昨今問題となっている「あおり運転」だが、あおる側に問題があるのはもちろんだが、あおられる側にも問題があることが多い。
そのひとつが、高速道路の追い越し車線をひたすら走り、追い越し車線なのにマイペースにゆっくり走るクルマだ。後ろについたクルマはたまらない…。これには、追い越しそうと車線変更してくるトラックも含まれる。
実は高速道路には最高速度以外にも、「最低速度」というものが設定されている。これを変更することで、交通の流れをよくし、トラブル防止につながるのではないかと考えられる。
ということで、今回はこの高速道路の最低速度について考えてみたいと思う。
また、日本にも取り入れられる、海外のお手本となる交通マナーについても取り上げているので、自らの運転と比べつつ、自車とその周りのクルマが快適にドライブができるように参考にしてもらいたい。
文/松田秀士
写真/編集部
■最高速度ばかりでなく、最低速度も見直すべき
今年の3月、新東名高速道路と東北自動車道の一部区間で最高速度が120km/hに引き上げられている。
とはいえ、これは約1年間の試験運用。事故の発生や、クルマの走行速度を分析して続けるのか、あるいはほかの路線でも引き上げるのかを検討するという。
近年のクルマの性能は大きく進化していて、120km/hでも安全に走行できるレベル。そもそも高速道路の存在意義を考えると、とっくに120km/hになっていてもおかしくないくらい、と筆者は考える。
実際、この試験運用区間以外でも、現実的には100km/hオーバーで走るクルマがたくさんいるのだ。
そこで筆者は考える。そのほかの区間でも、早く110km/hないしは120km/hに引き上げてはどうかと。ただし、これまで以上に速度超過を厳しく取り締まる必要はある。
実は、オーストラリアでは5km/h未満の速度超過でも違反として取り締まられる。筆者自身103km/h(3km/hオーバー)で走行し、違反切符が届いた苦い経験がある。それでも、一般道の田舎道の最高速度は80km/hだ。
さて、なぜそのように最高速度を引き上げるべきかというと、最低速度も引き上げるべきと考えるからだ。
現在、日本での高速道路の最低速度は50km/h(対面通行以外)と定められている。意外にこの最低速度の存在を知らないドライバーは多いのではないだろうか。
そこで最高速度を引き上げて、この最低速度も引き上げたいのだ。これは追い越し車線に限定したことで、できれば追い越し車線の最低速度を80km/hにしてはどうだろう。
この目的は「あおり運転」の予防策である。最近話題のあおり運転。あおったドライバーが悪いのは当然だが、あおられる側にも問題があることが多い。
何かのきっかけがない限りあおり運転が発生するとは思えない。そのきっかけとなっているほとんどが、追い越し車線を制限速度以下で延々と走行している車両の存在だ。
またこういうケースもある。本来、大型貨物車両は追い越し車線に進入してはいけないのだが、深夜などでは大型による交通混雑もあり、追い越し車線から追い越しを行っている。
大型貨物の最高速度は80km/h(リミッターは90km/hで作動)だから、ほとんどの場合その速度でほかの大型貨物などの追い越しを行う。
このため、速度差が小さく長い時間をかけて、あるいは同速度のまま道を塞いだような状態が続くこともある(トラックの運転手さん、追い越される側が速度を上げることは違反※なんですよ)。
※編集部注
道路交通法第27条 1項 2項「追い付かれた車両の義務違反」にあたり、反則金6000円(普通自動車の場合)、違反点数1点が科せられる。
このため、追い越し車線では本来走行する資格のある乗用車などが数珠つなぎとなり、上り坂などに差しかかると速度低下を起こして危険な状態となる。
このことが影響して、乗用車間でのプチあおりが発生する様子を何度も目にしたことがあるのだ。
つまり、追い越し車線の最低速度を引き上げることによって、追い越しのためだけに使う車線という、本来の追い越し車線の意味の周知徹底を図れるのではないかと考えるのだ。
ちなみに、中国の高速道路はすでに14万km超と日本の十数倍近い延長距離となっているのだが、最高速は世界標準ともいえる120km/h。
しかし、注目なのは追い越し車線での最低速度で、110km/hなのだ。たった10km/hの範囲のなかで走行しなくてはならない。
ちなみに4車線ある走行車線のうち、中央2車線の最低速度は90km/h、右端(右側通行なので)の最低速度は60km/hと日本よりも高い速度だ。
中国は中古車の輸入が禁止されているので、高速道路で左側の速度の高い車線を走行しているのは比較的新しいモデルばかりで、性能もそれなりに高いからこのような最低速度を設定しても無理がないように思える。
しかし、これは日本でも同じことだろう。最低速度を引き上げて取り締まりを強化すれば、あおりもそうだが整然とした高速走行が日本でも実現するのではないかと考える。
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