこと」に特徴がある。センチュリーのデザインはそこをみごとに表現しているのだ。
ただし、リアのライトはもっと小ぶりでもよかったと思う。トランクの切れ目の内側にまでライトを伸ばすのではなく、外側にだけ小さいライトを置いておけばよかったのではないか。これは私の個人的な意見だが。
今後20年もちそうなデザインだというのも素晴らしい。落ち着きがあるだけでなく、耐久性も持ち合わせている。
新型センチュリーのモデルチェンジは、デザインだけで成功と言えるのではないだろうか。
インテリアも「引きの美学」が徹底している。
そもそもドライバーは二の次というクルマだから、使いやすさが最優先されていて、ここでも「オラオラ感」はまったくない。
必要なものを必要な場所に美しく配置する。それが徹底されていることに潔さを感じる。
ただし、ここでもひとつ疑問があって、それは前席と後席の間に置かれている壁のようなモニターだ。
昭和の時代、応接間にテレビを大切に置いていた家庭がよくあったが、それを思い出してしまった。
いくらなんでもそこまで昔の伝統を持ってこなくてもいい。ここはもっとスマートにできなかったものかと思う。
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