信号機のない交差点において優先されるべき道路が優先道路だが、別の意味で使われることも多く、クルマが優先されない道路もある。そこで今回は、さまざまなかたちの優先道路について見ていくことにしよう。
文/長谷川 敦、写真/写真AC、イラストAC
【画像ギャラリー】車道だけじゃない! 優先道路って案外ややこしい…(15枚)画像ギャラリー■優先道路ってどんなもの?
優先道路については、日本で運転免許証を取得したドライバーが、教習所、あるいは独学で学んだことがあるはず。
しかし、運転免許試験を受けてから長い時間が経過していると、その定義を忘れてしまっているケースも少なくない。
先にも説明したが、優先道路とは信号が設置されていない交差点で走行優先順位が高い道路を指している。
優先ではない道路、つまり非優先道路を走るクルマが優先道路に進入する際は、一時停止や徐行を行って優先道路を通行するクルマを妨げないようにする必要があり、これは道路交通法にも定められている。
さて、ここまではクルマ同士の優先道路の話。
では、クルマ以外が優先される道路で、歩行者や自転車などがクルマより優先される道路や状況にはどんなものがあるのだろうか?
■クルマで優先される道路は?
ここからの説明では、優先道路ではなく専用道路扱いのケースもあり、少々ややこしくなってしまうが、そこはご容赦願いたい。
まずはクルマ同士で考えた場合、明確な優先道路の表示がない場合は「左方優先」が基本になる。
これは信号機がない、交差する道路の道幅が同じ、優先道路の標識がない、などのケースでは左側を走るクルマが優先されるというもの。
信号と優先の表示がない交差点でクルマ2台が出会った時は、左から来るクルマを優先するのが左方優先だ。
ただし、たとえ優先される左側を走っているとしても、運転手は周囲の状況に注意しながら安全運転を心がけるのは鉄則。
また、高速道路をはじめとする自動車専用道路では、自動車(一部2輪車も含む)以外が走ることができない。
■クルマ以外が優先される道路
続いて歩行者や自転車など、クルマ以外が優先になる道路を見ていこう。
●歩行者優先道路
クルマと歩行者が同時に動く道路では、物理的に弱者となる歩行者を優先するのは当然だが、道路交通法によって明確に歩行者優先が示されているケースがある。それが横断歩道だ。
信号機のない横断歩道の手前で歩行者が横断しようとしている場合、クルマは停止して歩行者を横断させなければならない。
これは教習所でも習う基本中の基本だが、いざ一般道に出ると、きちんと守られていないことが実に多い。
信号がない横断歩道で、歩行者はクルマの流れがなくなるまでずっと待ち続けているなんてこともある。
そして横断歩道のない交差点やその近くを歩行者が横断している時は、クルマはその通行を妨げてはならない。
実際に横断歩道で発生する交通事故の件数は多く、令和元年から5年までの間に横断歩道でクルマと歩行者が接触した事故は3000件を超えるという。
もちろん、歩行者側も、横断歩道があるからといっていきなり渡り出したりせず、十分な安全確認を行うことが必要だ。
運転者は状況が変われば歩行者になるし、その逆も当然ある。
だから歩いている時は運転者、クルマを運転している時は歩行者の立場になって考えるのが大事といえる。
●自転車優先道路
自転車はれっきとした軽車両であり、道路交通法では一部の例外を除いて車道を走行するよう定められている。
一部の例外とは、自転車の通行が許された歩道と、自転車専用道路だ。
勘違いしている人が多いが、本来、自転車に乗って歩道を走行するのは原則として道路交通法違反になる。
ただし、13歳未満、または70歳以上、あるいは身体の不自由な人が運転している自転車は歩道の走行も許可されている。
そして自転車の走行を許可している標識のある区間でも歩道走行が許される。
つまり自転車は基本的に車道の左側を走行することになるが、車道に「普通自転車専用通行帯」が設けられていたら、そこは自転車しか走れない。
ちょっとわかりにくいのが、普通自転車専用通行帯に加えて「自転車ナビライン」や「自転車ナビマーク」が存在していること。
道路の左端に描かれた自転車のピクトグラムや矢印が自転車ナビラインやナビマークにあたり、自転車はそのラインやマークの上を走ることが推奨される。
しかし、これは法定外表示であってあくまでガイドにすぎない。
近年では道路交通法に沿って自転車の車道走行が推進されていて、ナビラインなどはそれを明確化するものだ。
これによってクルマのドライバー側にも自転車が車道を走ることが改めて意識されるが、実際には自転車ナビラインの上に停車するクルマも多く、自転車が常時ナビラインの上を走れるということでもない。
当然ながら、たとえそこが許されている区間であっても、歩道上では自転車より歩行者が優先になる。
だから、ベルを鳴らしながら歩行者を端に寄らせて高速で歩道を走行する自転車など論外。
もし歩行者と接触してしまった場合、より大きなダメージを相手に与えるのは自転車側だということを忘れないでほしい。
今回は優先道路や専用道路のことを見てきたが、クルマ、バイク、自転車、そして歩行者のすべてに必要なのは安全最優先の心がけと譲り合いの精神だ。
特にクルマを運転するドライバーは、どちらが優先なのかを常に考えてハンドルを握ってほしい。
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