■しなやかな乗り心地の壁
日本車の乗り心地は1990年代に比べると格段によくなっている。しかし、しなやかさという点ではまだまだとの指摘が多いが実際のところどうなのか?(文:石川真禧照)
●ジャガーXF vs トヨタ クラウンロイヤル
ジャガーXFの乗り心地を試す前に、クラウンに乗ってみた。最初はアスリートの3.5Lモデル。シリーズのなかでは最強のスポーツモデルだ。
タイヤも235/45R18を装着している。サスペンションはアスリート全車にAVSを装備。これはモノチューブショックとコンピュータによる減衰力制御を組み合わせたシステム。
フラットな乗り心地を実現した、というのだが、スポーツモデルの3.5L車では低速域でのゴツゴツ感と上下動のキツさが強め。ただし、高速になると上下動のキツさは抑えられている。乗り心地のしなやかさから見ると、硬めの印象になる。
そこで、次はベーシックな2.5Lモデルに試乗。というのもCEが、「まずベースモデルをきちんと仕上げ、そこからパワー/トルクに合わせてチューンしている」と言っていたから。
で、2.5Lだが409万円のロイヤルサルーンに試乗してみた。タイヤは215/60R16サイズを装着している。
確かに低速域でのゴツゴツした動きや段差での突き上げもショックが抑えられている。車速を上げても上下動の抑えやゴツゴツした動きは少なかった。全体にバランスがとれている。
フロントのタイロッドエンドをオフセット化し、車両挙動を安定化させたり、リアサスのアームを開断面化し、路面からの振動をいなしているという効果はそれなりに現われている。少なくともレクサスGSよりは落ち着いている感じはする。
でも、そのあとに乗ったジャガーXFは、2L、3Lモデルともにスポーツセダンらしい、しなやかさと安定感のある硬さを実現していたのだ。
両モデルとも245/45ZR18タイヤを装着していたのだが、低速域では上下動のキツさはなく、しっかりと締まっている動きをする。
車速を上げていくと、乗り心地はフラットになり、快適な高速ツーリングを提供してくれたのだ。
●壁は越えられたのか?
クラウンの辛いところは、同じサスペンション型式で、ロイヤルとアスリートという異なる用途のクルマを作らなければならないことだ。
ロイヤルはセダンとして、公用車やハイヤーにも使われるので、どうしても低速域での乗り心地が重視される傾向にある。いっぽう、アスリートはオーナー向けのスポーティモデルなので、ある程度の硬さは必要になる。
両者の性能をうまくバランスさせていることを考慮すれば、壁の頂点は見えるところまできているといっていい。
●越えられたか度:75点
■ダウンサイジング・過給エンジン
ハイブリッドで世界を先導する日本だが、最も欧米のクルマと差がついていると指摘されていることについて現状に迫る!(文:片岡英明)
●フィアット500ツインエア vs 日産 ノート
日本は時代に先駆けてターボやスーパーチャージャーなどの過給機を量産車に搭載し、軽自動車まで広めた。
どのメーカーもパワーに目を向け、速いクルマを生み出している。が、過給機を利用してエコなクルマ作りをしようとは思っていなかった。これが日本のメーカーの発想が貧困なところで大きな壁がある。
初代マーチはターボにスーパーチャージャーを組み合わせたし、シャレードも排気量を下げた926ターボを発売している。これはモータースポーツのためだが、広い意味ではダウンサイジング過給といえるだろう。
21世紀になってフィアットは大胆な発想でダウンサイジング過給を行なった。なんとフィアット500に2気筒のターボエンジンを積んで送り出したのだ。日本の自動車メーカーには真似できないことだろう。
日産もノートを3気筒エンジンにダウンサイジングし、これにメカニカルスーパーチャージャーを組み合わせた。
フィアット500に2気筒ターボの組み合わせは大英断だ。だが、乗ってみると未消化な部分が多いこともわかる。
最大の弱点は2気筒特有のバイブレーションとメカノイズだ。また、2ペダルのマニュアルミッションも違和感がある。運転には慣れとテクニックを必要とする。個性的なデザインのフィアット500だから振動なども“味”として受け入れられるが、日本車ならブーイングの大合唱になるだろう。
ノートはターボではなくスーパーチャージャーを用いたことを高く評価したい。応答レスポンスは鋭いし、低回転から力強いパワーとトルクが味わえる。フィアット500と同じように、日常の使用域での余裕を考えて過給機を採用した。
だが、万人向けで違和感がないのがフィアット500と大きく違うところだ。
●壁は越えられたのか?
2気筒は懐かしさを感じるが、3気筒エンジンほど快適じゃない。振動を3気筒並みに減らすためにはカネもかかるだろう。
ということでこれからの本命は、軽自動車で主流になっている3気筒だ。その気になれば3気筒でも1.5Lまで排気量を上げることができる。
実際のところ、世界中の自動車メーカーが3気筒エンジンを鋭意開発中だから、遠からずコイツが主役の座に就くことになるはず。
●越えられたか度:110点
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