ディーラーに行くと、車両購入時から点検整備まで、加入を促される「メンテナンスパック」。最近ではメンテナンスパックへの加入が、人気車種にいち早く乗るための必須条件となりつつある。近年、存在意義が大きく変わってきたメンテナンスパックには、果たして加入するべきなのだろうか。
文:佐々木 亘/写真:AdobeStock(トップ画像=Kawee@AdobeStock)
■メンテナンスパックの基本をおさらい
自動車ディーラー各社で若干内容が異なるが、メンテナンスパックというのは定期点検と消耗部品交換をセットにしたパッケージ商品だ。基本的には6か月点検と12か月点検のみをパックにした18か月(新車時は30か月)のものと、車検整備費用も含めた24か月(新車時は36か月)のものがある。
加入時にパック加入料を前払いし、加入期間中は前払い金で整備費用を賄うため、基本的には整備都度の支払いは無い。もしも、合計3回分のメンテナンスパックに加入し、期間中2回しか行わなかった場合は、未使用分を返金してくれるところが多いだろう。
サービス内容を簡単に紹介すると、エンジンオイルとオイルフィルターの交換を、定期点検とセットにしているものが王道。さらに1年後ごとのワイパーゴムとエアコンフィルターの交換がセットにされているものや、タイヤローテーションやガラスの撥水コートなどが加えられているものもある。
メーカーやディーラーがメンテナンスパックへの加入を躍起になって迫ってくるのはなぜなのか。その意味を考えていこう。
■ディーラーによる囲い込みの一手がメンテナンスパックだった
現在、自動車ディーラーの営業方法は多くが来店型営業である。ユーザーがお店に訪ねていき、お店で商談や点検を行う。その間、ユーザーはお店にいなければならない。
一昔前だと、自動車ユーザーは家にいるだけでクルマを買うことが出来たし、十分に点検整備されたクルマに乗ることが出来た。それは、営業マンが個人宅や法人を足しげく回り、訪問型の営業で数字を上げてきたからである。
昔は営業マンが上客を足で作ってきたが、今ではユーザーに足を使って来店してもらい、なおかつ自社・自店舗の上客になってもらわなくてはならない。統計的にはっきりしているのは、来店回数が多くお店でお金を使う機会が多いほど、ロイヤルカスタマーになりやすいということだ。
そのため、ディーラーとしてはメンテナンスパックに加入してもらい、1年に2回は必ず店舗へ足を運んでもらいたい。限られた数のお客様に、自社へ目を向けてもらい、売り上げに高く貢献してほしい。その思いもあって、ディーラーはメンテナンスパックへの加入を、日夜勧めてくるのである。
また、自社で定期的にメンテナンスを行ったクルマは、状態がよくわかり中古車としても販売しやすい。下取りから良い中古車を仕入れ、再販に繋げるという重要な役割も、メンテナンスパックが担っているのだ。
■メンテナンスパックは今や入らないと損しかないぞ!!
クルマには定期点検が必要であるし、年2回の点検は過剰ではないから、メンテナンスパックに入ることは悪くない。点検の都度支払いを行うよりも安く済み、クルマのランニングコストと考えれば、悪の存在ではないと思うのだ。
さらに、昨今気になるのが、人気車種を注文する際の条件に、メンテナンスパックへの加入が入っている点だ。人気新型車両の供給量は少ない。最近ではクルマが来ないだけでなく、注文を入れるのも一苦労する。
メンテナンスパックへの加入で、納期が早くなったり、注文の可否が変わったりするケースも多いため、人気車種を購入したいなら、なおさらメンテナンスパックへの加入は絶対だ。
入るメリットは以前とあまり変わらないが、入らないことによるデメリットは、わずか数年前までよりも格段に大きくなった。とりあえず、勧められたメンテナンスパックへは加入しておいた方が、今後は何かと良いことがありそうだ。
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