安全第一のボルボなのにメーターなしでいいんか!? WR-Vはフツーなのがイイ!! ミスターGT-R水野和敏がガチ評価

■WR-Vは低コストでいいクルマを作った

東南アジアで販売するコンパクトカーをベースに開発されたホンダ WR-V。パネルの接合部などに製造の粗さがある
東南アジアで販売するコンパクトカーをベースに開発されたホンダ WR-V。パネルの接合部などに製造の粗さがある

 さて、まずはWR-Vです。

 エンジンフードを開けると、サスアッパーがずいぶんと低い位置にあります。これは乗用車のプラットフォームをベースとしているためです。タイやベトナムなどで販売されるシティのプラットフォームですね。

 乗用車ベースのSUVではこの「かさ増し」手法は一般的ですが、それにしてもクロスメンバーとフェンダーパネルの隙間が大きく開いていて、こうした空間でサスペンションの振動などの音が共振して増幅されてキャビンに伝わるのです。

 またダッシュクロスメンバーとサイドリーンフォースの合わせ面のスポット溶接が雑です。しっかりと接合面を密着させて溶接ができていないため、パネル面に建て付けの隙間ができています。これでは結合剛性は相当落ちます。

 また、合わせが緩いためサスアッパーの振動が車体で増幅されて室内の騒音になります。サスアッパーを爪先で弾くと“グワァン、グウァン”と雑音が響きます。

 この雑音が隙間で共振して、Aピラーからルーフレールを伝わり、ノイズになってドライバーの耳元で響くのです。ベンツやBMWなどで同じことをしたら“コゥン、コゥン”と詰まって減衰した音がします。隙間なく密着して車体の構造体になっていると、車体で減衰されて音は低減します。

 エンジンマウントブラケットの近くには錘が載せられています。これはエンジンの振動を打ち消すバランスウエイトですが、これは無駄です。4気筒エンジンですから車体パネルが接合する勘合の精度を向上させれば、このような錘は不要で、欧州車のようにエンジンの振動が減衰できる剛性が造れます。

■BEVのEX30はグリルレスで空力も向上

 次にボルボEX30の車体構造を見ましょう。

 サスアッパー周囲を先ほどと同じ強さで爪先で弾くと、やはり“カンカンカン”と音が響きます。プレスが甘いのに加えて、スポット溶接のパネルの合わせが緩いのです。WR-Vよりも響きませんが、それでも小さい音ではありません。

 ボンネットフードの裏にはずいぶんとたくさんの穴が開けられています。軽量化のためもありますが、歩行者との衝突時にフードが凹んで頭部傷害を抑えるための工夫でもあります。

 ボルボEX30のフロントマスクはずいぶんと個性的です。いわゆるグリスレスはEVでは常套手段ですが、ヘッドライトのデザインも併せて、独特の表情を作っています。フロントマスクに導風口がないだけで、空力は大きく向上します。

 後部の荷室は車体サイズを考えれば奥行きがあります。トノカバー裏側に三角表示板を装着しているため、荷物を満載していても取り出しやすいのですが、荷室ドアの内張部分に三角表示板を収納できるほどの窪みがあるのだから、そこにビルトインする設計にすればさらによいと思います。

 フロアボードは2段階の高さに設置可能で、下段にすると高さが稼げるため、背の高い荷物を積みやすくなります。上段に設置するとバックドア開口部と高さが一致するため重量物の積み下ろしの利便性がよくなります。

 また、後席シートバックを前に倒した際にフラットな荷室になります。しかし私はフロアの段差はむしろ重い荷物の移動ストッパーになるため、急ブレーキ時の前席への積載物の飛び込み防止など、安全面で有効だと考えています。

 運転席に座ると、やはりフロアの高さを感じます。ドアの内装トリムやインパネの素材は再生樹脂などを使用したということですが、この柄はどうにも馴染めません。プラスチック感がむき出しですが、これはあえて素材感を前面に押し出した演出でしょうか?

 ハザードランプのスイッチもセンターモニター画面のタッチパネルで操作します。グローブボックスを開けるスイッチもこのタッチパネルです。

 さすがにウインカー操作やヘッドライトのハイ/ロー切り替え、ワイパー操作はステアリングコラム左のレバーですが、ヘッドライトのマニュアル点灯はタッチパネルでの操作です。使いやすいとは思えません。まず操作部を探さないと使えません。

 運転席はお尻を下すとスッと沈み込む軟らかさが印象的ですが、これは少々ソフトすぎて底突きします。ソフトだけれど底突きしないクッションの深さ感がありません。クッションの沈みによる一瞬のフィット感はありますが、包み込まれて支えられるホールド感はありません。

 後席は基本的にテンポラリーユースの広さと乗車姿勢です。

 やはり床面が高く、足を置くフロアと、お尻の座面高さの差(ヒール段差)が小さいので、普通に座ると膝が高くなり腿裏が座面から離れてしまいます。いわゆる体育座りの姿勢です。長時間のドライブでは疲れます。靴先も前席座面下に完全には入らないので、足元も窮屈です。

 フロアの位置が高いので、降車時にスッと足先を車外に出しても地面に足が届きません。乗降性がよいとは言えません。

次ページは : ■最新の足まわりをなぜ採用しない?

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