■国内認証の運用がガラパゴスなのだ
2016年以前の問題としては、認証制度の運用に真因があると考えます。
日本が「1958年協定」に参加して以来、自動車基準調和世界フォーラムで保安基準の国際調和が進んできています。ここで調和されたルールを「UNR(国連基準)規則」と呼びます。
日本には独自の国内認証制度がありますが、保安基準、試験項目にUNR規則を積極的に採用していますので、日本の技術要件はかなり国際基準に沿ってきています。
2024年6月現在、国内認証の172項目の内104項目がUNR規則を採用し、7割弱がすでに国連基準です。この比率は2009年には38%に過ぎなかったのです。
UNR規則に従い審査官による立ち会い試験を実施してきたなら不正が入り込む余地はないはずです。しかし、国内認証制度では必ずしも立ち会い試験を必要とせず、(1)メーカーが自ら実施する認証試験、(2)開発試験での有効データを認証データとして提出することでクリアできます。
開発試験のデータを提出したが、国内認証のルールに適していなかったことで「不正」と呼ばれた事案は、トヨタ、ホンダの不正対象台数の99%を占めています。では、なぜルールと違う開発試験のデータを提出したのでしょうか。
クルマの開発は、グローバルモデルで求められるより厳しい保安基準やNCAP(新車アセスメントプログラム)などで、より高いスコアを得られるように国内保安基準よりも厳しい「ワーストケースシナリオ」に沿って開発されます。
「ワーストケースシナリオ」で得られたデータを国内認証として提出すること自体は許されているのですが、勘違いや技術者の都合のよい解釈で運用を間違ってしまったわけです。悪意が介在した可能性は低く、より効率的なアプローチを選択したが、結果としてそれは国内認証のルールどおりではなかったということです。
国内認証は、技術要件ではUNR規則とほぼ同等で世界基準になりつつあるのですが、その運用は日本固有でガラパゴスなのです。
新しい時代の競争環境を踏まえ、認証制度のあるべき姿の議論を求めるのはまさしく正論なのです。
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