■最新の足まわりをなぜ採用しない?
車体下を覗き込むと、リアサスのアーム類までカバーされており、完全にフラットです。逆に言いたいのですが、ここまで完璧に床下をフラットにしながら、ホイールハウスのオープニング隙間がガバガバに大きいのはなぜなのか?
床下の空気流はよくても、ホイールハウス部に大きな乱流と渦を作って空気抵抗やリフトを増やしています。アルミホイールに樹脂のカバーをかぶせて整流していますが、ホイールハウス部の渦が効果を減らしています。
フロントサスは最新の高性能車に見られるタイヤの接地性向上とオープニングの隙間を減らす「ハイキャスター化」と「オフセットを増加させたジオメトリー」とは逆の、ゼロキャスター化の設計手法。
キャスター角度を低減させて摺動抵抗を減らし、乗り心地を優先する昔からの設計手法です。転舵時のネガティブキャンバーの変化量などは少なく、オープニングの隙間を詰める設計はできません。
せっかくフロントバンパー両サイドからフェンダー内側に風を流し込む空力対策のスリットを設けていますが、あまり効果は期待できていません。
■見える部分は丁寧に! 巧みなコストカット
WR-Vのインテリアを見ていきましょう。運転席に座ると、最廉価の「X」グレードということでステアリングはウレタン製です。
楕円グリップで握りも太く、形状自体は悪くないのですが、ウレタンの成形にはもうちょっと工夫の余地があります。コストをかけることなく、もっと滑りにくいシボを追加して、しっとりとした握り感を作ってほしい。
インパネの色合わせは上手にやっています。上面や下面など反射率の異なる面に異なるシボを配していますが、ブラックの色味を微妙に変えることで目に飛び込んでくる黒の色味を統一しています。
エアコン吹き出し口のシルバーメッキのアクセントも上手な使い方です。インパネの樹脂は安価な素材を使っていますが、けっして安っぽいばかりではなく、上手なフィニッシュです。
ドラポジは悪くありません。ペダル配置も自然です。全体にあと20mm程度右にあると理想ですが、現状でもペダルの踏み間違いが起こりにくい配置です。
シートも悪くないです。座面前端が緩やかなRを描いているため膝裏を圧迫しません。ただ、表皮が滑って身体のホールドがよくないのはマイナスです。
後席ドアを開けるとウェザーストリップは車体側のみで、ドア上部は鉄板剥き出しです。徹底したコストカットですが、ネジ頭が丸見えで見た目にも安っぽさを感じます。フルドアでこうすればサッシュドアよりもコストを圧縮できます。
後席の乗降性はよく、足元も広く居住性もいいです。靴先は前席下にすっぽり収まるので足元の空間は広く、ゆったりと座れます。ヒール段差も適正で、着座姿勢も自然です。ただ前席同様、表皮が滑るのはマイナス。
天井内張は安い生地を使っていますが、販価を考えればこんなものでしょう。後部荷室のフロアボードは表面こそクロス貼りですが、裏面は素材剥き出し。見えない部分は省略する徹底したコストカットです。
後席は6対4で分割可倒しますが、単純に背もたれが前倒するだけで、フィットなどのように座面がリンクして下がるような構造は採用していません。
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