8月26日に山梨県警北杜警察署のYPY31セドリックパトカーが惜しまれつつ勇退した。1998年に県警に導入され、26年にわたり活躍した最期の勇姿を写真に収めようと全国から多くのマニアが駆け付けたのである。今回はなぜセドリックパトカーがそれほど魅力的なのかを振り返りつつ、現役で活躍する数少ないセドリックパトカーの一部をご紹介したい。なお、セドリックパトカーのディープな解説はムック『セドリックパトカー スーパーバイブル』も参照してもらいたい。
文・写真/有村拓真
【画像ギャラリー】セドリックパトカー引退にファン続々のなぜ? 数少ない現役車両に迫る(5枚)画像ギャラリー■これぞ昭和のパトカー。質実剛健なセドリック
初期型の登場から約40年を迎えようとしているY31セドリック。1987年にデビューし、幾多のマイナーチェンジが施されたものの、基本設計をほぼ変えないまま2002年までの長きにわたり生産された。一般向けのY31や警察向けのYPY31は2002年に生産終了となったが、タクシー仕様のY31セドリック営業車は小変更を実施し2014年まで生産が続けられていた。一方、現役で活躍している数少ないYPY31パトカー(覆面も含む)は、2000年前後に生産された最終型が主である。
警察向けグレードであるセドリックは型式がYPY31となる。日産社内で代々パトカー仕様を表す「Y」に3000ccガソリンエンジン車を示す「P」が付された専用グレードだ。V6、3000ccのVG30Eエンジンを搭載、それにフロア5速MTを組み合わせている。この3000cc+5MTは、市販車には存在しないレアな仕様だった。
このセドリックパトカーを、厳しい運転訓練を経た警察官が運転する。特にリアをグッと沈めて、違反車両に猛追するその姿は、多くのパトカーマニアの心をわしづかみにしたのである。
1987年にデビューした前期型を筆頭に、1991年に中期型、1995年には後期型が登場、1998年の最終型に至るまで幾多の変遷を遂げたが、型式は一貫してYPY31となっていた。
一方、同時代のライバルともいえるクラウンパトカーは、たびたびモデルチェンジ。130系、150系、170系、180系……、フルモデルチェンジを経るたびに、昔ながらの質実剛健なパトカーとは違う豪華な雰囲気をまとっていった。
セドリックパトカーの魅力はやはりこの質実剛健な雰囲気だろう。
フェンダーミラー仕様車が基本で、現代のパトカーではほぼ見られなくなった廉価仕様の鉄チンホイールや手回しのサイドウィンドウ、最終型になってやっと装備された運転席エアバッグなど装備、一昔前のパトカーの見本ともいえる存在だ。
ちなみに、1999年に国費で導入されたセドリック警護車はYPY31ではなく市販のY31最上級グレードであるクラシックSVが導入された。こちらはAT車で3000ccエンジン車だった。警護任務の特性上、AT車となったようだ。
【画像ギャラリー】セドリックパトカー引退にファン続々のなぜ? 数少ない現役車両に迫る(5枚)画像ギャラリー■レーダー仕様&珍しい幹部用セドリックが残る静岡県警
静岡県警では先日勇退した山梨県警のセドリックパトカーと同仕様の車両が交通機動隊に配備されており、現役で活動している。2001年に県費で導入された同車は、主に静岡県東部エリアで活動しており、「沼津ナンバー」というのがその証でもある。ポリスロゴも入っていない導入当初のままの外観が特徴的だ。ちなみに同分駐には150系クラウンのレーダーパトカーも存在したが、こちらにはポリスロゴが入れられていた。
現在、搭載レーダー装置による速度測定は、電波法の改正に伴い使われていない。その代わり、シートベルト違反などの取り締まり活動に従事しているということだ。走行距離は約7万キロで抜群のコンディションを誇っており、当面引退させる予定もないという。
一方、幹部用として導入されたセドリックもあり、こちらはY31セダンの市販車仕様。グレードはスーパーカスタムでドアミラー仕様の5ナンバー車となる。こちらは1999年に導入された。取り締まり活動等を行わない同車だが、数年前からイベント等での露出が増えており、しかも展示すると意外にも人気ということだ。まだまだその勇姿を見せ続けてほしい両車である。
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