■現役タクシードライバーからのアドバイス?
似て非なるタクシーとライドシェア。東京で10年間タクシードライバーを続けてきたNさんに、日本型ライドシェアについて伺った。以下、Nさんのお話。
「新型コロナの影響でタクシー会社が倒産したり、多くのドライバーが辞めたのは事実。真っ昼間の銀座なのに、ほとんど人がいない時期などもあって売り上げが激減しましたからね。
その反動で今タクシーが不足していると言われるけど、足りないのは朝と夕方、それと雨の日と決まっています。だからライドシェアの時間帯を決めるのは理に適っていると思いますよ。
ただ、人を乗せて運ぶのはそう簡単なことじゃない。9割はちゃんとしたお客だけど、筋の悪い客も必ずいるからね。そういう客にどう対応するか。そこは人生経験が重要なんですよ。
先輩ドライバーは『ワビ、サビのわからないヤツにタクシードライバーは務まらない』とよく言ってましたけど、10年やってると、その意味がよくわかります。私も僧侶のごとく、禅の心境で運転しています。タクシーはシビアな商売なんです。
新卒で入ってきて3カ月ほどで辞めちゃうドライバーもたくさんいます。ライドシェアはドライバーと乗客を相互に評価するシステムもあるから、おかしな客に会う確率は低いかもしれないけど、特に深夜、早朝は気をつけたほうがいい。ドライバーをやるなら、何回かはツライ目にあうと覚悟しておく必要はあるでしょうね」。
■清水草一氏にきいた! 日本型ライドシェアに問題は?
自分は滅多にタクシーに乗らないし、海外でもレンタカーばかりでライドシェアを使ったことがない。
そんな私が評価するのもなんだけど、今回始まった日本型ライドシェア、スタート時点としてはバランスがいいんじゃないだろうか。特に海外同様、客と運転手双方が評価しあうシステムが導入された点は「やるじゃん!」と思いました。
ウーバーが生まれたアメリカをはじめとする海外に比べると、営業地域や時間など、すさまじく規制だらけのスタートだけど、欧州などライドシェアにかなりの規制をかけている先進国も多く、日本には日本なりのシステムがあっていい。
アメリカではライドシェアの普及によって、地域によってはタクシーが壊滅寸前になっている。さすが自由主義の先頭を走る国。経済のスクラップ&ビルドが激しい。タクシーよりもライドシェアのほうが安くて便利だからそうなったわけだけど、それだけを基準にものごとを進めるとリスクに弱くなる。
かつてアメリカでは、電力自由化を進めすぎて大停電が起きた。日本でも資源高で新電力が多数廃業して、「自宅の電気が止まっちゃう!」ってなった人もいる。
日本型ライドシェアは、あくまでタクシー不足を補うという形のスタートだから、タクシー業界にとってとても都合がいい一方で、利用者にとってはまだ存在を感じることさえ難しい。
でも、一度始まったシステムは、需要がある限りなくならないはず。日本は世界一の高齢国だけに、新しいシステムに臆病になってるけど、タクシー運転手の高齢化を考えると、いずれは正規のタクシー運転手がいなくなって、タクシー会社がライドシェア専門になることだってあり得る。
すべては時代の流れが決めるわけだが、今後もっと規制が緩和されれば、自分もライドシェア運転手に応募してみたい。自家用車で副業ができるのって、クルマ好きには魅力だから!
(TEXT/清水草一)
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