6代目となる現行型のホンダ「シビックタイプR」は、税込499万7300円。ただ、1997年に発売された初代シビックタイプRは、199万円からという、驚きのバーゲンプライスだった。初代とは、車格も性能も別格に成長してはいるが、経済的に余裕のない若い人もスポーツ走行が楽しめたモデルが、現在はそうではなくなってしまったことには、残念に感じている人も少なくないだろう。
なぜこれほどまでに高価になったのか。そしてこれによって日本のクルマ界が得たものと失ったものについて考えてみよう。
文:立花義人、エムスリープロダクション/写真:HONDA
クルマにお金のかけられない若者も楽しむことができた
ホンダのスポーツモデルの代名詞であり、本格的なチューンが施された最高峰グレードである「タイプR」。初代NSX、3代目インテグラに設定されたタイプRに続く第3弾として、6代目シビックに設定されたのが初代シビックタイプRだ。
基本的な外観はノーマルと大きく変わらないものの、エアロパーツやチャンピオンシップホワイトの専用ボディカラー、タイプR専用バッジによって、ただならぬ雰囲気がつくりだされ、レカロのバケットシートやチタン製シフトノブの装備、強化されたパワーユニットなど、本格的なメーカーチューンモデルとしての内容も申し分ない。これが当時199万円からという価格で購入できた。
ノーマルのスポーツグレードに20万円ほど乗せれば、メーカー謹製本格チューンのFFスポーツカーが買えたことになる。従来のFFモデルの概念を覆すクイックなハンドリング性能や、NAならではの高回転まで気持ちよく回るエンジンを、クルマにお金のかけられない若者も楽しむことができたのだ。
「FF最速」という付加価値を目指すしかなかった??
ただ、冒頭でも触れたように、現行型のシビックタイプRの価格は500万円。この30年近くの間に、ベースであるシビックの車格も変わり、VTECエンジンはターボになり、最新型は数々の電子制御デバイスと330psという強烈なパワーを持つ究極のFFモンスターマシンへと進化した。シビックというバランスのいいエントリーカーをベースとすることで、スポーツ走行の面白さをあらゆる層のユーザーに届けていたシビックタイプRの姿は、残念ながらなくなってしまった。
現代のクルマは、年々高まる安全基準に合わせて外装の内側に余裕を持たせなければならず、燃費の面でも、性能向上を突き詰めるためにコンピュータで細かく空気の流れをシミュレートさせるため、デザイン上での制約を厳しく受けている。また、ハイブリッドやプラグインハイブリッドの性能向上やEV開発に大きなリソースを割かなければならないため、効率の良い生産や設計に貢献する「グローバルアーキテクチャ」の導入は必須となり、あまりにも限定的なモデルは廃止や削減をしていかなければならない。
必須装備の増加や原材料の高騰により車両価格は全体に上がってしまい、前述の要素も加わって、デザインも大体似たような雰囲気に落ち着いてしまう。以前よりもクルマに付加価値をつけることが難しく、シビックタイプRも「FF最速」という付加価値を目指すしかなかったのかもしれない。
コメント
コメントの使い方TypeRの新車価格って今と違って、
エアコン、オーディオ無しの価格だからね。
それらを付けて、税や諸経費後の乗り出し価格は普通に高かったよ。
今でも当時新車で買ったインテグラTypeRを所有してるけど、
乗り出し300万円超えで、当時若者の自分としては清水の舞台から飛び降りる覚悟で買ったもんです。
今の金銭感覚で昔は安かったと言われてもねぇ。
フィットのタイプRを出すべきだと思う。
1.5Lターボ220ps前後、車重1100kgぐらいで価格300万前後で登場させてほしいです。
あとこのぐらいのエンジンでかっこいいミッドシップを400〜500万ぐらいで、もしくはシビックタイプRのエンジンでロータスエリーゼ、エキシージのようなかっこよく軽量なミッドシップを600〜700万ぐらいで登場すればいいのにと思います。
EK9に23年で30万キロ無事故で走りました。エンジンブローして泣く泣く乗り替えましたけど!もう少し乗りたかったですね!
初代のシビックタイプ R って
今で言うスイスポみたいなもんでしょ。
そこまで欲しがる車じゃなかった。
安く買っていたとしても維持が…
ホンダはモデルチェンジ後の部品取り置きを他社比で全然しないメーカー
当然不具合やヤレが出ても直すにはショップや元オーナーが買い置きした部品しかなく、
一昔前は争奪戦を金の力で制すれば何とかできたけど今はもう手立て無し