開けるだけで一苦労! 唯一無二のトランストップ車[CR-Xデルソル]が想像超えの走り!!

開けるだけで一苦労! 唯一無二のトランストップ車[CR-Xデルソル]が想像超えの走り!!

 ホンダの伝説のオープンカーとして名高いCR-Xデルソル。世界でも類を見ない「トランストップ」というユニークすぎる電動開閉ルーフを採用していた異様な経歴を持つ。今回はそんな名車であるCR-Xデルソルを元ホンダ社員である小沢コージさんと振り返っていこう。

※本稿は2024年5月のものです
文:小沢コージ/写真:茂呂幸正
初出:『ベストカー』2024年7月10日号

■ホンダらしすぎる迷走の名車

ホンダ CR-Xデルソル(1992〜1999年)。3代目CR-Xのデルソルは前2代から一転、ナンパなオープントップとなった 中古相場:60万~300万円
ホンダ CR-Xデルソル(1992〜1999年)。3代目CR-Xのデルソルは前2代から一転、ナンパなオープントップとなった 中古相場:60万~300万円

 いやはや元気に動いてるか? トランストップよ。ある意味悲劇の2シーターオープンたるCR-Xデルソルのユニークすぎる電動開閉ルーフだ。

 このクルマは小沢にとっても特別な一台で、なぜなら当時人気の2+2クーペ、初代バラードスポーツ、2代目サイバースポーツに続く3代目CR-Xで、それまでの硬派路線から一転、2人乗りオープンのナンパ路線に生まれ変わったからだ。

 まさに前任者の考えを覆すホンダらしき一台。しかも当時小沢はホンダ技術研究所に在籍し前代未聞のオープンシステムの開発現場を生で見ていた。

 多数あるスイッチの、たったひとつの接触不良で止まるリスクだらけのシステム。正直こだわりすぎもいいとこだが、2年後に試乗会で見た時は感激したもの。

 トランクリッドが真上にガーッと動き、ガイドがニョキっと伸びてルーフを出し入れするガンダムやトランスフォーマーもビックリな劇画的開閉システム。おお、ロボットを作ってしまったのか! と。

 正直屋根とリア窓をZ型に折り畳むベンツのバリオルーフ式のほうがシンプルだし、システム重量約50kgが屋根付近に集中するので運動性能的にもお薦めできない。

 なにより30年後に走行6万キロ超の中古車に乗って驚いた。やはりトランストップは壊れている場合が多く、特にルーフ後部のチルトモーターが止まることが多い。中古車オークションでも不動ルーフは多く、目利きのユーセレクション冨塚氏曰く「僕は動くものしか買ってきません(笑)」と断言。

 やはりトランストップの調子が人気のキモで、逆に「これが付いてるから買う人も多い。男の子は絶対好きでしょ!」と。屋根とリアウィンドウを開けた時の開放感もばっちりだ。

 しかし開閉は複数のロックとスイッチを使い、トリセツ手順図を見ながら順番どおりにやらないと壊れる恐ろしさ。

 ただし逆に雨漏り少なめなので閉めっぱなしで走るのは安心。トランク開閉もリッド上げ下げの電動式だがそちらは壊れづらいし、容量400L程度とデカくて便利なので屋根を開けずに2人乗りクーペとして使う手もある。スタイルも全高1.3m以下と低い本格クーペだし、やはりソレっきゃないかも?

■シビック譲りの走りは本物!

2+2時代の面影をあっさり捨て去り2シーターオープン化したCR-Xデルソル(前期型)。売れなかったが車高低く走りは想像以上に骨太!
2+2時代の面影をあっさり捨て去り2シーターオープン化したCR-Xデルソル(前期型)。売れなかったが車高低く走りは想像以上に骨太!

 走ってみると5代目シビック譲りの高剛性フロアと前後ダブルウィッシュボーンサスのおかげでしっかり感はあるし、ステアリングの手応えもいい。しかしボディ上屋はブルブル揺れて時代なりのヤレ味。

 エンジンは、初期物は130psの1.5L・VTECと170psの1.6L・DOHC VTECが選べ、当然後者のSiRの5MTが一番人気。だが、タマが少なく上物は300万円前後するので、今回撮影した1.5L、4ATの100万円以下モノをあえて楽しむ手もある。正直パワー的にはイマイチだが、穏やかにオープンエアを楽しむにはほどよい。

 ルーフ以外の故障に関しては、ベースは5代目シビックなのでタイミングベルトやオイル交換をしていれば問題なし。ネオクラシックカーとしては心配ないほうだと目利き冨塚氏は言う。

 安全機能は時代的にエアバッグやABSはオプション装備で、他にビスカスLSD付きもあるが中古車に付いてるかは実車次第。

 実は電動ナシの手動トップも出回っており、そっちのほうが安心っちゃ安心。面白くはないけどね(笑)。

次ページは : ■CR-Xデルソルの伝説1……元ホンダ小沢も関わってた!? 迷作オープントップ開発余話

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