■画期的な足回りだが熟成不足だった技術2選
■名称のインパクトに勝てなかった4輪操舵
通常の4輪車では、進行方向を変える時は車体に対する前輪の角度を変化させる。これを操舵と呼び、操舵時の後輪の向きは一定に保たれる。詳細な説明は省略するが、前輪の向きを変えることでタイヤと路面の摩擦によってコーナリングフォースと呼ばれる力が発生する。
これでクルマは旋回できるのだが、この時操舵されている前輪と、まっすぐ行きたい後輪でコーナリングフォースの発生に時間差が生じるとクルマは素直に旋回してくれない。
そこで前輪の操舵に応じて後輪も操舵してやれば、クルマはより効率よく旋回できることになる。これがいわゆる4輪操舵、または4WS(4 Wheels Steering)だ。
日本のクルマ業界では、1980年代末~1990年代初頭にちょっとした4WSブームが起こり、複数のメーカーからこの機構を搭載したモデルがリリースされた。
なかでもいすゞが自社の3代目ジェミニ(1990年)に採用した4WSは「ニシボリック・サスペンション」と呼ばれるユニークなものだった。
いすゞの技術者だった西堀 稔氏が開発したことからこの名称になった4WSシステムは、リアのサスペンションアームとそれを保持するゴムブッシュに工夫を凝らすことで、作動初期は後輪が前輪と反対向きに操舵される逆位相に、さらにサスペンションが沈むと前輪と同位相に操舵されるという画期的なもの。
新機構に開発者の名前が与えられるのは海外では珍しいことではないが、日本ではまれで、語感のよさもニシボリック・サスペンションが注目を集める要因になった。
ニシボリック・サスペンションの注目ポイントは、このような操舵とその切り替えが自動的に行われることで、作動に電子機器やアクチュエーターなどの介在がなかった。
構造のシンプルさから低コストにできるなど、利点も多かったニシボリック・サスペンションだったが、実際には操縦性に違和感を覚えるドライバーが多く、結果的に短時間で姿を消すことになってしまった。
その後他社の4WSシステムもブームの終了やタイヤの性能向上などによって採用例が減っているが、4WS自体は可能性の高い技術であり、将来的にはまたスポットが当たることも考えられる。
■サスの動きを電子と空気に託す? スバルの電子制御エアサス
一般的なクルマのサスペンションは、路面からのショック吸収や走行中の姿勢制御に金属製スプリングを使用するが、一部のクルマでは金属製スプリングの代わりに空気圧を利用したエアサスペンション(エアサス)を持つものもある。
金属製スプリングの難点のひとつは、車重によって縮み量が変化すること。つまり乗車人数が多かったり、荷物が重すぎたりすると車高が一気に下がってしまい、乗り心地などに影響が出る。
しかし、空気圧によって車高を保つエアサスならば、荷重が加わった時に圧力を高めてやれば理想的な車高をキープできる。
さらにそれを電子的に制御すれば、走行中の荷重変化に対してもアクティブな対応が可能になり、本来はオイル入りのショックアブソーバーが担当する減衰も空気の力で行える。
このようにメリットが多い電子制御式のエアサスペンションを日本で最初に採用したのが1984年登場のスバル3代目レオーネで、その後を追うように国内他メーカーからも電子制御エアサス装備のモデルがリリースされた。
自動車サスペンションの未来を担う技術として一時はもてはやされた電子制御エアサスだが、機構が複雑なためコスト高を招き、頻繁なメンテナンスも要求された。こうした理由から徐々に衰退してしまい、スバルも2000年代には採用をやめている。
車高調整が容易な電子制御エアサスは、現在でも高級車やバスなどで使用されている。コストなどの問題が解消されれば、再び注目されてもよい技術といえる。
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コメント
コメントの使い方直噴エンジンは1993年にトヨタが先にD-4と名付けたエンジン発表してましたが、市販車に搭載は三菱が若干早かっただけです。その後トヨタは改良重ねてD-4Sとして直噴エンジンを普及。またセラミックは理論上は冷却不要だという事で、各社が取り込んだものです。セラミックエンジンは機械加工がとても難しく、すぐに割れる欠点があり、製品化されませんでした。
どれも致命的な欠点が長所を上回って物たちですね。現状のEVも確実にこれらに並びます。
とはいえEVが永遠にダメな訳じゃなく技術革新が起これば乗用車向きになれるように、この中なら直噴も、
搭載はしなくなった間も技術を捨てずに磨き続けたメーカーがネガ減らした完成形を生み、今や欠かせない技術です。
スバルも直噴技術の提供を受けて大幅に底上げされました。