■レーシングカーを思わせるレスポンス
ビッグボアの4シリンダーエンジンは中速までけっしてスムーズとは言えない。特に3000回転付近はヴァイブレーションも大きい。
しかし、そいつが問題とは誰も考えないだろう。5000回転以上のシャープな吹け上がりとスムーズネスは文字通りレーシングエンジンのような鋭いフィーリングなのだ。
そして、この高回転のフィールはストレート6のM88とはまったく異なり、レーシングカーを思わせるレスポンスとサウンドなのだ。
これならフォアでも文句は言えないと思ってしまう。
リッターあたり80馬力という数字は凄い。日本車のDOHCエンジンにはとうてい望み得ないものだ。
トップギア2000回転でも充分走ることができるが、こいつの真価は、やはり5スピードギアボックスを駆使してレブカウンターの針を5000回転以上にはり付けておくところにある。
それにしてもこのギアレシオは見事である。エンジンももちろん違うが、325iなどと決定的に異なるのは、このスポーティなギアレシオにある。このギアのおかげでM3はまことにスポーティに走れるし、エンジンを楽しむこともできるのだ。
■コントローラブルなハンドリング
M3のサスペンションレイアウトは基本的には3シリーズと同じである。しかし、フロントのジオメトリーはまったく違うし、リアも強化されている。
M3のスティアリングは意外にスローだが、コーナーへの切り始めのフィールは生産型よりもずっといい。このターンインのシャープさに比べ、リアはやや早めに滑り出す。
しかし、25パーセントのリミテッドスリップディフのおかげもあって、そのコントロールはとてもやさしい。古典的というかきわめて安全でコントローラブルだ。
BMW M3は従来の“スポーティな乗用車BMW”ではなく、ハッキリとした目的を持つスポーツセダンである。
ただし、リアシートがあり、充分な日常性を兼ね備えている点が現代風ではあるが。
M3はドライバーにある種の緊張感を要求する。そのことこそ従来のBMW族との最も大きな差であり、このクルマの最大の価値といえる。
◎BMW M3主要諸元
- 全長:4345mm
- 全幅:1680mm
- 全高:1365mm
- ホイールベース:2560mm
- エンジン:直4DOHC
- 排気量:2302cc
- 最高出力:195ps/6750rpm
- 最大トルク:23.4kgm/4750rpm
- トランスミッション:5MT
- 車重:1280kg
- サスペンション:ストラット/セミトレ
- 当時の価格:658万円
- 登場年:1987年
メーカー公表値
- 0~100㎞/h加速:6.7秒
- 0~1000m加速:27.3秒
- 最高速度:235km/h
コメント
コメントの使い方