なぜクラウンだけが生き残れるのか? 日本が誇る超名門車 人気の秘密

クラウンとマークXの違いはなにか?

マークXは2019年12月で生産終了することが明らかになった
マークXは2019年12月で生産終了することが明らかになった

 セダン不振という厳しい状況のなかで、マークXはなんとか生きながらえてきたが、結局、同門のクラウンやカムリ、そしてレクサスISとの競合、メルセデスベンツCクラスやBMW3シリーズのほか輸入車セダンの攻勢、高級ミニバンなどに顧客が流れていくことを止められなかった。

 かつてはマークII/チェイサー/クレスタ三兄弟の全盛期といえる1990年3月には、単月でマークIIが3万959台を販売。チェイサーが1万1082台、クレスタが1万5488台売っており、3兄弟合計で5万5000台/月を超えていた時代もあった。

 しかし、これだけセダン市場が縮小すると、やはり高級セダンはブランド力がないと売れない。確かにかつてのマークIIにはブランド力があったが、現行のマークXには見栄を張れるだけのブランド力がなくなってしまった。

 バブル時代に「マークIIは課長、クラウンは部長」というヒエラルキーも存在したが、そのヒエラルキーにもマークXは入らない存在になっていたのだ。

 高級セダンを日本で買おうとする場合、たいていの場合、選択車種に入るのはクラウン、レクサス、BMW、メルセデスベンツ、アウディから選ぶのではないだろうか。

 伝統を守りながら着実に進化させるクルマ作りも、クラウンが人気を得た理由だ。従来型から乗り替える人達の気持ちを考えて、基本的なデザインや運転感覚は大きく変えない。

 しかし時代の変化に応じた新しい機能は必ず採用して、動力性能、安定性、衝突安全性、使い勝手などを向上させてきた。

 その成果として、クラウンは完璧な信頼性を築いた。具体的にいえば、新しいクラウンが登場すると、高額商品なのに実車を見ないで注文するユーザーが多い。グレードの選定まで、セールスマンに任せることがあるという。

 これはクラウンという商品、取り扱いディーラーのトヨタ店とセールスマンに、ユーザーが万全の信頼を置いている証拠だ。

 ちなみにトヨタは海外向けのレクサスを日本へ持ち込み、ブランド力を高めようとしているが、これは難しい。実車を見なくても安心して注文できるクラウンを造るトヨタこそ、日本では最高のブランドになるからだ。

 以上のように、クラウンは日本のトヨタを象徴する中心的な存在で、求心力の役割も果たしてきた。「クラウンに乗ればトヨタがわかる」という意味だ。

 このような存在だからクラウンを支持するユーザーは多く、取り扱いディーラーのトヨタ店も、期待に応えて販売に力を入れてきた。高級セダンで唯一好調に売れるのも納得できる。

直近の販売台数は少し変化してきた

 しかしクラウンの直近の販売状況を見ると、少し変化してきた。2019年6月の登録台数は2740台で対前年比は35.0%減少、7月は2490台で65.5%減少、8月は2326台で59%減った。

■2019年1~8月のクラウン新車販売台数
1月/4660台(318.1%)
2月/3802台(209.2%)
3月/5748台(212.6%)
4月/2442台(191.5%)
5月/2461台(283.9%)
6月/2740台(65.0%)
7月/2490台(34.5%)
8月/2326台(41.0%)
※カッコ内は対前年同月比

 現行クラウンの発売は2018年6月だから、2019年6月以降は、発売直後の登録台数と比較される。

 発売直後はフルモデルチェンジを待っていた顧客が一斉に新型へ乗り替えるから、登録台数が急増する。そのために1年を経過すれば対前年比がマイナスになるのは当然だが、登録台数が半分以下まで下がるのは極端だろう。

 先代クラウンは2012年12月に発売された。発売後1年少々を経過した2014年1月の対前年比は1%の減少で、2月は43%、3月には36%減った。先代型も大きく減っていたが、現行型ほどではない。

 現行クラウンは外観のデザインや運転感覚が欧州車風で、伝統あるグレードのロイヤルサルーンを廃止した。売れ筋は直列4気筒2.5Lのハイブリッドを搭載するスポーティなRSだ。

 販売店からは「現行クラウンでは、BMW3シリーズなどの欧州車から乗り替える新規のお客様が増えた。その代わり従来型のお客様がグレード選びで困っている面もある」という。

 クラウンを購入するユーザーの平均年齢は、先代型の時点で65~70歳に達していた。今後も高齢化が進むと、いつか需要が急落する心配もある。

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