■ボルボ EX30
キーを車内に置いた状態でブレーキを踏んでDレンジにシフトすればシステムが起動して走行できます。
いつものように歩くほどの速度で大きく左右にステアリングを切ります。操舵はとても軽く、動きは正確で、左右での反応差はありません。ただ、滑らかな操舵感ではありますが、中立領域の直進時の反力感が希薄で、ピシッとしていません。
操舵に対する車体の反応は確かにあるのですが、ステアリングから伝わるタイヤの接地感がありません。クルマの動きをドライバーが感じ取りにくい。対話がし難い感覚。
これではクルマを走らせる安心感が希薄ですし、クルマを運転する楽しさも薄れてしまいます。これでは自分のクルマを持つ楽しみ、ある種の官能性が感じられないのです。
ロードノイズはよく抑えられていますが、リアサスからちょっと共振音が入っています。でも、全体的には静かなクルマです。滑らかな乗り心地はバッテリーの重量が低重心に寄与している効果も大きいのです。
速度を上げると操舵に対してフロントは少し過剰に動く軽快な応答性ですが、リアの追従は少し遅れます。
ブレーキはペダル取り付け剛性がやや不足してフル制動ではペダルタッチが曖昧になります。また、通常のブレーキングでペダルを踏み込むと、踏力に対して制動力がリニアではなく効きが変化する場面があります。アシストの利きが変化しています。
なんと言うか、全体的に既存の「自動車」とは根本が違う乗り物に感じます。
■ホンダ WR-V
ゆっくりと走りながらハンドルを左右に大きく切ると、右はスッと反応するのですが左は反応が少し遅れます。右前の車体剛性が弱いことに加え、左右のサスアライメントにばらつきがあります。右前輪のキャンバー角が1〜2度少ない感覚です、恐らく要因は車体の精度と思われます。
バネ&ショックアブは硬めのセットアップで操舵に対するキビキビとした軽快感があります。車高の高さを感じさせない動きです。フロントの動きに対するリアの追従も遅れることなくバランスがいい。この操縦性は悪くありません。
エンジンは早開き制御をしています。発進時にグワッとエンジン回転が高まり、トルクレスポンスを演出しています。しかし、回転が上がってもパワー自体はおとなしいのですが……。
エンジンの騒音がエアコン吹き出し口から室内に入り込んでいます。これはうるさい。3000rpm前後でステアリングに振動が出ます。恐らくクランクシャフトの動バランスの問題だと思われます。
ブレーキはいい。急制動でもノーズダイブは小さく、しっかりと後輪が接地して制動力を活かせていますね。
■ボルボ EX30 ULTRA SINGLE MOTOR……86点
ドライバーが運転時に操作するスイッチ類をセンターに配置したスマホをちょっと大きくしたようなタブレット状のタッチパネルに集約した点には、運転視界の確保と操作時の安全性から異を唱えたい。
タッチパネルはブラインド操作がしにくいため、どうしても運転中の操作で集中力をそがれる。物理的なスイッチのよさを見直すべき。速度計をこの小さなモニターに表示させたのも理解に苦しむ。
走りは、滑らかな乗り心地で軽快感もあるが、タイヤの接地感不足と、大きな動きのノーズダイブなどは運転の楽しさをスポイルする。これが新時代のクルマと言いきれるのか……?
●水野和敏 ボルボ EX30取材メモ
・速度表示までセンターモニターに集約したインターフェースは、新しさの表現だとしても、自動車の安全性などを考えると絶対にやめるべきだと言いたい
・滑らかな乗り心地ではあるのだが、特にフロントタイヤの接地感に乏しく、操舵に対する車体の反応がステアリングを通じてドライバーに伝わりにくいのが難
・シングルモーターのトルクレスポンスに優れ、動力性能面の不満はない
●ボルボEX30 ULTRA SINGLE MOTOR EXTENDED RANGE
・全長:4235mm
・全幅:1835mm
・全高:1550mm
・ホイールベース:2650mm
・最低地上高:175mm
・最小回転半径:5.4m
・車両重量:1790kg
・モーター:後輪一基搭載
・総電力量:69kWh
・最高出力:272ps/6500-8000rpm
・最大トルク:35.0kgm/5345rpm
・一充電あたり航続距離:560km
・トランスミッション:―
・WLTCモード燃費:143Wh/km
・Fサスペンション:ストラット
・Rサスペンション:マルチリンク
・タイヤサイズ:235/45R20
・車両価格:559万円
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