真夏にスタッドレスはマジで危険だゾ! [夏タイヤ]にきちんと履き替えないといけないワケ

真夏にスタッドレスはマジで危険だゾ! [夏タイヤ]にきちんと履き替えないといけないワケ

 皆さんの中にスタッドレスタイヤを履いたまま、夏を迎えるという人もいるだろうか? 実は、雪に強いスタッドレスタイヤは雨が得意ではない。梅雨が過ぎたとはいえ油断は禁物! ちゃんと夏タイヤに履き替えて楽しい自動車ライフを送ろう。

文:佐々木 亘/写真:AdobeStock(トップ画像=kelly marken@AdobeStock)、マツダ

■水を吸い上げるスタッドレス、水を弾き飛ばすノーマルタイヤ

スタッドレスタイヤや雪や氷の上で最高の性能を発揮するよう作られている(FRANK@AdobeStock)
スタッドレスタイヤや雪や氷の上で最高の性能を発揮するよう作られている(FRANK@AdobeStock)

 スタッドレスタイヤが氷や雪の上で強いのは、アイス路面との密着度を上げて走ることが出来るからだ。タイヤの溝には雪が詰まらないように設計され、タイヤの溝で雪をひっかく構造にしているので、積雪路でも走行できる。

 また氷の上でも止まることが出来るのは、スタッドレスタイヤに吸水性があるためだ。通常、氷とタイヤの間には薄い水の膜ができてしまい、これが凍結路でスリップする原因となる。

 コップの水の中にある氷は滑って取り出しにくいが、冷蔵庫の中の氷は肌に引っ付いてくるだろう。乾いた氷は滑らない。

 スタッドレスタイヤは、滑りの原因となるミクロの水膜を取り除くことができる。しかし、雨のような大量の水を取り除くことはできない。

 ゴムが柔らかいスタッドレスタイヤは、ノーマルタイヤに比べて路面に溜まった水を弾き飛ばすことが得意ではなく、排水も弱いため、ハイドロプレーニング現象を起こしやすくなるのだ。

 氷には強いが、水には弱い。こうした特性を理解して、シーンによって使い分けるのが、スマートなドライバーであろう。

■雨では滑るし止まりにくいのがスタッドレスタイヤ

スタッドレスタイヤには「プラットフォーム」と呼ばれる、スタッドレスタイヤとしての使用限界を示す目印がある(U4@AdobeStock)
スタッドレスタイヤには「プラットフォーム」と呼ばれる、スタッドレスタイヤとしての使用限界を示す目印がある(U4@AdobeStock)

 スタッドレスタイヤには、プラットフォームとスリップサインという2つの目印がある。プラットフォームは、スタッドレスタイヤとしての使用限界の残り溝(新品時の50%)を示すもので、スリップサインはノーマルタイヤと同様にタイヤとしての使用限界(1.6mm)を示すものだ。

 プラットフォームが露出した状態では、スタッドレスとしては使えないがノーマルタイヤとしては使用できるのが、現在の日本のルール。故に、スタッドレスタイヤを夏に使って履き潰すという現象が起きるわけ。

 しかし、溝が50%残っているスタッドレスでも、雨の日の制動には十分に留意しなければならない。

 JAFの走行実験テストでは、濡れた路面では、残り溝が新品時の20%まで摩耗したノーマルタイヤよりも、残り溝50%のスタッドレスタイヤの方が、制動距離が長くなった。この結果から、スタッドレスタイヤがどれほど雨に弱いのかを理解いただけたのではないだろうか。

■スタッドレスは運動性能や燃費性能も悪くなるぞ

スタッドレスタイヤのままでドライ路面を走ると、ジットリとねばつくような感触があり、ステアリングの動きに対するクルマの反応が鈍くなる(ShutterDivision@AdobeStock)
スタッドレスタイヤのままでドライ路面を走ると、ジットリとねばつくような感触があり、ステアリングの動きに対するクルマの反応が鈍くなる(ShutterDivision@AdobeStock)

 ドライ路面で比較しても、ノーマルタイヤとスタッドレスタイヤの差は大きい。

 ゴムの柔らかいスタッドレスタイヤの方が、路面にジトっと粘りつくような感じになり、ステアリングの動きに対するクルマの反応が鈍くなる。また、タイヤの転がり性能も落ちてしまうため、燃費の悪化にもつながりかねない。

 近年は、スタッドレスタイヤの高性能化で、ドライ路面でも静かで乗り心地のいいスタッドレスが増えているから、そのまま夏も履きたい気持ちはよくわかる。しかし、タイヤが製造された背景を考えれば、夏の暑い路面がスタッドレスのフィールドではないことを、感じることができるはずだ。

 安全なレインドライブはタイヤ選びからスタートする。雨が多くなる梅雨入り前には、スタッドレスからノーマルタイヤへ交換しよう。

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