走行中の新幹線車内で火災発生! その時、どこへ避難する?
不燃・難燃製といわれる東海道新幹線の車内で火災が発生した。そんな想定で行われた訓練だ。もちろん乗客が持ち込んだ手土産や雑誌、駅弁の空き箱など可燃物がまったくないとは言えないのも事実だ。ましてや、2号車や15号車といった編成末端の車両で不測の事態ともなれば。パニックになるのは必然だろう。今回の訓練では、2号車の3号車寄りで火災が発生したことを想定して111名の社員が参加して行われた。その中には女性社員の姿も見られた。
2号車の避難先は先頭車である1号車であり、その先に逃げ場はない。あまりにもリアルな想定に、訓練ということを忘れてしまうほどの恐怖感を味わったのは言うまでもない。
訓練想定はこうであった。「品川駅~新横浜駅を走行中の新幹線車内で、2号車に乗車中の不審者が急に暴れ出し、液体燃料の入った小型のポリタンクを振りかざし、自身に浴びせて火を放つ異常事態が発生した」という1時間のシナリオで始まった。犯人は、もちろんJRの社員扮する配役だが、その迫力は本物と見間違うほどであった。
原則は2両離れた車両への避難だが
訓練では、犯人が火をつけた位置を2号車の車内でも3号車寄りの座席と想定したため、後方16号車に向かって編成が伸びる3号車方向へ避難することができないという最悪のシナリオとなった。つまり、逆方向に避難するには先頭車両の1号車しかないのだ。
「1号車へ急げ!」と叫びながら逃げ惑う乗客は、日ごろから訓練を重ねている社員である。ある意味、見ていて安心感を持ったのは訓練ゆえの甘えなのだろうが、一斉に席を立つ乗客役の姿を見ると、もしこれが営業運転中の車内だったなら、本当に逃げ出すことは可能なのか?と、感じたほどだ。
避難した1号車では、運転士による乗客に対する「パニックコントロール」が行われた。これは、航空会社の指導・訓練を取り入れたものだそうだ。
東海道新幹線には、火災が起きたら2両離れて避難するという独自ルールがある。なぜ2両なのか。新幹線車両は1両が25mの長さである。山手線といった一般的な通勤電車の長さが20mなので、それよりも新幹線は長い。結果、2両分の50m避難すれば、火災がここまで燃え広がることは考えにくく、それ以上延焼することはないため安全が確保できるというのがJR東海の考えである。
停止した新幹線車両からの避難脱出は専用梯子を使う
火災の発生を知らせる非常ボタンが押されると、運転士は非常ブレーキをかけて直ちに列車を停止させ、車掌は放送で避難を呼びかけると同時に避難を必要としない車両の乗客にはパニックにならないように配慮した案内放送が行われた。実際に事が起きれば、野次馬に扮する者や、勝手に動き出す者、逃げ出す者など、収拾がつかないことになるかも知れない。
列車が停止すると運転士はデッキ部にあるドアを非常コックによって開け放ち、自ら「脱出梯子」の取付を行なった。そして順次、1号車に避難した乗客を車外へと誘導した。この脱出梯子は、梯子といっても階段状の形をしており、さほど降りることに不自由はなさそうだが、そこからは近隣の駅まで線路上を歩いて避難しなくてはならず、訓練とはいえ避難の大変さという現実を見せつけられた感もあった。
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