ユーザーを若返えさせる対策が販売面に裏目に出た?!
そこで現行型は、プラットフォームをレクサスLSと同じタイプに刷新して、走行安定性を高めた。運転するとスポーティな印象で、長年にわたる持ち味だった乗り心地の柔軟性は薄れた。
外観はサイドウインドウが3分割された「6ライト」と呼ばれるスタイルだ。リヤウインドーの角度は寝かされ、真横から見ると5ドアハッチバック風と受け取られる。トランクフードをしっかり見せた従来型に比べると、見栄えがかなり変わった。
このようなユーザーを若返らせる対策が、販売面で裏目に出たともいえるだろう。今後のクラウンは、現行型の路線を踏襲しながら、乗り心地を柔軟にするなどユーザーの希望に沿って修正を加えていくと思われる。
アルファードの影響も大きい。以前は社用車を含めてフォーマルなクルマは、クラウンを代表とする高級セダンだったが、今はアルファードのようなLサイズミニバンを使う機会も増えた。
販売店からは「TVのニュースなどで、政治家や企業のトップがアルファードに乗る様子が報道され、イメージが変わった。
クラウンからアルファードに乗り替えるお客様も少なくない」という話が聞かれる。ミニバンは新しいファミリーカーとして普及を開始したが、20年以上を経過した今では、高級車の分野にも踏み込んできた。
そうなると高級セダンの定番だったクラウンも、アルファードに脅かされる。静かで乗り心地が快適というだけでは、抜本的に車内の広いミニバンのアルファードにかなわない。
今後クラウンが生き残る道は?
そこで現行クラウンは、ミニバンでは得られないセダンの価値を追求した。セダンはミニバンに比べて重心が低く、後席とトランクスペースの間には隔壁があるから、ボディ剛性を高めやすい。
そうなれば走行安定性、乗り心地、静粛性など走りの質を向上させられる。現行クラウンはこの点を重視して開発され、アルファードとは違うメリットを備える。
ただし進化の方向がメルセデスベンツEクラスやCクラスに近く、アルファードと比較されなくても、欧州車との勝負になってしまう。これはまた不利だから、今後は修正するだろう。
やがて以前のクラウンのような日本車ならではの魅力を備え、なおかつ走行性能は欧州車並みに優れた高級セダンに発展する。
心配なのは、2020年5月に、トヨタの全店が全車を併売する体制に移行することだ。日産やホンダの前例を見れば分かる通り、全店が全車を扱うと、売れ筋車種が一斉に低価格化する。
クラウンは特別な存在だから一定の売れ行きは保つと思うが「トヨタ店のクラウン」という販売店との強固な結び付きは薄れる。この不利を補うには、トヨタ店と同様の入念な顧客サービスを全店で展開する必要がある。
全店併売になれば、販売系列は事実上撤廃されたことになるから、販売店舗のリストラも進む。日本のトヨタの象徴とされるクラウンをどこまで守れるか、トヨタの国内市場に向けた心意気が試されている。
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