ハンドリング 乗り心地 ダウンサイジング 過給エンジン……日本車が越えられないと言われ続けてきた「壁」

■クリーンディーゼルエンジンの壁

 マツダのクリーンディーゼルSKYACTIV-Dの登場でにわかに盛り上がりを見せているが、欧州勢のディーゼルを追い越したのか? まだなのか?(文:鈴木直也)

●BMW 320d vs マツダ アテンザディーゼル

BMW 320d(470万~514万円)……アテンザほど高回転まで回らないが、どこからでもトルクが盛り上がる
BMW 320d(470万~514万円)……アテンザほど高回転まで回らないが、どこからでもトルクが盛り上がる
マツダ アテンザディーゼル(290万~340万円)……SKYACTIV-Dは、欧州車のディーゼルの壁をまったく感じさせない
マツダ アテンザディーゼル(290万~340万円)……SKYACTIV-Dは、欧州車のディーゼルの壁をまったく感じさせない

 お世辞抜きに、エンジン単体で見たらアテンザの2.2LディーゼルはBMW320dの2Lディーゼルと互角以上。

 スペックだけを見ると、アテンザが175ps/42.8kgmに対して320dは184ps/38.7kgmで、トルクのアテンザvsパワーの320dという印象だが、5000rpm近い高回転域までストレスなく回るのはアテンザのほうで、320dは上はそんなに元気がないかわりにどこからでもトルクフルに加速するのが醍醐味。スペックから想像するイメージとは逆なのだ。

 燃費性能については320dがきわめて優秀で、100km/h巡航で走ればラクに22~24km/Lが可能。同じセクションを走るとアテンザは1~2割ダウン。

 320dにとって日本の交通事情はアウェーだが、アテンザを破るというのは大健闘。

 いっぽう、NV性能については、高速域ではともにディーゼルをまったく意識させないほどスムーズだが、アイドルや市街地レベルの低速域ではアテンザのほうが静かでスムーズ。自車の音が塀に反響するような狭い路地を走ると、320dのディーゼル音はかなり気になる。

 久しく不毛だった日本のディーゼル乗用車市場に鮮烈なデビューを果たしたSKYACTIV-Dは、欧州勢のディーゼルと伍してなんら遜色がないどころか優れた部分も多い。

●壁は越えられたのか?

 ディーゼル乗用車が絶滅状態だった日本だが、明確なターゲットがある技術開発に挑むと、日本の技術者はいい仕事をする。ユーロ6より厳しいポスト新長期規制をクリアして、日産、三菱、マツダから次々にディーゼル乗用車が登場。ブーム寸前といっていいほど日本でもディーゼルが盛り上がりつつある。

 とりわけ、マツダのSKYACTIV-DはNOX還元触媒を持たない独自技術を開発。コストと燃費性能に優れ、最近のマツダの販売を牽引するイメージリーダーになりつつある。

 ほんのちょっと前まで、欧州のディーゼル勢に対して10%もなかった国産ディーゼルの存在感は、いまや80%くらいまで回復。互角に肩を並べる日もそう遠くないように思います。

●越えられたか度:80点

■ブランド戦略の壁

 ブランド戦略に長けた欧米車に対し、日本車はブランドイメージの構築が下手といわれているが、克服できていないのか?(文:石川真禧照)

●VW ザ・ビートル vs BMW MINI vs フィアット500 vs ホンダ N-ONE

ホンダ N-ONE(115万~165万円)……N-ONEは誰が見てもN360の再来だが、果たしてホンダの“N”にブランド訴求力があるかといえば疑問
ホンダ N-ONE(115万~165万円)……N-ONEは誰が見てもN360の再来だが、果たしてホンダの“N”にブランド訴求力があるかといえば疑問
VW ザ・ビートル(250万~303万円)
VW ザ・ビートル(250万~303万円)
BMW MINI(219万9000~464万円)
BMW MINI(219万9000~464万円)
フィアット500(199万円)……復刻御三家のパワーはいまだに衰えを知らない
フィアット500(199万円)……復刻御三家のパワーはいまだに衰えを知らない

 歴史の重みというのはどういうことをいうのだろう。

 今回の3車“ビートル/ミニ/500(チンクエチェント)”のデビューから最終生産までの年数を調べてみると、ビートルは1945年から生産を開始し、50年以上も作られた。ミニも1959年から40年以上、チンクエチェントは1957年から20年近く作られている。しかも全世界で人気があった。

 だからこそ、当時のスタイリングをイメージしたニューモデルが発売されても、それを知っている人たちに支持される。そのような人たちの動きを見て、若い世代も反応する、という好循環が生まれるわけだ。

 いっぽう、N-ONEは、N360がルーツであることは、日本の50代以上の人たちならばわかる。ただし、それは日本とごく一部の欧州と北米の人たちに限られる。

 1966年当時、まだホンダのクルマ作りは世界に通用するまでに至っていなかったのだ。N-ONEも欧州の3車のようにバリエーションを展開し、輸出にも力を入れれば状況は変わるかもしれない。

・で、壁は越えられたの?

 欧州の3車のブランドイメージは確立されている。なので、壁を越えられるかは、N-ONEがどこまでブランドイメージをアップにさせることができるかで決まる。相手はもう確立したポジションを得ているからだ。

 そこにどこまで近づけるかだが、まず輸出しなければ実力や存在を認めてもらえない。

 まだまだ壁は高く、遠い……。

●越えられたか度:50点

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